糖尿病性網膜症の発症リスクとインクレチン系薬使用に関連性はあるのか?
SUSTAIN-6試験の結果から、インクレチン系薬物[ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬およびグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)]と糖尿病性網膜症リスクとの関連について不確実性が生じました。
そこで今回は、2型糖尿病患者におけるインクレチンベースの薬剤使用と糖尿病性網膜症のリスクに関して、観察研究から得られた利用可能なエビデンスを統合することを目的に実施されたメタ解析の結果をご紹介します。
本研究では、Cochrane Library、Embase、Medlineが体系的に検索され、関心のある観察研究が特定されました。
バイアスリスクはROBINS-Iツールを用いて評価されました。組み入れられた研究のデータは、Hartung-Knapp拡張を用いたDerSimonian and Lairdランダム効果モデルを用いてプールされました。
試験結果から明らかになったことは?
10試験がDPP-4阻害薬、7試験がGLP-1 RAでした。9試験は糖尿病性網膜症の発症を、6試験は糖尿病性網膜症の進行を、2試験は両方のアウトカムを検討していました。7試験は中等度のバイアスリスク、4試験は重度のバイアスリスク、3試験は重大なバイアスリスクでした。
糖尿病性網膜症リスク | |
DPP-4阻害薬 | リスク比 0.98(95%信頼区間 0.83〜1.17) |
GLP-1 RA | リスク比 0.87(95%信頼区間 0.56〜1.34) |
全研究をプールしたデータでは、DPP-4阻害薬(リスク比 0.98、95%信頼区間 0.83〜1.17)またはGLP-1 RA(リスク比 0.87、95%信頼区間 0.56〜1.34)の使用と糖尿病性網膜症リスクとの関連は示されませんでした。
コメント
一部の研究において、インクレチンベースの抗糖尿病薬の使用と、糖尿病性網膜症リスクとの関連性が示唆されていますが、そもそも2型糖尿病は網膜症リスクを有していることから更なる検証が求められています。
さて、メタ解析の結果、2型糖尿病患者においてインクレチン系薬剤の使用が糖尿病網膜症のリスクと関連しないことが示唆されました。
本解析の対象となったのは観察研究であることから、排除しきれない/調整しきれないバイアスが残存しています。また、対照となったのは実薬あるいは非使用がプールされており、各薬剤ごとの比較は実施されていません。引き続きエビデンスの更新が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ メタ解析の結果、2型糖尿病患者においてインクレチン系薬剤の使用が糖尿病網膜症のリスクと関連しないことが示唆された。
根拠となった試験の抄録
目的:SUSTAIN-6試験の結果から、インクレチン系薬物[ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬およびグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)]と糖尿病網膜症リスクとの関連について不確実性が生じた。我々の目的は、2型糖尿病患者におけるインクレチンベースの薬剤の使用と糖尿病性網膜症のリスクに関して、観察研究から得られた利用可能なエビデンスを統合することであった。
材料と方法:Cochrane Library、Embase、Medlineを体系的に検索し、関心のある観察研究を特定した。バイアスのリスクはROBINS-Iツールを用いて評価した。組み入れられた研究のデータは、Hartung-Knapp拡張を用いたDerSimonian and Lairdランダム効果モデルを用いてプールした。
結果:10試験がDPP-4阻害薬、7試験がGLP-1 RAであった。9試験は糖尿病網膜症の発症を、6試験は糖尿病網膜症の進行を、2試験は両方のアウトカムを検討した。7試験は中等度のバイアスリスク、4試験は重篤なバイアスリスク、3試験は重大なバイアスリスクであった。全研究をプールしたデータでは、DPP-4阻害薬(リスク比 0.98、95%信頼区間 0.83〜1.17)またはGLP-1 RA(リスク比 0.87、95%信頼区間 0.56〜1.34)の使用と糖尿病網膜症リスクとの関連は示されなかった。
結論:本研究は、2型糖尿病患者においてインクレチン系薬剤の使用が糖尿病網膜症のリスクと関連しないことを示唆している。しかし、これらの知見は、入手可能なエビデンスの質が限られていることを考慮し、慎重に解釈されるべきである。
キーワード:糖尿病網膜症、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬、グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬、系統的レビュー
引用文献
Incretin-based drugs and the risk of diabetic retinopathy among individuals with type 2 diabetes: A systematic review and meta-analysis of observational studies
Samuel Igweokpala et al. PMID: 38031234 DOI: 10.1111/dom.15367
Diabetes Obes Metab. 2024 Feb;26(2):721-731. doi: 10.1111/dom.15367. Epub 2023 Nov 29.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38031234/
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