SARS-CoV-2感染者におけるコロナ後遺症のリスクはどのくらいなのか?
COVID-19の収束は困難であり、インフルエンザなどの感染症と同様に共生していくことが求められています。COVID-19の特徴としてコロナ後遺症(long-COVID、post-covid-19 condition)があげられます。
しかし、SARS-CoV-2感染者コホートにおいて、COVID-19後の状態に関連する長期的な症状および健康状態の評価は充分に行われていません。
そこで今回は、スイス、チューリッヒ州の一般住民を対象に、最大2年間におけるCOVID-19後の症状や健康状態について評価した集団ベースの縦断的コホート研究の結果をご紹介します。
本試験の対象はSARS-CoV-2感染が確認された成人であり、感染前にワクチンを接種していない1,106例と、感染していない628例でした。
本試験の主要アウトカム評価項目は、感染していない人と比較した場合の、感染後6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月間の自己申告による健康状態およびCOVID-19関連症状の軌跡、感染後6ヵ月時点での症状の過剰リスクでした。
試験結果から明らかになったことは?
SARS-CoV-2感染後 | COVID-19後に回復していない人の割合 (95%CI) |
6ヵ月 | 22.9%(20.4~25.6%) |
12ヵ月 | 18.5%(16.2~21.1%) |
24ヵ月 | 17.2%(14.0~20.8%) |
SARS-CoV-2に感染した個人の22.9%(95%信頼区間 20.4~25.6%)は、6ヵ月までに完全に回復していないことが明らかとなりました。感染した個人のうち、回復していないと回答した割合は、感染後12ヵ月で18.5%(16.2~21.1%)、24ヵ月で17.2%(14.0~20.8%)に減少しました。
時間の経過とともに | 自己申告による健康状態の割合 (95%CI) |
回復が続いている | 68.4%(63.8~72.6%) |
全体的に改善している | 13.5%(10.6~17.2%) |
健康状態が悪化している | 5.2%(3.5~7.7%) |
回復期と健康障害を交互に繰り返す | 4.4%(2.9~6.7%) |
自己申告による健康状態の変化を評価したところ、ほとんどの参加者が、時間の経過とともに、回復が続いている(68.4%、63.8~72.6%)、または全体的に改善している(13.5%、10.6~17.2%)ことが明らかとなりました。しかし、5.2%(3.5~7.7%)は健康状態が悪化し、4.4%(2.9~6.7%)は回復期と健康障害が交互に繰り返されました。
COVID-19に関連する症状の点有病率および重症度も時間の経過とともに減少し、24ヵ月時点で症状を訴えたのは18.1%(14.8~21.9%)でした。8.9%(6.5〜11.2%)の参加者は、4つのフォローアップ時点すべてで症状を報告し、12.5%(9.8〜15.9%)では症状がない状態とある状態が交互に繰り返されました。
症状有病率は、6ヵ月時点で感染している人の方が感染していない人よりも高いことが示されました(調整後リスク差 17.0%、11.5~22.4%)。
症状の過剰リスク(調整後リスク差) | |
味覚・嗅覚の変化 | 9.8% (95%CI 7.7~11. 8%) |
労作後倦怠感 | 9.4% (95%CI 6.1~12.7%) |
疲労 | 5.4% (95%CI 1.2~9.5%) |
呼吸困難 | 7.8% (95%CI 5.2~10.4%) |
集中力低下 | 8.3% (95%CI 6.0~10.7%) |
記憶力低下 | 5.7% (95%CI 3.5~7.9%) |
感染者における個々の症状の過剰リスク(調整後リスク差)は2~10%であり、最も過剰リスクが高かったのは、味覚・嗅覚の変化(9.8%、7.7~11. 8%)、労作後倦怠感(9.4%、6.1~12.7%)、疲労(5.4%、1.2~9.5%)、呼吸困難(7.8%、5.2~10.4%)、集中力(8.3%、6.0~10.7%)と記憶力(5.7%、3.5~7.9%)の低下でした。
コメント
COVID-19の特徴の一つにコロナ後遺症があげられます。これまでの報告において、ワクチン接種によりコロナ後遺症のリスク低減が示されていますが、そもそものコロナ後遺症の長期的なリスクがどの程度であるのか検証が求められていました。
さて、スイスのチューリッヒ州における集団ベースの縦断的コホート研究の結果、感染前にワクチンを接種していない人の最大18%が、感染後2年までコロナ後遺症の状態にあり、対照と比較して過剰な症状リスクが示されました。
本研究には、誤分類バイアス、情報バイアス、健康志向バイアス、交絡因子の残存、またスイス以外の国や地域への適用など様々な制限がありますが、ワクチン未接種者におけるコロナ後遺症のリスクの程度を把握するために重要な結果であると考えられます。
日本のおいても同様の傾向が示されるのか研究結果の報告が待たれます。
続報に期待。
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