片頭痛発作に対して優れるトリプタン系薬はどれですか?(CQいただきましたシリーズ)

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CQ. トリプタン系薬は何が良いですか?

背景

来局患者が落ち着いたある日の午後、頭痛持ちのスタッフが「トリプタンはどれが良いんですかね?担当医はゾルミトリプタンが早く効いて効果が高いって言っていましたが合う合わないありますよね」と、、、

久しぶりにCQいただきましたシリーズの始まりである。

片頭痛発作におけるトリプタン系薬剤の特徴とは?

片頭痛発作に対してトリプタン系薬剤が奏効することが報告されています。

2005年の報告によれば、トリプタン製剤の早期服用で2時間以内に頭痛が消失した患者の割合は88%、満足度77%であることが報告されています。一方、血管周囲の炎症が進んで痛みが激しくなってから服薬した場合の有効性は23%、満足度29%であり、早期服用の重要性が示されています。

2025年3月現在、トリプタン系薬剤は5製品が承認されていますが、薬剤間の比較は充分に行われていません。

情報検索の結果

薬剤間の添付文書情報の比較

薬物動態(単回投与)のデータを下表にまとめました。またデータから効果の発揮、持続効果、改善率について考察を加えています。

ただし、試験参加者は主に健康成人であり症例数は数例~10数例と限られています。また、直接比較試験の結果ではないことから、あくまでも間接比較の結果であり、実際の効果は使用してみなければわかりません。参考程度に捉えてください

薬剤名Tmax(時間)Cmax(ng/mL)t1/2(時間)速く効果を発揮する持続効果を発揮する頭痛改善率が高い薬物相互作用
エレトリプタン
(商品名:レルパックス
20mg:1.0
40mg:1.2
20mg:38.9
40mg:69.7
20mg:3.2
40mg:3.9
◎(速い)○(中程度の持続)◎(高い効果)エルゴタミン含有製剤他のトリプタン系薬剤CYP3A4を強く阻害する薬剤(HIVプロテアーゼ阻害剤:リトナビル(商品名:ノービア)、ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッド))
スマトリプタン
(商品名:イミグラン
50mg:1.8±0.9
100mg:2.0±0.9
50mg:32.6±8.4
100mg:58.2±17.2
50mg:2.2±0.3
100mg:2.4±0.5
〇(やや速い)△(やや短め)エルゴタミン含有製剤他のトリプタン系薬剤MAO阻害剤
ゾルミトリプタン
(商品名:ゾーミッグ
※女性の方がAUC及びCmaxが約50%高値
2.5mg
未変化体:3.00(1.00~5.00)
活性代謝物:3.00(1.50~5.00)
2.5mg
未変化体:5.23(3.64~7.50)
活性代謝物:3.51(2.78~4.44)
2.5mg
未変化体:2.40(0.30)
活性代謝物:2.35(0.45)
△(遅い)△(やや短め)エルゴタミン含有製剤他のトリプタン系薬剤MAO阻害剤
ナラトリプタン
(商品名:アマージ)
※追加投与は4時間以上あける(他の製剤は2時間以上)
2.5mg:2.68±1.342.5mg:5.62±1.312.5mg:5.05±1.71△(やや遅い)◎(持続時間が長い)エルゴタミン含有製剤他のトリプタン系薬剤
リザトリプタン
(商品名:マクサルト)
10mg
錠剤:1.0±0.6
口腔内崩壊錠:1.3±0.7
10mg
錠剤:20.3±5.3
口腔内崩壊錠:19.3±6.7
10mg
錠剤:1.6±0.3
口腔内崩壊錠:1.7±0.3
◎(速い)△(持続時間が短い)エルゴタミン含有製剤他のトリプタン系薬剤MAO阻害剤プロプラノロール

平均値±標準偏差あるいは中央値(範囲)

診療ガイドラインの推奨は?

頭痛の診療ガイドライン2021

頭痛の診療ガイドライン2021に「CQ II-2-5:複数のトリプタンをどう使い分けるか」が掲載されています。

推奨としては「該当なし」、「いずれのトリプタンも片頭痛発作に対する急性期治療薬としての臨床効果は明らかである.しかしながら,個々のトリプタンの特性についてはわずかながら差異がある.」とされています。

メタ解析の結果は?

ここからはメタ解析の結果をご紹介します。

1)BMJ. 2024 Sep 18:386:e080107. doi: 10.1136/bmj-2024-080107.(PMID: 39293828)

抄録の結果のみ:17の積極的介入またはプラセボのいずれかに割り付けられた89,445人の参加者からなる137件のランダム化比較試験が含まれた。すべての積極的介入は、プラセボと比較して、2時間後の疼痛緩和に対して優れた有効性を示し(オッズ比:ナラトリプタン 1.73、95%CI 1.27~2.34;エレトリプタン 5.19、4.25~6.33)、そのほとんどは24時間後までの疼痛緩和の持続に対しても有効であった(オッズ比:セレコキシブ 1.71、1.07~2.74;イブプロフェン 7.58、2.58~22.27)。
積極的介入群間のhead-to-head比較では、2時間後の疼痛緩和にはエレトリプタンが最も有効であった(オッズ比 1.46、1.18~1.81から3.01、2.13~4.25、次いでリザトリプタン(1.59、1.18~2.17から2.44、1.75~3.45)、スマトリプタン(1.35、1.03~1.75から2.04、1.49~2.86)、ゾルミトリプタン(1.47、1.04~2.08から1.96、1.39~2.86)であった。
持続的な疼痛緩和に関しては、最も有効な介入はエレトリプタンとイブプロフェンであった(オッズ比 1.41、1.02~1.93から4.82、1.31~17.67)。
CINeMAによる信頼度は、高いものから非常に低いものまであった。食品医薬品局認可用量のみ、高用量対低用量、バイアスのリスク、ベースライン時の中等度から重度の頭痛に関する感度分析でも、主要アウトカム、副次的アウトカムともに主な所見が確認された。

2)Cephalalgia. 2014 Apr;34(4):258-67. doi: 10.1177/0333102413508661.(PMID: 24108308)

抄録の結果のみ:74件のランダム化比較試験のデータを対象とした。すべてのトリプタン系薬剤は、24時間無痛反応が持続したナラトリプタンを除き、すべてのアウトカムにおいてプラセボより有意に優れていた。エレトリプタンは一貫して最も高い治療効果を示した。
2時間のエンドポイントでは、エレトリプタンはスマトリプタン、アルモトリプタン(almotriptan)、ナラトリプタン、フロバトリプタン(frovatriptan)に対して2つのアウトカムのうち少なくとも1つにおいて統計学的に有意に優れていた。リザトリプタンは2番目に高い治療効果を示し、ゾルミトリプタンがそれに続いた。
24時間エンドポイントでは、エレトリプタンはスマトリプタン、リザトリプタン、almotriptan、ナラトリプタンに対して2つのアウトカムのうち少なくとも1つにおいて統計学的に有意に優れていた。Frovatriptanのデータはこのエンドポイントでは得られなかった。
さらに、エレトリプタンがすべてのトリプタン系薬剤の中で最も良好な結果をもたらす確率は、2時間後の無痛反応では68%、24時間の無痛反応の持続では54%であった。

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✅結論✅ トリプタン系薬剤の効果は個人差が大きく、有効性・安全性・コスト、そして患者背景を踏まえた選択が求められる。メタ解析の結果を踏まえると有効性についてはエレトリプタンが優れているようであった。

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