大動脈弁狭窄症でTAVIを受けた患者にSGLT2阻害薬は有効か?(RCT; DapaTAVI試験; N Engl J Med. 2025)

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TAVI後の患者に“次の一手”を:ダパグリフロジンがもたらす新たな可能性

SGLT2阻害薬は、糖尿病や心不全に対する多面的な有用性が示され、心不全ハイリスク患者への投与が広がりつつあります。しかし、弁膜症、特に大動脈弁狭窄症に対してTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)を受けた患者は、これまで大規模RCTの対象から除外されてきました。

このような背景のもと、心不全既往を有し、TAVI後の患者にSGLT2阻害薬ダパグリフロジンが有効かを明らかにするために実施されたのが、スペイン発のランダム化比較試験(DapaTAVI試験です。

主要評価項目は、全死亡または心不全悪化(入院または緊急受診)の複合アウトカム(1年間)でした。

試験結果から明らかになったことは?

試験概要

項目内容
試験名DapaTAVI試験(NCT04696185)
デザインランダム化、対照、オープンラベル、スペイン多施設試験
対象TAVIを受けた心不全既往患者(かつ腎機能障害・糖尿病・左室機能低下のいずれかを有する)
介入ダパグリフロジン10mg/日 vs. 標準治療
主要評価項目全死亡または心不全悪化(入院または緊急受診)の複合アウトカム(1年間)

主要アウトカム

評価項目ダパグリフロジン群標準治療群相対リスク低下(95%CI
複合アウトカム発生率15.0%(91/620)20.1%(124/637)HR 0.72(0.55–0.95)
P=0.02
全死亡7.8%8.9%HR 0.87(0.59–1.28)
心不全悪化9.4%14.4%サブHR 0.63(0.45–0.88)

有害事象

  • 外陰部感染、低血圧がダパグリフロジン群で有意に多く認められた。

コメント

本試験は、TAVI後の高リスク心不全患者において、SGLT2阻害薬が心不全再発を有意に抑制しうることを初めて示したRCTです。全死亡の抑制効果は統計的に有意ではなかったものの、心不全の入院や緊急受診という“実臨床での苦痛や医療負担”に直結するアウトカムを改善した意義は大きいといえます。

また、既報のDAPA-HFやDELIVER試験では対象外だった弁膜症患者が対象である点も臨床的に重要です。
一方で、SGLT2阻害薬に特有の副作用として、外陰部感染や低血圧が一定数みられた点には注意が必要で、慎重な患者選定とモニタリングが求められます。

再現性の確認も含めて更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、TAVIを受けた高齢の大動脈弁狭窄症患者において、ダパグリフロジンは標準治療と比較して、全死亡または心不全悪化のリスクを有意に低下させた。

根拠となった試験の抄録

背景:SGLT2阻害薬は高リスク患者において心不全による入院リスクを減少させることが知られているが、大動脈弁疾患を有する患者、とりわけTAVIを受けた患者はほとんどのRCTで除外されていた。

方法:本研究はスペインにおいて実施されたランダム化比較試験であり、大動脈弁狭窄症に対してTAVIを受けた患者において、ダパグリフロジン10mg/日の効果を標準治療と比較した。すべての患者は心不全の既往を有し、かつ腎機能障害、糖尿病、左室収縮不全のいずれかを併存していた。
主要評価項目は、全死亡または心不全の悪化(入院または緊急受診)からなる複合アウトカムとし、追跡期間は1年間とした。

結果:620人がダパグリフロジン群に、637人が標準治療群にランダム化され、主要解析には計1222人が含まれた。
主要アウトカムの発生率は、ダパグリフロジン群で15.0%(91人)、標準治療群で20.1%(124人)であった(ハザード比 0.72、95%CI 0.55~0.95、P=0.02)。
全死亡はダパグリフロジン群で47人(7.8%)、標準群で55人(8.9%)(HR 0.87、95%CI 0.59~1.28)。
心不全悪化はそれぞれ9.4%と14.4%であり(サブハザード比 0.63、95%CI 0.45~0.88)、ダパグリフロジン群で有意に少なかった。
外陰部感染と低血圧は、ダパグリフロジン群で有意に多く認められた。

結論:TAVIを受けた高齢の大動脈弁狭窄症患者において、ダパグリフロジンは標準治療と比較して、全死亡または心不全悪化のリスクを有意に低下させた。

引用文献

Dapagliflozin in Patients Undergoing Transcatheter Aortic-Valve Implantation
Sergio Raposeiras-Roubin et al. PMID: 40162639 DOI: 10.1056/NEJMoa2500366
N Engl J Med. 2025 Apr 10;392(14):1396-1405. doi: 10.1056/NEJMoa2500366. Epub 2025 Mar 29.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40162639/

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