2型糖尿病における厳格な血糖コントロールの効果はどのくらい?(SR&MA; Diabetes Obes Metab. 2024)

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集中的な血糖降下戦略は心血管イベント発生を抑制できるのか?

2型糖尿病(T2D)は様々な合併症を引き起こします。なかでも血管に関連する合併症は患者予後を悪化させることから、合併症の発症予防が求められています。治療目標に糖化ヘモグロビン(HbA1c)のコントロール指標が求められますが、厳格にコントロールした場合と、標準的なコントロールとで患者転帰に差があるのかについては結論づけられません。

そこで今回は、集中的な血糖降下戦略と標準的な血糖降下戦略の大血管および細小血管の転帰を明らかにし、これらの転帰と試験群の糖化ヘモグロビン(HbA1c)低下との関係を検討することを目的としたメタ解析の結果をご紹介します。

この系統的レビューとメタ解析において、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、および2023年8月までの書誌から関連する試験が同定されました。

大血管および細小血管の転帰、安全性の転帰が評価されました。プールされた試験特異的ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し、メタ回帰を用いてアウトカムとHbA1c低下との関係を解析しました。
大血管アウトカムには、心血管疾患(CVD)死亡、非致死的心筋梗塞(MI)、非致死的脳卒中の複合と定義された3ポイントMACE、その他のMACEエンドポイント[4ポイントMACEは3ポイントMACEに不安定狭心症による入院を加えたもの、5ポイントMACEは3MACEに不安定狭心症による入院と心不全(HF)による入院/冠動脈血行再建術を加えたもの]、MACEの各要素、HF、冠動脈アウトカム、その他の血管アウトカム、全死亡が含まれました。微小血管アウトカムには、神経障害、腎症、網膜症、および対象試験で報告されたこれらのアウトカムに関連するすべてのエンドポイントが含まれました。また、安全性に関するアウトカムとして、有害事象、重篤な有害事象、低血糖、重篤な低血糖が含まれました。

試験結果から明らかになったことは?

51,469例のT2D患者を対象とした11件のRCT(集中療法:N=26,691、標準療法:N=24,778)が対象となりました。

集中治療 vs. 標準治療ハザード比(95%CI)
非致死的心筋梗塞(MI)HR 0.84(0.75〜0.94
主要有害心血管イベントHR 0.97(0.92〜1.03

集中療法と標準療法は非致死的心筋梗塞(MI)のリスクを減少させましたが(HR 0.84、95%信頼区間 0.75〜0.94)、主要有害心血管イベント(HR 0.97、95%信頼区間 0.92〜1.03)およびその他の有害心血管アウトカムのリスクには差がありませんでした。

集中治療 vs. 標準治療ハザード比(95%CI)
網膜症HR 0.85(0.78〜0.93
腎症HR 0.71(0.58〜0.87
複合微小血管転帰HR 0.88(0.77〜1.00

集中治療と標準治療の比較では、網膜症(HR 0.85、0.78〜0.93)、腎症(HR 0.71、0.58〜0.87)、複合微小血管転帰(HR 0.88、0.77〜1.00)のリスクが減少しました。

メタ回帰分析では、HbA1c低下と主要有害心血管イベント、非致死的心筋梗塞、脳卒中、網膜症の転帰との間に逆直線関係があることを示すわずかなエビデンスが示されましたが、これらは統計学的に有意ではありませんでした。

コメント

2型糖尿病の心血管イベントに対する厳格な血糖コントロールの有効性については結論が得られていません。

さて、11件のランダム化比較試験のメタ解析の結果、2型糖尿病患者において、集中的な血糖コントロールは非致死的心筋梗塞、いくつかの微小血管アウトカム、特に網膜症や腎症のリスク低下と関連していました。一方、ほとんどの大血管転帰に対する集中的な血糖降下効果は認められませんでした。

非致死的心筋梗塞を除いて、これまでの報告と矛盾しないことから、やはり厳格な血糖コントロールは微小血管イベントの発生を抑制するために早期に行った方が意義が大きいと考えられます。

大血管イベントの発生抑制について、さらなる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 2型糖尿病患者において、集中的な血糖コントロールは非致死的心筋梗塞、いくつかの微小血管アウトカム、特に網膜症や腎症のリスク低下と関連していたが、ほとんどの大血管転帰に集中的な血糖降下効果が認められなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:2型糖尿病(T2D)における集中的な血糖降下戦略と標準的な血糖降下戦略の大血管および細小血管の転帰を明らかにし,これらの転帰と試験群の糖化ヘモグロビン(HbA1c)低下との関係を検討することを目的とした。

材料と方法:この系統的レビューとメタ解析において、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、および2023年8月までの書誌から関連する試験を同定した。大血管および細小血管の転帰を安全性の転帰とともに評価した。プールされた試験特異的ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し、メタ回帰を用いてアウトカムとHbA1c低下との関係を解析した。

結果:51,469例のT2D患者を対象とした11件のRCT(集中療法:N=26,691、標準療法:N=24,778)を対象とした。集中療法と標準療法は非致死的心筋梗塞(MI)のリスクを減少させたが(HR 0.84、95%信頼区間 0.75〜0.94)、主要有害心血管イベント(HR 0.97、95%信頼区間 0.92〜1.03)およびその他の有害心血管アウトカムのリスクには差がなかった。集中治療と標準治療の比較では、網膜症(HR 0.85、0.78〜0.93)、腎症(HR 0.71、0.58〜0.87)、複合微小血管転帰(HR 0.88、0.77〜1.00)のリスクが減少した。メタ回帰分析では、HbA1c低下と主要有害心血管イベント、非致死的心筋梗塞、脳卒中、網膜症の転帰との間に逆直線関係があることを示すわずかなエビデンスが示されたが、これらは統計学的に有意ではなかった。

結論:T2D患者において、集中的な血糖コントロールは非致死的MI、いくつかの微小血管アウトカム、特に網膜症や腎症のリスク低下と関連していた。ほとんどの大血管転帰に集中的な血糖降下効果が認められなかったことから、血糖コントロールと並行して心血管危険因子を管理する、より包括的なアプローチが必要である。

キーワード:集中的血糖降下、メタ解析、メタ回帰、ランダム化比較試験、標準治療、2型糖尿病

引用文献

Glycaemic control and macrovascular and microvascular outcomes: A systematic review and meta-analysis of trials investigating intensive glucose-lowering strategies in people with type 2 diabetes
Setor K Kunutsor et al. PMID: 38409644 DOI: 10.1111/dom.15511
Diabetes Obes Metab. 2024 Feb 26. doi: 10.1111/dom.15511. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38409644/

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