祝祭日はCOVID-19患者数の増加と関連するのか?
特定の祝日が感染症の伝播動態を変化させる役割についての研究が注目されていますが、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の伝播に対する祝日の疫学的影響については不明な点が多いことから、更なる研究が求められています。
そこで今回は、祝祭日中の感染頻度の増加程度を評価するために、2020年2月15日から2021年9月30日まで、北海道、東京、愛知、大阪でCOVID-19の発生率と移動のデータを収集、検証した数学モデリング研究の結果をご紹介します。
推定された実効再生産数(effective reproduction number: Rt)と、粗または調整後の移動度、祝日、および非常事態宣言とを関連付けるモデルが作成されました。最も適合性の高いモデルには、祝祭日が必須入力変数として含まれ、祝祭日がない場合のRtの反事実を計算するために使用されました。
試験結果から明らかになったことは?
北海道 | 東京 | 愛知 | 大阪 | |
平均Rt | 5.71% 580件(95%CI 213〜954) | 3.19% 2,209件(95%CI 1,230〜3,201) | 4.84% 1,086件(95%CI 478〜1,686) | 24.82% 5,211件(95%CI 4,554〜5,867) |
数学モデリング研究の結果、北海道、東京、愛知、大阪でそれぞれ平均5.71%、3.19%、4.84%、24.82%、合計580件(95%信頼区間[CI] 213〜954)、2,209件(95%CI 1,230〜3,201)、1,086件(95%CI 478〜1,686)、5,211件(95%CI 4,554〜5,867)のRtが増加しました。
コメント
新型コロナウイルス感染は、人々の移動や交流により増加することが知られています。このため、祝祭日に感染者数が増加する可能性がありますが、充分に検証されていません。
さて、数学モデリング研究の結果、祝祭日は北海道、東京、愛知、大阪におけるCOVID-19感染者を増加させることが明らかとなりました。実社会においても、祝祭日明けに感染者数の増加が報告されていることから、信頼性の高い結果であると考えられますが、大阪で数値が大きい点は別途、考察が必要であると考えられます。
今後、適切な公衆衛生・社会対策を立案する上で祝祭日を考慮することの重要性が改めて浮き彫りになりました。とはいえ、過度に行動制限を課したとしても、その効果は長期間持続しません。したがって、ワクチン接種を含めた基本的な感染予防策を講じつつ、ある程度の行動緩和策を長期的に実施する方がより現実的であると考えられます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 数学モデリング研究の結果、祝祭日はCOVID-19感染者を増加させたことから、今後、適切な公衆衛生・社会対策を立案する上で祝祭日を考慮することの重要性が浮き彫りになった。
根拠となった試験の抄録
目的:特定の祝日が感染症の伝播動態を変化させる役割についての研究が注目されているが、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の伝播に対する祝日の疫学的影響については不明な点が多い。
方法:祝祭日中の感染頻度の増加程度を評価するために、2020年2月15日から2021年9月30日まで、北海道、東京、愛知、大阪でCOVID-19の発生率と移動のデータを収集した。推定された実効再生産数(effective reproduction number: Rt)と、粗または調整後の移動度、祝日、および非常事態宣言とを関連付けるモデルを作成した。最も適合性の高いモデルには、祝祭日が必須入力変数として含まれ、祝祭日がない場合のRtの反事実を計算するために使用された。
結果:その結果、北海道、東京、愛知、大阪でそれぞれ平均5.71%、3.19%、4.84%、24.82%、合計580件(95%信頼区間[CI] 213〜954)、2,209件(95%CI 1,230〜3,201)、1,086件(95%CI 478〜1,686)、5,211件(95%CI 4,554〜5,867)のRtが増加した。
結論:祝祭日はCOVID-19感染者を増加させたことから、今後、適切な公衆衛生・社会対策を立案する上で祝祭日を考慮することの重要性が浮き彫りになった。
キーワード:因果推論、有効再生産数、疫学、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2、休暇
引用文献
Public holidays increased the transmission of COVID-19 in Japan, 2020-2021: a mathematical modelling study
Jiaying Qiao et al. PMID: 38317530 DOI: 10.4178/epih.e2024025
Epidemiol Health. 2024 Jan 22:e2024025. doi: 10.4178/epih.e2024025. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38317530/
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