安定狭心症に対する経皮的冠動脈インターベンション vs. プラセボ(DB-RCT; ORBITA-2試験; )

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安定狭心症患者の予後においてPCIはプラセボよりも優れているのか?

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は安定狭心症の症状を軽減するために頻繁に施行されています。しかし、抗狭心症薬の投与を受けていない患者において、PCIがプラセボよりも狭心症を緩和するかどうかは明らかとなっていません。

そこで今回は、安定狭心症患者を対象に、PCIとプラセボを比較した二重盲検ランダム化プラセボ対照PCI試験の結果をご紹介します。

患者はすべての抗狭心症薬を中止し、ランダム化前に2週間の症状評価段階を受けました。その後、患者はPCIを受ける群とプラセボを受ける群に1:1の割合でランダムに割り付けられ、12週間追跡されました。

本試験の主要エンドポイントは狭心症症状スコアであり、このスコアは、ある日に発生した狭心症エピソードの数、その日に処方された抗狭心症薬の数、および許容できない狭心症や急性冠症候群による盲検化解除、死亡などの臨床イベントに基づいて毎日算出されました(スコア幅:0〜79、スコアが高いほど狭心症に関する健康状態が悪いことを示す)。

試験結果から明らかになったことは?

合計301例の患者がランダム割付けを受けました(PCI群151例 vs. プラセボ群150例)。平均(±SD)年齢は64±9歳で、79%が男性でした。虚血は1心領域242例(80%)、2心領域52例(17%)、3心領域7例(2%)にみられました。標的血管のfractional flow reserveの中央値は0.63(四分位範囲 0.49~0.75)、instantaneous wave-free ratioの中央値は0.78(四分位範囲 0.55~0.87)でした。

PCI群プラセボ群オッズ比
(95%信頼区間)
平均狭心症症状スコア2.9点5.6点オッズ比 2.21
1.41~3.47
P<0.001

12週間の追跡では、平均狭心症症状スコアはPCI群で2.9点、プラセボ群で5.6点でした(オッズ比 2.21、95%信頼区間 1.41~3.47;P<0.001)。

プラセボ群では1例に狭心症が認められ、盲検化が解除されました。急性冠症候群はPCI群で4人、プラセボ群で6人にみられました。

コメント

安定狭心症では薬物療法が主体ですが、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が選択されることもあります。薬物療法を実施していない安定狭心症患者に対するPCIが、プラセボよりも優れているのかについては明らかとなっていません。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、安定狭心症で抗狭心症薬をほとんどあるいは全く投与されておらず、虚血の客観的証拠を有する患者において、PCIはプラセボよりも狭心症の症状スコアが低く、狭心症に関する健康状態が良好であることが示されました。

心理的観点からプラセボを使用することが困難な患者であると考えられましたが、盲検化を解除する規定を設定することで、臨床試験が実施できたものと考えられます。

当然の結果のように思われますが、エビデンスとして数値で示されたことは非常に意義のある試験結果です。

安定狭心症患者においても、やはりPCIの施行はプラセボよりも優れているようです。

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✅まとめ✅ 安定狭心症で抗狭心症薬をほとんどあるいは全く投与されておらず、虚血の客観的証拠を有する患者において、PCIはプラセボよりも狭心症の症状スコアが低く、狭心症に関する健康状態が良好であることを示した。

根拠となった試験の抄録

背景:経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は安定狭心症の症状を軽減するために頻繁に施行されている。抗狭心症薬の投与を受けていない患者において、PCIがプラセボよりも狭心症を緩和するかどうかはまだ不明である。

方法:安定狭心症患者を対象として、二重盲検ランダム化プラセボ対照PCI試験を行った。患者はすべての抗狭心症薬を中止し、ランダム化前に2週間の症状評価段階を受けた。その後、患者はPCIを受ける群とプラセボを受ける群に1:1の割合でランダムに割り付けられ、12週間追跡された。
主要エンドポイントは狭心症症状スコアであり、このスコアは、ある日に発生した狭心症エピソードの数、その日に処方された抗狭心症薬の数、および許容できない狭心症や急性冠症候群による盲検化解除、死亡などの臨床イベントに基づいて毎日算出された(スコア幅:0〜79、スコアが高いほど狭心症に関する健康状態が悪いことを示す)。

結果:合計301例の患者がランダム割付けを受けた(PCI群151例 vs. プラセボ群150例)。平均年齢は64±SD 9歳で、79%が男性であった。虚血は1心領域242例(80%)、2心領域52例(17%)、3心領域7例(2%)にみられた。標的血管のfractional flow reserveの中央値は0.63(四分位範囲 0.49~0.75)、instantaneous wave-free ratioの中央値は0.78(四分位範囲 0.55~0.87)であった。12週間の追跡では、平均狭心症症状スコアはPCI群で2.9点、プラセボ群で5.6点であった(オッズ比 2.21、95%信頼区間 1.41~3.47;P<0.001)。プラセボ群では1例に狭心症が認められ、盲検化が解除された。急性冠症候群はPCI群で4人、プラセボ群で6人にみられた。

結論:安定狭心症で抗狭心症薬をほとんどあるいは全く投与されておらず、虚血の客観的証拠を有する患者において、PCIはプラセボよりも狭心症の症状スコアが低く、狭心症に関する健康状態が良好であることを示した。

資金提供:National Institute for Health and Care Research Imperial Biomedical Research Centre他

ClinicalTrials.gov番号:NCT03742050

引用文献

A Placebo-Controlled Trial of Percutaneous Coronary Intervention for Stable Angina
Christopher A Rajkumar et al. PMID: 38015442 DOI: 10.1056/NEJMoa2310610
N Engl J Med. 2023 Nov 11. doi: 10.1056/NEJMoa2310610. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38015442/

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