肝斑治療におけるトラネキサム酸と外用クリーム3剤(フルシノロン+ハイドロキノン+トレチノイン)併用と外用クリーム3剤の比較(RCT; J Ayub Med Coll Abbottabad. Apr-Jun 2021)

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肝斑治療における外用クリームへのトラネキサム酸の追加効果は?

肝斑は、日光にさらされる部位、主に顔面に生じる非常に一般的な皮膚の色素沈着性疾患であり、世界的に報告されており、すべての人種および男女に影響を及ぼしています。肝斑は、顔面中央部、顴骨部、下顎部など、さまざまなパターンが報告されています。個人の全体的な外観に影響を与えるため、患者のQOLに影響を与える肝斑の心理社会的影響は予期されないものではありません。また、治療が長期化する傾向があり、治療が困難な場合もあります。

肝斑の治療法は数多くありますが、いずれも治療効果にばらつきがあり、重大な副作用を伴う可能性があります。国内の診療ガイドラインにおいて、個々の薬剤の推奨が記されていますが、併用療法に対する推奨は充分ではありません。また、内服薬と外用クリームの併用療法と外用クリームのみとの比較は充分に行われていません。

  • CQ55:ハイドロキノンは肝斑の治療に有効か? ー 推奨:ハイドロキノン単体では,4%製剤で肝斑治療に有効である(グレード A)。
  • CQ56:トレチノインは肝斑の治療に有効か? ー 推奨:トレチノインの外用療法は肝斑をはじめとする多くの表皮性の色素沈着の治療に有効である(グレード A)。
  • CQ53:トラネキサム酸の内服や注射は色素斑の治療に有効か? ー 推奨:トラネキサム酸の内服および注射は肝斑の治療に有効である(グレード C1)。

そこで今回は、トラネキサム酸と外用クリーム3剤(フルシノロン+ハイドロキノン+トレチノイン)併用と外用クリーム3剤を比較検討したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

グループA
(外用クリーム3剤+経口トラネキサム酸)
グループB
(外用クリーム3剤)
P値
ベースラインMASIスコア12.0633
(SD±5.51678)
11.3533
(SD±5.69693)
0.6257
投与8週間後のMASIスコア5.5833
(SD±3.28624)
5.7100
(SD±3.53264)
0.8861
MASIスコアの平均減少率6.4933
(SD±4.38358)
5.7833
(SD±5.04251)
0.5628

60例の患者(両群とも30例)が研究を完了した。MASIスコアの平均減少率については、両群で統計的に有意な差は認められませんでした(グループA:6.4933±4.38358、グループB:5.7833±5.04251、p=0.56)。

コメント

肝斑治療における外用クリームの有効性の高さが示されていますが、トラネキサム酸併用時の効果については明らかになっていません。

さて、本試験結果によれば、外用クリーム3剤へのトラネキサム酸経口投与の併用は、外用クリーム3剤のみと比較して、MASIスコア減少に差が認められませんでした。

サンプルサイズは各群30例と算出されています。一見するとサンプルサイズは充分であるかのように思われますが、MASIスコアの予想平均減少値は、外用クリーム3剤群で2.19±2.37、外用クリーム3剤+経口トラネキサム酸群で6.99±6.05と算出されていることから、試験結果とは異なります。つまり、サンプルサイズが不足していた可能性があります。

著者も述べているように、経口トラネキサム酸を補助的に使用することは考慮されても良いのではないかと考えられます。トラネキサム酸は安価であることから、治療満足度を少しでも向上させたい場合は併用しても良いのかもしれません。ただし、基本的には外用クリームの使用が第一選択です。

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✅まとめ✅ 外用クリーム3剤へのトラネキサム酸経口投与の併用は、外用クリーム3剤のみと比較して、MASIスコア減少に差が認められなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:肝斑は、主に直射日光にさらされた部分に生じる顔面の色素沈着を特徴とする後天性の皮膚疾患である。肝斑の治療には、中力価のコルチコステロイド(フルオシノロン:Fluocinolone acetonide 0.01%)、レチノイド(トレチノイン:Tretinoin 0.05%)およびハイドロキノン4%の3剤併用クリームが世界で広く使用されている外用医薬品の1つである。また、トラネキサム酸は、局所投与、注射、経口投与のいずれにおいても、肝斑治療に有効であることが確認されている薬剤です。本研究では、肝斑治療薬としてトラネキサム酸を外用クリーム3剤を併用した場合と外用クリーム3剤併用した場合の肝斑面積重症度指数(MASI)スコアの平均減少量を比較することを目的とした。

方法:パキスタンの3次ケア病院においてランダム化比較試験を実施した。研究対象基準を満たし、書面によるインフォームドコンセントを得た63例の肝斑患者が登録された。これらの患者をランダムに2つの治療群に分けた。グループAには3種混合クリームとトラネキサム酸の経口投与を行い、グループBには3種混合クリームを8週間投与した。
肝斑の重症度は、ベースラインと8週目の終わりに計算されたMASIによって評価された。MASIスコアの平均減少率を両群で計算し、SPSS20を使用して統計的に分析した。

結果:60例の患者(両群とも30例)が研究を完了した。MASIスコアの平均減少率については、両群で統計的に有意な差は認められなかった(グループA:6.4933±4.38358、グループB:5.7833±5.04251、p=0.56)。

結論:トラネキサム酸の経口投与は、外用3剤併用時のMASIスコアの減少に有意な寄与はなかった。3剤併用外用クリームの補助剤としての役割が期待される。

キーワード:ハイドロキノン;トラネキサム酸;肝斑;フルオシノロンアセトニド;トレチノイン.

引用文献

Oral Tranexemic Acid With Triple Combination Cream (Flucinolone+Hydroquinone+Tretinoin) Versus Triple Combination Cream Alone In Treatment Of Melasma
Anam Basit et al. PMID: 34137548
J Ayub Med Coll Abbottabad. Apr-Jun 2021;33(2):293-298.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34137548/

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