65歳以上の日本人2型糖尿病患者におけるエンパグリフロジンの有効性と安全性はどのくらい?(DB-RCT; EMPA-ELDERLY試験; Diabetes Obes Metab. 2023)

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高麗社におけるSGLT2阻害薬エンパグリフロジンの効果は?

血糖コントロールのためのナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT2is)は、心不全や慢性腎臓病に対する付加的な有益性から、2型糖尿病(T2D)患者において使用量が増加しています。しかし、SGLT2isは一般に体重を減少させるため、高齢者ではサルコペニアを促進する可能性があります。

そこで今回は、高齢のT2D患者において、SGLT2iであるエンパグリフロジンが血糖コントロールに加えて筋肉量と筋力に及ぼす影響を評価した二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験では、65歳以上で肥満度22kg/m2以上、糖化ヘモグロビン(HbA1c)7.0%~10.0%のT2D患者を、1日1回投与のエンパグリフロジン10mgまたはプラセボに1:1でランダムに割り付け、52週間投与しました。

本試験の主要評価項目は52週目のHbA1cのベースラインからの変化であり、副次的エンドポイントは筋肉量と筋力のベースラインからの変化でした。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された129例のうち72.4%が男性で、平均年齢74.1歳、肥満度25.6kg/m2、HbA1c 7.6%でした。

ベースラインからのプラセボ調整平均変化率
投与52週目のHbA1c-0.57%
(95%CI -0.78 〜 -0.36
体重変化-2.37kg
(95%CI -3.07 〜 -1.68
筋肉量の変化-0.61kg
(95%CI -1.61 〜 0.39
脂肪量-1.84kg
(95%CI -2.65 〜 -1.04
握力-0.3kg
(95%CI -1.1 〜 0.5

エンパグリフロジン投与52週目のHbA1cのベースラインからのプラセボ調整平均変化率は-0.57%[95%信頼区間(CI) -0.78 〜 -0.36]でした。

体重変化はエンパグリフロジンで-3.26kg、プラセボで-0.90kgであった(プラセボ調整差 -2.37kg、95%CI -3.07 〜 -1.68)。

プラセボ調整後の筋肉量の変化は-0.61kg(95%CI -1.61 〜 0.39)、脂肪量は-1.84kg(95%CI -2.65 〜 -1.04)、握力は-0.3kg(95%CI -1.1 〜 0.5)でした。

コメント

日本サルコペニア・フレイル学会で骨格筋量や歩行速度を測定せずにサルコペニアの可能性が診断できる基準が新たに作成されました。この基準はアジアのサルコペニアワーキンググループよる診断基準(Asian Working Group for Sarcopenia, AWGS)2019に基づいています。

サルコペニアの確定診断には「筋力:握力」「身体機能:歩行速度」「骨格筋量」の測定が必須とされています。AWGS2019診断基準の改訂により、男性の握力低下は26 kg未満から28 kg未満へ引き上げられ、また男女とも6m歩行速度が秒速0.8m未満から1.0m未満へ引き上げられました。一方、日本サルコペニア・フレイル学会の基準では「身体機能」測定は歩行速度測定の代用として5回椅子立ち上がりテスト、または簡易身体機能バッテリー(SPPB)も選択可能であることが記載されています。「骨格筋量」測定はDXA法かBIA法が記載されています。

治験など臨床試験において、65歳以上の高齢者は除外されていることが多くエビデンスが不足しています。そのため、高齢者を対象とした前向き試験における薬剤の有効性・安全性の検証が求められます。

さて、本試験結果によれば、エンパグリフロジンは高齢者の2型糖尿病患者において、筋肉量や筋力(握力)を損なうことなくグルコースコントロールを改善し、体重を減少させました。脂肪量も減少していることから、総体的な筋肉量が増加していることになります。

しかし、サルコペニアの診断に用いられる「身体機能:歩行速度」については記載されていません。エンパグリフロジンが患者転帰に与える影響について、より長期間の検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 本試験において、エンパグリフロジンは高齢者の2型糖尿病患者において、筋肉量や筋力を損なうことなくグルコースコントロールを改善し、体重を減少させた。

根拠となった試験の抄録

目的:血糖コントロールのためのナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬(SGLT2is)の使用は、心不全や慢性腎臓病に対する付加的な有益性から、2型糖尿病(T2D)患者において増加している。しかし、SGLT2isは一般に体重を減少させるため、高齢者ではサルコペニアを促進する可能性がある。我々は、高齢のT2D患者において、SGLT2iであるエンパグリフロジンが血糖コントロールに加えて筋肉量と筋力に及ぼす影響を評価した。

材料と方法:65歳以上で肥満度22kg/m2以上、糖化ヘモグロビン(HbA1c)7.0%~10.0%のT2D患者を、1日1回投与のエンパグリフロジン10mgまたはプラセボに1:1でランダムに割り付け、52週間投与した。
主要評価項目は52週目のHbA1cのベースラインからの変化であった。副次的エンドポイントは筋肉量と筋力のベースラインからの変化であった。

結果:ランダム化された129例のうち72.4%が男性で、平均年齢74.1歳、肥満度25.6kg/m2、HbA1c 7.6%であった。エンパグリフロジン投与52週目のHbA1cのベースラインからのプラセボ調整平均変化率は-0.57%[95%信頼区間(CI) -0.78 〜 -0.36]であった。体重変化はエンパグリフロジンで-3.26kg、プラセボで-0.90kgであった(プラセボ調整差 -2.37kg、95%CI -3.07 〜 -1.68)。プラセボ調整後の筋肉量の変化は-0.61kg(95%CI -1.61 〜 0.39)、脂肪量は-1.84kg(95%CI -2.65 〜 -1.04)、握力は-0.3kg(95%CI -1.1 〜 0.5)であった。

結論:本試験において、エンパグリフロジンは高齢者のT2D患者において、筋肉量や筋力を損なうことなくグルコースコントロールを改善し、体重を減少させた。

キーワード:体組成、高齢者、エンパグリフロジン、血糖コントロール、筋肉量、筋力、ランダム化試験、2型糖尿病

引用文献

Efficacy and safety of the sodium-glucose co-transporter-2 inhibitor empagliflozin in elderly Japanese adults (≥65 years) with type 2 diabetes: A randomized, double-blind, placebo-controlled, 52-week clinical trial (EMPA-ELDERLY)
Daisuke Yabe et al. PMID: 37622398 DOI: 10.1111/dom.15249
Diabetes Obes Metab. 2023 Aug 25. doi: 10.1111/dom.15249. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37622398/

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