変形性膝関節症に対するメトトレキサート経口投与による疼痛軽減効果は?(RCT; Ann Intern Med. 2024)

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Knee OAに対するメトトレキサートの効果は?

変形性関節症(OA)の治療法は限られています。これまでの小規模な研究から、抗リウマチ薬であるメトトレキサートがOA疼痛の治療薬となりうる可能性が示唆されていますが、実臨床における検証は充分ではありません。

そこで今回は、膝関節OA(KOA)におけるメトトレキサートの症状改善効果を評価することを目的に実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験は、2014年6月13日~2017年10月13日に行われた多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験です(ISRCTN77854383; EudraCT: 2013-001689-41)。英国の15の二次医療筋骨格系クリニックで実施されました。

組み入れ対象は、症候性でX線写真上のKOAを有し、過去3ヵ月間のほとんどの日に膝関節痛(重症度10段階中4以上)を認め、現在の薬物治療で十分な効果が得られない参加者計207名でした。

試験参加者はメトトレキサート週1回経口投与(6週間ごとに10~25mgに漸増)またはマッチさせたプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられ、12ヵ月にわたって通常の鎮痛が継続されました。

本試験の主要エンドポイントは、6ヵ月時点の平均膝痛(数値評価尺度[NRS]0~10)であり、長期的な反応を評価するために12ヵ月の追跡が行われました。副次的エンドポイントは、膝のこわばり、機能アウトカム、有害事象(AE)でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計155人の参加者(女性64%;平均年齢60.9歳;50%がKellgren-Lawrenceグレード3~4)がメトトレキサート群(n=77)とプラセボ群(n=78)にランダムに割り付けられました。6ヵ月後の追跡率は86%(n=134、メトトレキサート:66、プラセボ:68)でした。

平均膝痛ベースライン時6ヵ月後
メトトレキサート群6.4(SD 1.80)5.1(SD 2.32)
プラセボ群6.8(SD 1.62)6.2(SD 2.30)

平均膝痛は、メトトレキサート群ではベースライン時の6.4(SD 1.80)から6ヵ月後には5.1(SD 2.32)に、プラセボ群では6.8(SD 1.62)から6.2(SD 2.30)に減少しました。

6ヵ月時点での評価
(95%CI)
メトトレキサート群 vs. プラセボ群
平均膝痛(NRS)0.79点(0.08~1.51
P=0.030
こわばり0.60ポイント
0.01~1.18
P=0.045
機能5.01ポイント
1.29~8.74
P=0.008

主要評価項目であるintention-to-treat解析では、メトトレキサート群でNRSポイントが0.79点(95%CI 0.08~1.51;P=0.030)と統計学的に有意な疼痛軽減が認められました。また、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Indexのこわばり(筋肉の硬さ:0.60ポイント、CI 0.01~1.18;P=0.045)および機能(5.01ポイント、CI 1.29~8.74;P=0.008)についても、6ヵ月時点でメトトレキサート投与群に統計学的に有意な差が認められました。

治療アドヒアランスの解析では、用量反応効果が支持されました。

治療に関連性のない重篤なAEが4件報告されました(メトトレキサート:2件、プラセボ:2件)。

コメント

変形性膝関節症の治療方法は限られており、理学療法、薬物治療、最終的には手術が選択されます。病態のステージにより、選択される薬物療法が異なりますが、患者ニーズを満たしているとは言えない状況です。メトトレキサートが治療候補として注目されていますが、実臨床における検証は充分とは言えません。

さて、ランダム化比較試験の結果、通常の薬物療法にメトトレキサート経口投与を追加することにより、6ヵ月後の変形性膝関節症の疼痛、こわばり、機能において統計学的に有意な減少が認められました。

ただしNRSは0.79ポイントであり、患者にとって有益かどうかについては結論が得られていません。これまでの報告(レビューPMID: 15207508)によれば、臨床的に意義のある差異の最小差は、NRS変化が1〜2ポイントであるようです(関連記事)。

今回の患者背景が完全に一致するわけではありませんが、参考となるデータです。よりメトトレキサートの有益性を評価するためには、薬剤用量の設定も含めて、より大規模なランダム化比較試験の実施が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、通常の薬物療法にメトトレキサート経口投与を追加することにより、6ヵ月後の変形性膝関節症の疼痛、こわばり、機能において統計学的に有意な減少が認められた。

根拠となった試験の抄録

背景:変形性関節症(OA)の治療法は限られている。これまでの小規模な研究から、抗リウマチ薬であるメトトレキサートがOA疼痛の治療薬となりうる可能性が示唆されている。

目的:膝関節OA(KOA)におけるメトトレキサートの症状改善効果を評価すること。

試験デザイン:2014年6月13日~2017年10月13日に行われた多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(ISRCTN77854383; EudraCT: 2013-001689-41)。

試験設定:英国の15の二次医療筋骨格系クリニック。

試験参加者:症候性でX線写真上のKOAを有し、過去3ヵ月間のほとんどの日に膝関節痛(重症度10段階中4以上)を認め、現在の薬物治療で十分な効果が得られない参加者計207名を組み入れの対象とした。

介入:参加者はメトトレキサート週1回経口投与(6週間ごとに10~25mgに漸増)またはマッチさせたプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられ、12ヵ月にわたって通常の鎮痛が継続された。

測定:主要エンドポイントは、6ヵ月時点の平均膝痛(数値評価尺度[NRS]0~10)であり、長期的な反応を評価するために12ヵ月追跡を行った。副次的エンドポイントは、膝のこわばり、機能アウトカム、有害事象(AE)であった。

結果:合計155人の参加者(女性64%;平均年齢60.9歳;50%がKellgren-Lawrenceグレード3~4)がメトトレキサート群(n=77)とプラセボ群(n=78)にランダムに割り付けられた。6ヵ月後の追跡率は86%(n=134、メトトレキサート:66、プラセボ:68)であった。平均膝痛は、メトトレキサート群ではベースライン時の6.4(SD 1.80)から6ヵ月後には5.1(SD 2.32)に、プラセボ群では6.8(SD 1.62)から6.2(SD 2.30)に減少した。主要評価項目であるintention-to-treat解析では、メトトレキサート群でNRSポイントが0.79点(95%CI 0.08~1.51;P=0.030)と統計学的に有意な疼痛軽減が認められた。また、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Indexのこわばり(筋肉の硬さ:0.60ポイント、CI 0.01~1.18;P=0.045)および機能(5.01ポイント、CI 1.29~8.74;P=0.008)についても、6ヵ月時点でメトトレキサート投与群に統計学的に有意な差が認められた。治療アドヒアランスの解析では、用量反応効果が支持された。関連性のない重篤なAEが4件報告された(メトトレキサート:2件、プラセボ:2件)。

試験の限界:メトトレキサートの経口投与が不耐容のため皮下投与に変更できないこと。

結論:通常の薬物療法にメトトレキサート経口投与を追加することにより、6ヵ月後の変形性膝関節症の疼痛、こわばり、機能において統計学的に有意な減少が認められた。

主要資金源:Versus関節炎(Versus Arthritis)

引用文献

Pain Reduction With Oral Methotrexate in Knee Osteoarthritis : A Randomized, Placebo-Controlled Clinical Trial
Sarah R Kingsbury et al. PMID: 39074374 DOI: 10.7326/M24-0303
Ann Intern Med. 2024 Jul 30. doi: 10.7326/M24-0303. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39074374/

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