肝斑に対するトラネキサム酸内服とハイドロキノンクリームの併用の有効性は?
肝斑は一般的な色素沈着症であり、これまでの研究でトラネキサム酸の内服が一定の有効性を示しています。国内の診療ガイドラインでは「トラネキサム酸の内服および注射は肝斑の治療に有効である(グレード C1)」とされています。また同ガイドラインにおいて、「ハイドロキノン単体では,4%製剤で肝斑治療に有効である(グレード A)」と記載されています。しかし、これらの併用療法に関する明確な推奨はありません。
そこで今回は、肝斑治療におけるトラネキサム酸内服とハイドロキノンクリーム外用の併用の有効性について、ハイドロキノンクリーム外用と比較した二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。本研究では、中等度から重度の肝斑を有する被験者が登録され、A群にはハイドロキノン4%クリーム、日焼け止め、トラネキサム酸の経口投与が、B群にはハイドロキノン4%クリーム、日焼け止め、プラセボカプセルが3ヵ月間投与されました。すべての被験者は、日焼け止めのみで、さらに3ヶ月のフォローアップを受けました。主要アウトカムは、modified Melasma Area and Severity Index(mMASI)スコア*の変化でした。
*数値が高いほど重症
試験結果から明らかになったことは?
50例の被験者が登録され、全員が研究を完了しました。
A群 (ハイドロキノン4%クリーム、 日焼け止め、 トラネキサム酸経口) | B群 (ハイドロキノン4%クリーム、 日焼け止め、 プラセボカプセル) | |
3ヵ月後のmMASI変化 | 55%減少 | 10%減少 |
3ヵ月後のmMASIは、A群では平均8.96(SD 2.45)から4.0(SD 1.6)へと55%減少したのに対し、B群では平均8.53(SD 2.04)から7.6(SD 2.0)へと10%減少しました。
内服・外用療法中止後3ヵ月では、mMASIの基準値と比較してA群(平均5.1 SD 1.7 )が42%減少、B群(平均 8.1 SD 2.0)は 4.7% 減少が認められました。
重篤な有害事象は認められませんでした。
コメント
肝斑の治療は自費であることから、特に患者満足度の高い治療が求められています。一般的にはトラネキサム酸の内服あるいはビタミンC内服との併用が行われている印象です。
さて、本試験結果によれば、肝斑の治療において、トラネキサム酸内服とハイドロキノン外用との併用は、ハイドロキノン単独よりも効果的であることが示されました。トラネキサム酸の用法用量が知りたいところですが、有料文献であるため内容を確認できませんでした。過去の報告では、250mg/回を1日2〜3回行うことが多いようです。
外用薬としては、ハイドロキノンとトレチノインが使用されていますので、次はトレチノインの効果について検証した論文を読んでみようと思います。
✅まとめ✅ 肝斑の治療において、トラネキサム酸内服とハイドロキノン外用との併用は、ハイドロキノン単独よりも効果的だった。
根拠となった試験の抄録
背景・目的:肝斑は一般的な色素沈着症であり、これまでの研究でトラネキサム酸の内服が一定の有効性を示している。本研究の目的は、肝斑の治療におけるトラネキサム酸内服とハイドロキノンクリームの併用の有効性を評価することであった。
方法:中等度から重度の肝斑を有する被験者が登録された。A群にはハイドロキノン4%クリーム、日焼け止め、トラネキサム酸の経口投与を、B群にはハイドロキノン4%クリーム、日焼け止め、プラセボカプセルを3ヵ月間投与した。すべての被験者は、日焼け止めのみで、さらに3ヶ月のフォローアップを受けた。
主要アウトカム指標は、modified Melasma Area and Severity Index(mMASI)スコアの変化とした。また、メラニン指数はメクサメーターを用いて測定した。
結果:50例の被験者が登録され、全員が研究を完了した。3ヵ月後のmMASIは、A群では平均8.96(SD 2.45)から4.0(SD 1.6)へと55%減少したのに対し、B群では平均8.53(SD 2.04)から7.6(SD 2.0)へと10%減少した。
内服・外用療法中止後3ヵ月では、mMASIの基準値と比較してA群(平均5.1 SD 1.7 )が42%減少、B群(平均 8.1 SD 2.0)は 4.7% 減少が認められた。また、重篤な有害事象は認められなかった。
結論:肝斑の治療において,トラネキサム酸内服とハイドロキノン外用との併用は,ハイドロキノン単独よりも効果的である。
キーワード:ハイドロキノン、mMASI、肝斑、メキサメーター、色素沈着、トラネキサム酸
引用文献
Randomised, controlled, double-blind study of combination therapy of oral tranexamic acid and topical hydroquinone in the treatment of melasma
Nahla Shihab et al. PMID: 32109318 DOI: 10.1111/ajd.13267
Australas J Dermatol. 2020 Aug;61(3):237-242. doi: 10.1111/ajd.13267. Epub 2020 Feb 28.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32109318/
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