朝食後の歯みがきが高血圧と関係する?|地域住民を対象とした横断研究(Sci Rep. 2025)

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歯磨き習慣と高血圧との関連性は?

「歯みがきの習慣」が全身の健康に影響する可能性は以前から指摘されており、歯周病は心血管疾患(CVD)との関連も報告されています。では、歯みがきの “タイミング” は高血圧と関係するのでしょうか?

今回ご紹介するのは、鹿児島県垂水市で実施された地域住民の健診データから、歯みがきのタイミング・頻度と高血圧の関連を検討した横断研究の結果です。


研究概要

項目内容
研究デザイン地域住民を対象とした横断研究
参加者941名(男性361名)平均年齢 67±11歳
データ収集年2019年
高血圧の定義収縮期BP ≥140mmHg、拡張期BP ≥90mmHg、または降圧薬の使用
歯みがき習慣の評価質問票による自己申告(起床時・各食事前後・就寝前)
口腔評価歯科医による診察
平均血圧132±17 / 78±11mmHg
高血圧の有病率56%

◆歯みがき習慣の分布

参加者が回答した歯みがきタイミングは以下の通り:

  • 起床時:33%
  • 朝食前:8%
  • 朝食後:69%
  • 昼食後:48%
  • 夕食前:4%
  • 夕食後:42%
  • 就寝前:51%

◆主な結果

● 単変量解析(Univariable analysis)

以下の習慣は高血圧の有病率が低いことと有意に関連

  • 朝食後の歯みがき
  • 昼食後の歯みがき
  • 就寝前の歯みがき
  • 歯みがきの頻度 ≥ 3回/日

● 多変量解析(Multivariable analysis)

交絡因子を調整した解析では、
「朝食後の歯みがき」が高血圧と独立して関連する
(=朝食後に歯みがきをする人は高血圧である割合が低い)。


◆研究者の結論

  • 朝食後の歯みがき習慣は高血圧のリスク低減と独立して関連していた。
  • 歯周病や口腔内の炎症負荷が全身の血管機能に影響する可能性が考えられるが、因果関係は不明。

試験の限界

  1. 横断研究であるため因果関係を証明できない
     「朝食後に歯をみがくから血圧が低い」のか、
     「健康意識が高い人が朝食後に歯みがきをしているだけ」なのかは判断できない。
  2. 自己申告による歯みがき習慣のバイアス
     回答の正確性は保証できず、習慣が過大申告される可能性がある。
  3. 食事内容・塩分摂取量・運動習慣など重要な交絡因子を完全には調整できない可能性
     生活習慣が複雑に絡むため、因果推論には慎重さが必要。
  4. 地域住民(垂水市)の特性に依存し、他地域に外挿できない可能性
     高齢者が多い地域であり、一般人口とは異なる。
  5. 高血圧の診断は健診時の1回測定を含む可能性がある
     白衣高血圧や測定誤差も排除できない。

考察

本研究は、「朝食後の歯みがき習慣」と「高血圧リスクの低さ」の関連を示した興味深いデータです。
近年、口腔内の炎症(特に歯周病)が動脈硬化・血圧上昇に影響する可能性が指摘されており、今回の結果はその延長線上に位置付けられます。

ただし、横断研究のため因果関係は不明であり、
「朝食後に歯みがきすれば血圧が下がる」と断言することはできません。

しかし、口腔ケアが全身の健康に良い影響をもたらす可能性は高く、
高血圧予防の一環として朝食後の歯みがきを一考しても良いと言えます。


コメント

◆まとめ

  • 朝食後の歯みがき習慣は高血圧の有病率と独立して関連した。
  • 横断研究のため因果関係は不明だが、口腔ケアと血管健康の関連を裏付ける重要な報告。
  • 口腔ケアの徹底は心血管・全身疾患の予防につながる可能性がある。

健康志向バイアス、誤分類バイアスを排除することは困難ですが、歯磨きをやらないことのメリットが限りなく小さいため、実践した方が良さそうです。

個人的には、歯磨きにかける時間や週の回数、フロスの使用頻度なども気にかかるところです。再現性の確認を含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

✅まとめ✅ 地域ベースの横断研究の結果、朝食後の歯磨きは、高血圧リスクの低下と独立して関連していた。

根拠となった試験の抄録

歯周炎は心血管疾患(CVD)と関連していることが報告されており、口腔ケアがCVD予防に役割を果たす可能性があることを示唆している。一方、高血圧は口腔の健康と関連しているが、歯磨き習慣との関連は明らかではない。そこで本研究では、歯磨き習慣と高血圧の関係性を調査することを目的とした。垂水市で2019年に実施された地域ベースの研究から合計941名(男性361名、平均年齢67±11歳)が対象となった。高血圧は収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬の使用と定義した。歯磨き習慣は質問票を用いて評価し、口腔の健康状態は歯科医師によって評価した。平均血圧は132±17/78±11mmHgで、高血圧の有病率は56%であった。参加者の歯磨き率は、起床時33%、朝食前8%、朝食後69%、昼食後48%、夕食前4%、夕食後42%、就寝前51%でした。単変量解析では、歯磨きのタイミング(朝食後、昼食後、就寝前)と歯磨き頻度(1日3回以上)の両方が、高血圧の有病率低下と有意に関連していました。多変量解析では、朝食後の歯磨きと高血圧の間に有意な関連が示されました。結論として、朝食後の歯磨きは、高血圧リスクの低下と独立して関連していました。

キーワード: 血圧、高血圧、口腔状態、歯磨き習慣

引用文献

Association between toothbrushing habits and hypertension in the general population
Ayano Tezuka et al. PMID: 41068213 PMCID: PMC12511358 DOI: 10.1038/s41598-025-19217-x
Sci Rep. 2025 Oct 9;15(1):35333. doi: 10.1038/s41598-025-19217-x.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41068213/

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