降圧治療と認知症リスクとの関連性は?
高血圧は認知症のリスク増加と関連してい流ことが報告されています。また降圧治療により血圧を下げると認知症のリスクが減少するというエビデンスも存在します。しかし、このエビデンスの一般的な高齢患者に対する一般化可能性は不明です。
そこで今回は、降圧薬の新規使用者という異質なグループにおいて、降圧薬治療が認知症リスクに及ぼす影響を評価することを目的に実施されたコホート内症例対象研究の結果をご紹介します。
2009〜2012年に降圧薬の服用を開始したイタリアのロンバルディア州の65歳以上の患者215,547人のコホートを含むネステッドケースコントロール研究が実施されました。症例は、追跡期間中(〜2019年)に認知症またはアルツハイマー病を発症した患者13,812人(年齢77.5±6.6歳、男性40%)でした。各症例に対して、性、年齢、臨床状態をマッチさせた対照被験者5人が選択されました。薬物療法への曝露は、降圧薬が追跡期間中に占める割合で測定されました。条件付きロジスティック回帰を用いて降圧薬への曝露に関連する転帰リスクがモデル化されました。
試験結果から明らかになったことは?
治療への曝露は認知症リスクと逆相関していました。
薬物療法への曝露の割合 | リスク減少 (95%CI) |
少ない患者 | 2%(-4〜7%) |
中等度の患者 | 12%(6〜17%) |
高い患者 | 24%(19〜28%) |
曝露が非常に少ない患者と比較して、曝露が少ない患者、中等度の患者、高い患者では、それぞれ2%(95%CI -4%〜7%)、12%(95%CI 6%〜17%)、24%(95%CI 19%〜28%)のリスク減少が示されました。
これは超高齢(85歳以上)および虚弱患者(すなわち、1年後の死亡リスクが高いという特徴を有する患者)においても同様でした。
コメント
高齢者における降圧療法と認知症リスクとの関連性については充分に検証されていません。
さて、ネステッドケースコントロール研究の結果、高齢者では、降圧薬治療は認知症リスクの低下と関連しており、これは超高齢者や虚弱患者においても同様でした。降圧薬治療の曝露期間が長いほどリスクが低下していました。交絡因子がどこまで調整されているのか気にかかるところです。またイタリアのロンバルディア州の高齢者が対象となっていることから、他の国や地域でも同様の結果が示されるのか検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ネステッドケースコントロール研究の結果、高齢者では、降圧薬治療は認知症リスクの低下と関連しており、これは超高齢者や虚弱患者においても同様であった。
根拠となった試験の抄録
背景:高血圧を下げると認知症のリスクが減少するというエビデンスが存在する。しかし、このエビデンスの一般的な高齢患者に対する一般化可能性は不明である。
目的:本研究では、降圧薬の新規使用者という異質なグループにおいて、降圧薬治療が認知症リスクに及ぼす影響を評価することを目的とした。
方法:2009〜2012年に降圧薬の服用を開始したイタリアのロンバルディア州の65歳以上の患者215,547人のコホートを含むネステッドケースコントロール研究を実施した。症例は、追跡期間中(〜2019年)に認知症またはアルツハイマー病を発症した患者13,812人(年齢77.5±6.6歳、男性40%)であった。各症例に対して、性、年齢、臨床状態をマッチさせた対照被験者5人を選択した。薬物療法への曝露は、降圧薬が追跡期間中に占める割合で測定した。条件付きロジスティック回帰を用いて降圧薬への曝露に関連する転帰リスクをモデル化した。
結果:治療への曝露は認知症リスクと逆相関していた。曝露が非常に少ない患者と比較して、曝露が少ない患者、中等度の患者、高い患者では、それぞれ2%(95%CI -4%〜7%)、12%(95%CI 6%〜17%)、24%(95%CI 19%〜28%)のリスク減少を示した。これは超高齢(85歳以上)および虚弱患者(すなわち、1年後の死亡リスクが高いという特徴を有する患者)においても同様であった。
結論:一般人口の高齢者では、降圧薬治療は認知症リスクの低下と関連している。これは超高齢者や虚弱患者においても同様であった。
キーワード:アルツハイマー病、降圧薬、認知症、高齢患者、集団ベースコホート研究
引用文献
Risk of Dementia During Antihypertensive Drug Therapy in the Elderly
Federico Rea et al. PMID: 38538198 DOI: 10.1016/j.jacc.2024.01.030
J Am Coll Cardiol. 2024 Apr 2;83(13):1194-1203. doi: 10.1016/j.jacc.2024.01.030. Epub 2024 Mar 25.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38538198/
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