中等度から重度の肝斑患者における経口トラネキサム酸の有効性・安全性は?(単施設・小規模RCT; J Am Acad Dermatol. 2018)

woman s face 11_皮膚・骨格筋系
Photo by Gabb Tapique on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

肝斑治療にトラネキサム酸が用いられているが、その有効性はどの程度なのか?

肝斑は一般的な色素性疾患であり、しばしば治療が困難であるとされています。トラネキサム酸は、肝斑の有望な治療薬として注目されていますが、対照試験はほとんど存在しません。

形成外科診療ガイドラインでは、「トラネキサム酸の内服および注射は肝斑の治療に有効である(グレード C1)」とされています(日本形成外科学会 形成外科診療ガイドラインシリーズ 皮膚疾患)。しかし、この推奨の根拠とされた臨床試験は2006〜2007年に実施された5件だけであり、アップデートが必要であると考えられます。

そこで今回は、中等度から重度の肝斑患者を対象に、トラネキサム酸250mgまたはプラセボカプセルを1日2回、3ヵ月間投与し、その後、日焼け止めを3ヵ月間使用したランダム化比較試験(2017年に公表)の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

合計44例の患者が登録され、39例が研究を完了しました。3ヵ月後、経口トラネキサム酸群ではmMASIスコアが49%減少したのに対し、対照群では18%減少しました。重度の肝斑の患者では、中等度の肝斑患者に比べて、より改善されました。

治療中止から3ヵ月後のmMASIスコアは、ベースライン時と比較して、経口トラネキサム酸群では26%の減少、プラセボ群では19%の減少でした。両群とも重篤な有害事象は認められませんでした。

コメント

肝斑治療には経口トラネキサム酸やハイドロキノン外用が使用されます。

さて、本試験結果によれば、トラネキサム酸250mg(1日2回)の3ヵ月投与は、プラセボと比較して、mMASIスコアが大きく減少しました。その後の日焼け止めの使用のみでは治療効果が低下していることから、トラネキサム酸の服用を継続した方が良いと考えられます。ただし、単施設・小規模のRCTの結果であることから、結果を過大評価している可能性もあります。他の試験結果も見た方が良いと考えられます。

ちなみに肝斑治療は基本的に自費となります。この理由としては、肝斑が炎症などを引き起こさないシミ(色素沈着)であり、健康を直接的に害することがないと考えられているためです。

肝斑治療においては、ハイドロキノンと併用されることも多いことから、ハイドロキノンとの併用療法の有効性・安全性の臨床試験も読んでみようと思います。

photo of topless woman

✅まとめ✅ トラネキサム酸の経口投与は、中等度から重度の肝斑に対して、副作用を最小限に抑えた効果的な治療法であると考えられる。

根拠となった試験の抄録

背景:肝斑は一般的な色素性疾患であり、しばしば治療が困難である。トラネキサム酸(TA)は、肝斑の有望な治療薬として注目されているが、対照試験はほとんど存在しない。

目的:中等度から重度の肝斑患者におけるTA経口投与の有効性を明らかにすること。

方法:中等度から重度の肝斑患者を対象に、TA 250mgまたはプラセボカプセルを1日2回、3ヵ月間投与し、その後、日焼け止めを3ヵ月間使用した。
主要評価項目は、modified Melasma Area and Severity Index (mMASI)*スコアとした。
*肝斑面積と重症度スコア

Modified MASI scoring Abbreviation: MaSI, Melasma area and Severity Index.
Clin Cosmet Investig Dermatol. 2019 Feb 14;12:115-122. より引用

結果:合計44例の患者が登録され、39例が研究を完了した。3ヵ月後、TA群ではmMASIスコアが49%減少したのに対し、対照群では18%減少した。重度の肝斑の患者は、中程度の肝斑の患者に比べて、より改善された。治療中止から3ヵ月後のmMASIスコアは、ベースライン時と比較して、TA群では26%の減少、プラセボ群では19%の減少であった。両群とも重篤な有害事象は認められなかった。

制限事項:ヒスパニック系の女性が多く登録された単一施設での試験。

結論:TAの経口投与は、中等度から重度の肝斑に対して、副作用を最小限に抑えた効果的な治療法であると考えられる。

キーワード:ヒスパニック、エビデンスに基づく医療、メラニン、肝斑、色素沈着、ランダム化比較試験、トラネキサム酸

引用文献

Randomized, placebo-controlled, double-blind study of oral tranexamic acid in the treatment of moderate-to-severe melasma – PubMed
Eunice Del Rosario et al. PMID: 28987494 DOI: 10.1016/j.jaad.2017.09.053
J Am Acad Dermatol. 2018 Feb;78(2):363-369. doi: 10.1016/j.jaad.2017.09.053. Epub 2017 Oct 4.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28987494/

関連記事

【急性胃腸出血患者におけるトラネキサム酸の高用量24時間静注の効果はどのくらいですか?(DB-RCT; HALT-IT trial; Lancet 2020)】

【急性外傷性脳損傷におけるトラネキサム酸注射液の効果はどのくらいですか?(RCT; CRASH-3 trial; Lancet 2019)】

コメント

タイトルとURLをコピーしました