抗RANKL薬であるデノスマブと糖尿病リスクとの関連性は?
核因子κBリガンド活性化因子(RANKL)に対するヒト化モノクローナル抗体であるデノスマブは、骨粗鬆症治療に広く用いられている抗骨吸収薬です。
前臨床研究において、RANKLシグナル伝達の阻害がインスリン感受性、耐糖能、β細胞増殖を改善することが示されており、デノスマブがグルコースホメオスタシスを改善する可能性が示唆されていますが、実臨床における検証は充分に行われていません。
そこで今回は、デノスマブの使用が骨粗鬆症患者における糖尿病発症リスクの低下と関連するかどうかを評価するために実施されたコホート研究の結果をご紹介します。
この全国規模の傾向スコアマッチコホート研究では、台湾のNational Health Insurance Research Databaseの管理データが用いられました。2012年から2019年の間に台湾で骨粗鬆症治療としてデノスマブを投与された成人患者が対象でした。適応症による交絡から生じる固有のバイアスを排除するため、2回目のデノスマブ投与の投与状況に応じて、患者が治療群(デノスマブ治療を開始し、それを遵守した患者34,255例)と比較群(デノスマブ治療を開始したが、初回投与後に中止した患者34,255例)に分類されました。傾向スコアマッチングは患者特性のバランスをとり交絡因子をコントロールするために行われました。
本研究の主要アウトカムは、抗糖尿病薬による治療を必要とする糖尿病の発症でした。糖尿病発症のハザード比(HR)の推定にはCox比例ハザードモデルが用いられ、データ解析期間は2023年1月1日~11月30日でした。
試験結果から明らかになったことは?
傾向スコアマッチング後、68,510例が組み入れられました(平均年齢 77.7[SD 9.8]歳;女性 57,762例[84.3%])。
デノスマブ治療群 (/1,000人・年) | 比較群 (/1,000人・年) | ハザード比 HR (95%CI) | |
糖尿病発症リスク | 35.9 | 43.6 | HR 0.84(0.78〜0.90) |
平均 1.9(SD 1.6)年の追跡期間中に、治療群では2,016例が、比較群では3,220例が糖尿病を発症しました(発症率 1,000人年あたり35.9 vs. 43.6)。比較群と比較して、デノスマブ治療は糖尿病発症リスクの低下と関連していました(HR 0.84、95%CI 0.78〜0.90)。
いくつかの感度分析でも、デノスマブ治療により糖尿病リスクが低下するという同様の結果が示されました。
コメント
骨粗鬆症治療に広く用いられている抗骨吸収薬であるデノスマブは、インスリン感受性、耐糖能、β細胞増殖を改善する可能性がありますが、充分に検証されていません。
さて、台湾のコホート研究の結果、デノスマブ治療が糖尿病発症リスクの低下と関連することが示されました。
あくまでも相関性が示されたに過ぎませんが、感度分析でも同様の結果が示されていることから、確度の高い結果であると考えられます。更なる検証にために追試が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 台湾のコホート研究の結果、デノスマブ治療が糖尿病発症リスクの低下と関連することが示された。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:核因子κBリガンド活性化因子(RANKL)に対するヒト化モノクローナル抗体であるデノスマブは、骨粗鬆症治療に広く用いられている抗骨吸収薬である。最近の前臨床研究では、RANKLシグナル伝達の阻害がインスリン感受性、耐糖能、β細胞増殖を改善することが示されており、デノスマブがグルコースホメオスタシスを改善する可能性が示唆されている。
目的:デノスマブの使用が骨粗鬆症患者における糖尿病発症リスクの低下と関連するかどうかを評価すること。
試験デザイン、設定、参加者:この全国規模の傾向スコアマッチコホート研究は、台湾のNational Health Insurance Research Databaseの管理データを用いた。2012年から2019年の間に台湾で骨粗鬆症治療としてデノスマブを投与された成人患者を対象とした。適応症による交絡から生じる固有のバイアスを排除するため、2回目のデノスマブ投与の投与状況に応じて、患者を治療群(デノスマブ治療を開始し、それを遵守した患者34,255例)と比較群(デノスマブ治療を開始したが、初回投与後に中止した患者34,255例)に分類した。傾向スコアマッチングは患者特性のバランスをとり交絡因子をコントロールするために行われた。
曝露:デノスマブによる治療。
主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは、抗糖尿病薬による治療を必要とする糖尿病の発症であった。糖尿病発症のハザード比(HR)の推定にはCox比例ハザードモデルを用いた。データ解析期間は2023年1月1日~11月30日。
結果:傾向スコアマッチング後、68,510例が組み入れられた(平均年齢 77.7[SD 9.8]歳;女性 57,762例[84.3%])。平均 1.9(SD 1.6)年の追跡期間中に、治療群では2,016例が、比較群では3,220例が糖尿病を発症した(発症率 1,000人年あたり35.9 vs. 43.6)。比較群と比較して、デノスマブ治療は糖尿病発症リスクの低下と関連していた(HR 0.84、95%CI 0.78〜0.90)。いくつかの感度分析でも、デノスマブ治療により糖尿病リスクが低下するという同様の結果が示された。
結論と関連性:デノスマブ治療が糖尿病発症リスクの低下と関連することを示したこのコホート研究の結果は、医師が糖尿病リスクも考慮しながら骨粗鬆症患者に適切な抗骨粗鬆症薬を選択するのに役立つであろう。
引用文献
Denosumab and the Risk of Diabetes in Patients Treated for Osteoporosis
Huei-Kai Huang et al. PMID: 38335002 PMCID: PMC10858399 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.54734
JAMA Netw Open. 2024 Feb 5;7(2):e2354734. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.54734.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38335002/
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