座位時間が短いと血圧は下がるのか?
座っている時間(座位時間)が長いと、血行不良と代謝低下が引き起こされ、死亡率増加や循環器疾患発症と関わることが報告されています。特に座位時間が長くなりやすい高齢者において、心代謝系の健康を改善するための実践的な健康増進戦略が求められています。
そこで今回は、高齢者の座位時間を減らし、血圧を改善するための座位行動削減介入の有効性を検討したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
この並行群間ランダム化比較試験は、ワシントン州の医療機関で2019年1月1日から2022年11月31日まで、座位時間が長く、肥満度(BMI)が30~50の60~89歳の成人を対象に実施されました。
試験参加者は、6ヵ月間、座位減少介入または健康的生活注意対照条件に1対1でランダムに割り付けられました。介入群では、10回のヘルスコーチング、座位削減目標、座位休憩を促すスタンディングデスクとフィットネストラッカーを受けました。注意コントロール群には10回のヘルスコーチングが行われ、身体活動や座りがちな行動を除いた一般的な健康的生活目標が設定されました。
ベースライン時、3ヵ月時、6ヵ月時に測定された主要アウトカムは、各時点で7日間装着した加速度計を用いて評価した座位時間でした。副次的アウトカムは、ベースライン時と6ヵ月時に測定された収縮期血圧と拡張期血圧でした。
試験結果から明らかになったことは?
合計283人の参加者(介入140人、対照143人)がランダムに割り付けられました(ベースラインの平均年齢、68.8[SD 6.2]歳;女性 186人[65.7%];平均肥満度、34.9[SD 4.7])。ベースライン時、147人(51.9%)が高血圧の診断を受け、97人(69.3%)が少なくとも1種類の降圧薬を服用していました。
座位時間 平均変化量の群間差 | |
3ヵ月後 | -31.44分/日 (95%CI -48.69 ~ -14.19) P<0.001 |
6ヵ月後 | -31.85分/日 (95%CI -52.91 ~ -10.79) P=0.003 |
座位時間は介入群で有利に減少し、3ヵ月後の平均変化量の差は-31.44分/日(95%CI -48.69 ~ -14.19分/日;P<0.001)、6ヵ月後の平均変化量は-31.85分/日(95%CI -52.91 ~ -10.79分/日;P=0.003)でした。
収縮期血圧の変化は3.48mmHg低く、6ヵ月時点では介入群に有利でした(95%CI -6.68 ~ -0.28mmHg;P=0.03)。
各群で6件の重篤な有害事象が認められましたが、試験に関連したものはありませんでした。
コメント
高齢者における座位時間の減少が、血圧を低下させる可能性があります。しかし、充分に検証されていません。
さて、ランダム化比較試験の結果、6ヵ月間の座位減少介入を受けた高齢者は座位時間を30分/日以上減少させ、収縮期血圧を低下させました。座位削減は、高齢者の健康を改善する有望なアプローチである可能性が示されました。
これまで成人を対象としたコホート研究で、座位時間の減少と、血圧、脂質、血糖の低下が関連する可能性が報告されています。また死亡リスク低減との関連性も報告されていますが、高齢者を対象としたランダム化比較試験による報告は限られています。
今後の検証により、血圧の低下に伴う心血管イベントの発生リスク低減や死亡リスク低減が認められるかが気にかかるところです。
続報に期待。
✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、6ヵ月間の座位減少介入を受けた高齢者は座位時間を30分/日以上減少させ、収縮期血圧を低下させた。座位削減は、高齢者の健康を改善する有望なアプローチである可能性がある。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:高齢者の心代謝系の健康を改善するための実践的な健康増進戦略が必要である。
目的:高齢者の座位時間を減らし、血圧を改善するための座位行動削減介入の有効性を検討すること。
試験デザイン、設定、参加者:この並行群間ランダム化臨床試験は、ワシントン州の医療機関で2019年1月1日から2022年11月31日まで、座位時間が長く、肥満度が30~50の60~89歳の成人を対象に実施された。
介入方法:参加者は、6ヵ月間、座位減少介入または健康的生活注意対照条件に1対1でランダムに割り付けられた。介入群では、10回のヘルスコーチング、座位削減目標、座位休憩を促すスタンディングデスクとフィットネストラッカーを受けた。注意コントロール群には10回のヘルスコーチングが行われ、身体活動や座りがちな行動を除いた一般的な健康的生活目標が設定された。
主要アウトカムと評価基準:ベースライン時、3ヵ月時、6ヵ月時に測定した主要アウトカムは、各時点で7日間装着した加速度計を用いて評価した座位時間であった。副次的アウトカムは、ベースライン時と6ヵ月時に測定された収縮期血圧と拡張期血圧であった。
結果:合計283人の参加者(介入140人、対照143人)がランダムに割り付けられた(ベースラインの平均年齢、68.8[SD 6.2]歳;女性 186人[65.7%];平均肥満度、34.9[SD 4.7])。ベースライン時、147人(51.9%)が高血圧の診断を受け、97人(69.3%)が少なくとも1種類の降圧薬を服用していた。座位時間は介入群で有利に減少し、3ヵ月後の平均変化量の差は-31.44分/日(95%CI -48.69 ~ -14.19分/日;P<0.001)、6ヵ月後の平均変化量は-31.85分/日(95%CI -52.91 ~ -10.79分/日;P=0.003)であった。収縮期血圧の変化は3.48mmHg低く、6ヵ月時点では介入群に有利であった(95%CI -6.68 ~ -0.28mmHg;P=0.03)。各群で6件の重篤な有害事象が認められたが、試験に関連したものはなかった。
結論と関連性:6ヵ月間の座位減少介入に関するこの研究では、介入を受けた高齢者は座位時間を30分/日以上減少させ、収縮期血圧を低下させた。座位削減は、高齢者の健康を改善する有望なアプローチである可能性がある。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03739762
引用文献
Sitting Time Reduction and Blood Pressure in Older Adults: A Randomized Clinical Trial
Dori E Rosenberg et al. PMID: 38536177 PMCID: PMC10973891 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2024.3234
JAMA Netw Open. 2024 Mar 4;7(3):e243234. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2024.3234.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38536177/
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