急性期医療後の継続的なケアを必要とする高齢患者における患者中心の減処方介入の効果はどのくらいなのか?
減処方(deprescribing)は、ポリファーマシーの負担に対処するための有望なアプローチです。ポストアキュートケア(PAC、救急医療後、急性期医療後)施設で継続的なケアを必要とする高齢患者の病院環境における包括的な減処方を開始した研究はありません。
そこで今回は、PAC施設に移行または退院する入院中の高齢者を対象に、患者中心の減処方介入の有効性を評価したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
Shed-MEDS(Best Possible Medication History, Evaluate, Deprescribing Recommendations, and Synthesis)減処方介入に関するこのランダム化臨床試験は、2016年3月から2020年10月の間に実施されました。学術医療センターに入院し、同医療センターと提携する22のPAC施設のうち1施設で退院した患者を募集しました。50歳以上で入院前の処方薬が5種類以上あった患者が登録され、介入群と対照群にランダム割付けされました(1:1)。非英語圏の患者、住居のない患者、ナーシングホームに長期滞在している患者、余命6ヵ月未満の患者は除外されました。解析にはintention-to-treat法が用いられました。
介入群はShed-MEDS介入を受け、薬剤師または診療看護師(nurse practitioner)主導の包括的薬物レビュー、患者または代理人が承認した減処方推奨、および病院で開始されPAC施設滞在中継続される減処方行動からなる介入を受けました。対照群は、病院とPAC施設で通常のケアを受けました。
本試験の主要アウトカムは退院時およびPAC施設退院時の総投薬数とし、PAC施設退院後90日間のフォローアップ評価が行われました。副次的アウトカムとして、各時点での潜在的に不適切な薬剤の総数、Drug Burden Index、有害事象が評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
合計372例の参加者(平均[SD]年齢 76.2 [10.7]歳;女性 229例[62%])が介入群または対照群にランダムに割り付けられました。これらの参加者のうち、284例がintention-to-treat解析に含まれました(介入群 142例、対照群 142例)。
平均比あるいはハザード比 HR (95%CI) vs. 対照群_通常ケア | |
PAC施設退院時の投薬数 | 平均比 0.86 (0.80〜0.93) P<0.001 |
90日後の投薬数 | 平均比 0.85 (0.78〜0.92) P<0.001 |
薬物有害事象の発生 | HR 0.83 (0.52〜1.30) |
全体として、統計的に有意な治療効果が認められ、介入群の患者は対照群と比較して、PAC施設退院時の投薬数が平均14%減少し(平均比 0.86、95%CI 0.80〜0.93、P<0.001)、90日後の追跡調査では投薬数が15%減少しました(平均比 0.85、95%CI 0.78〜0.92、P<0.001)。介入により、不適切な可能性のある薬物への患者曝露とDrug Burden Indexもさらに減少しました。薬物有害事象の発生率は、介入群と対照群との間で同程度でした(ハザード比 0.83、95%CI 0.52〜1.30)。
コメント
寿命が延長していることから、高齢化これに伴う併存疾患が増加しています。多様な疾患を有する患者において、個々の疾患に対する治療薬の増加が社会問題となっています。これまで、疾患の慢性期における介入が主でしたが、本試験では、急性期から慢性期へ移行するタイミングにおける介入の効果を検証しています。
さて、本試験結果によれば、Shed-MEDSによる患者中心の減処方介入は、通常ケアと比較して、PAC施設退院時および退院後90日の総薬物負担の軽減に安全かつ有効であることが示されました。一方、薬物有害事象の発生率に差はありませんでした。
Shed-MEDSという手法を用いることで減処方につながることが示されましたが、この介入により、死亡リスクや転倒リスクの低減、患者QOLの向上につながるのかについては不明です。より臨床上有用なアウトカムに対する介入効果の検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ Shed-MEDSによる患者中心の減処方介入は、PAC施設退院時および退院後90日の総薬物負担の軽減に安全かつ有効であることが示された。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:減処方(deprescribing)は、ポリファーマシーの負担に対処するための有望なアプローチである。ポストアキュートケア(PAC、救急医療後、急性期医療後)施設で継続的なケアを必要とする高齢患者の病院環境における包括的な減処方を開始した研究はほとんどない。
目的:PAC施設に移行または退院する入院中の高齢者を対象に、患者中心の減処方介入の有効性を評価すること。
試験デザイン、設定、参加者:Shed-MEDS(Best Possible Medication History, Evaluate, Deprescribing Recommendations, and Synthesis)減処方介入に関するこのランダム化臨床試験は、2016年3月から2020年10月の間に実施された。学術医療センターに入院し、同医療センターと提携する22のPAC施設のうち1施設に退院した患者を募集した。50歳以上で入院前投薬が5種類以上あった患者を登録し、介入群と対照群に1:1でランダムに割り付けた。非英語圏の患者、住居のない患者、ナーシングホームに長期滞在している患者、余命6ヵ月未満の患者は除外された。Intention-to-treat法が用いられた。
介入:介入群はShed-MEDS介入を受け、薬剤師または診療看護師(nurse practitioner)主導の包括的薬物レビュー、患者または代理人が承認した減処方推奨、および病院で開始されPAC施設滞在中継続される減処方行動からなる介入を受けた。対照群は、病院とPAC施設で通常のケアを受けた。
主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは退院時およびPAC施設退院時の総投薬数とし、PAC施設退院後90日間のフォローアップ評価を行った。副次的アウトカムとして、各時点での潜在的に不適切な薬剤の総数、Drug Burden Index、有害事象を評価した。
結果:合計372例の参加者(平均[SD]年齢 76.2 [10.7]歳;女性 229例[62%])が介入群または対照群にランダムに割り付けられた。これらの参加者のうち、284例がintention-to-treat解析に含まれた(介入群 142例、対照群 142例)。全体として、統計的に有意な治療効果が認められ、介入群の患者は対照群と比較して、PAC施設退院時の投薬数が平均14%減少し(平均比 0.86、95%CI 0.80〜0.93、P<0.001)、90日後の追跡調査では投薬数が15%減少した(平均比 0.85、95%CI 0.78〜0.92、P<0.001)。介入により、不適切な可能性のある薬物への患者の曝露とDrug Burden Indexもさらに減少した。薬物有害事象の発生率は、介入群と対照群との間で同程度であった(ハザード比 0.83、95%CI 0.52〜1.30)。
結論と関連性:本試験の結果から、Shed-MEDSによる患者中心の減処方介入は、PAC施設退院時および退院後90日の総薬物負担の軽減に安全かつ有効であることが示された。今後、この介入が患者報告および長期臨床転帰に及ぼす効果を検証する研究が必要である。
試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT02979353
引用文献
Deprescribing Medications Among Older Adults From End of Hospitalization Through Postacute Care: A Shed-MEDS Randomized Clinical Trial
Eduard E Vasilevskis et al. PMID: 36745422 DOI: 10.1001/jamainternmed.2022.6545
JAMA Intern Med. 2023 Feb 6. doi: 10.1001/jamainternmed.2022.6545. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36745422/
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