原発性胆汁性胆管炎を対象としたセラデルパーの効果はどのくらい?(DB-RCT; RESPONSE試験; N Engl J Med. 2024)

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原発性胆汁性胆管炎患者に対するセラデルパーの効果は?

原発性胆汁性胆管炎患者に対する有効な治療法は限られており、ウルソデオキシコール酸が使用されています。しかし、アンメットニーズの分野であることから更なる治療法の確立が求められています。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタアゴニストであるセラデルパーは、原発性胆汁性胆管炎患者に有効である可能性があるものの充分に検証されていません。

そこで今回は、セラデルパーの有効性・安全性を検証したRESPONSE試験の結果をご紹介します。

本研究は第3相12ヵ月二重盲検プラセボ対照試験であり、ウルソデオキシコール酸の効果が不充分であった患者、あるいは許容できない副作用の既往歴のある患者を対象に、セラデルパー(1日10mg)経口投与群とプラセボ群にランダムに割り付けました(2:1)。

本研究の主要エンドポイントは生化学的反応であり、アルカリフォスファターゼ値が正常範囲上限の1.67倍未満であること、ベースラインから15%以上低下していること、および12ヵ月目の総ビリルビン値が正常であることと定義されました。主な副次的エンドポイントは、12ヵ月目におけるアルカリホスファターゼ値の正常化、およびベースラインのスコアが4点以上(中等度から重度のそう痒症を示す)であった患者における、ベースラインから6ヵ月目までのそう痒症数値評価スケール(範囲:0[かゆみなし]~10[想像しうる最悪のかゆみ])のスコアの変化でした。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化および治療を受けた193人の患者のうち、93.8%が標準治療の背景療法としてウルソデオキシコール酸を投与されていました。

セラデルパー群プラセボ群
(95%CI)
生化学的反応が得られた患者割合61.7%20.0%差 41.7%ポイント
27.7~53.4
P<0.001
アルカリホスファターゼ値が正常化した患者割合25.0%0%差 25.0%ポイント
18.3~33.2
P<0.001

セラデルパー群では、プラセボ群よりも高い割合で生化学的効果が認められました(61.7% vs. 20.0%;差 41.7%ポイント、95%信頼区間[CI] 27.7~53.4、P<0.001)。アルカリホスファターゼ値の正常化も、セラデルパーの投与を受けた患者の方がプラセボの投与を受けた患者よりも高い割合で認められました(25.0% vs. 0%;差 25.0%ポイント、95%信頼区間[CI] 18.3~33.2、P<0.001)。

セラデルパー群プラセボ群最小二乗平均差
(95%CI)
そう痒症数値評価スケールのスコア変化
(ベースラインからの最小二乗平均変化)
-3.2-1.7最小二乗平均差 -1.5
-2.5 ~ -0.5
P=0.005

また、セラデルパーのほうがプラセボよりもそう痒症数値評価スケールのスコアが大きく減少しました(ベースラインからの最小二乗平均変化 -3.2 vs. -1.7;最小二乗平均差 -1.5、95%CI -2.5 ~ -0.5、P=0.005)。

セラデルパー群プラセボ群
有害事象86.7%84.6%
重篤な有害事象7.0%6.2%

有害事象はセラデルパー群で86.7%、プラセボ群で84.6%に報告され、重篤な有害事象はそれぞれ7.0%、6.2%でした。

コメント

原発性胆汁性胆管炎患者に対する治療法として、ウルソデオキシコ-ル酸が使用されています。また、日本においてはベザフィブラートも使用されることがあります。

胆管細胞は抗炎症因子であるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γを発現していることから、PPARγアゴニストであるセラデルパーが有効である可能性がありますが、原発性胆汁性胆管炎の障害胆管ではPPARγの発現低下も報告されていることから、有効性・安全性の検証が求められています。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、原発性胆汁性胆管炎患者を対象としたこの試験では、生化学的反応とアルカリホスファターゼ正常化を示した患者の割合は、セラデルパーの方がプラセボよりも有意に多いことが明らかとなりました。

また、ベースライン時に中等度から重度のそう痒症を有していた患者において、セラデルパーはそう痒症を有意に軽減しました。

有害事象の発現率および重症度は両群で同様であることから忍容性は高そうです。一方で、既存薬との比較は行われていないことから、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、原発性胆汁性胆管炎患者を対象としたこの試験では、生化学的反応とアルカリホスファターゼ正常化を示した患者の割合は、セラデルパーの方がプラセボよりも有意に多かった。

根拠となった試験の抄録

背景:原発性胆汁性胆管炎患者に対する有効な治療法は限られている。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタアゴニストであるセラデルパーは有効である可能性がある。

方法:この第3相12ヵ月二重盲検プラセボ対照試験では、ウルソデオキシコール酸の効果が不充分であった患者、あるいは許容できない副作用の既往歴のある患者を、セラデルパーの1日10mgの経口投与群とプラセボ群にランダムに割り付けた(2:1)。主要エンドポイントは生化学的反応であり、アルカリフォスファターゼ値が正常範囲上限の1.67倍未満であり、ベースラインから15%以上低下していること、および12ヵ月目の総ビリルビン値が正常であることと定義された。主な副次的エンドポイントは、12ヵ月目におけるアルカリホスファターゼ値の正常化、およびベースラインのスコアが4点以上(中等度から重度のそう痒症を示す)であった患者における、ベースラインから6ヵ月目までのそう痒症数値評価スケール(範囲:0[かゆみなし]~10[想像しうる最悪のかゆみ])のスコアの変化であった。

結果:ランダム化および治療を受けた193人の患者のうち、93.8%が標準治療の背景療法としてウルソデオキシコール酸を投与された。セラデルパー群では、プラセボ群よりも高い割合で生化学的効果が認められた(61.7% vs. 20.0%;差 41.7%ポイント、95%信頼区間[CI] 27.7~53.4、P<0.001)。アルカリホスファターゼ値の正常化も、セラデルパーの投与を受けた患者の方がプラセボの投与を受けた患者よりも高い割合で認められた(25.0% vs. 0%;差 25.0%ポイント、95%信頼区間[CI] 18.3~33.2、P<0.001)。セラデルパーのほうがプラセボよりもそう痒症数値評価スケールのスコアが大きく減少した(ベースラインからの最小二乗平均変化 -3.2 vs. -1.7;最小二乗平均差 -1.5、95%CI -2.5 ~ -0.5、P=0.005)。有害事象はセラデルパー群で86.7%、プラセボ群で84.6%に報告され、重篤な有害事象はそれぞれ7.0%、6.2%であった。

結論:原発性胆汁性胆管炎患者を対象としたこの試験では、生化学的反応とアルカリホスファターゼ正常化を示した患者の割合は、セラデルパーの方がプラセボよりも有意に多かった。また、ベースライン時に中等度から重度のそう痒症を有していた患者において、セラデルパーはそう痒症を有意に軽減した。有害事象の発現率および重症度は両群で同様であった。

資金提供:CymaBay Therapeutics社

意見登録番号:ClinicalTrials.gov. NCT04620733;EudraCT番号 2020-004348-27

引用文献

A Phase 3 Trial of Seladelpar in Primary Biliary Cholangitis
Gideon M Hirschfield et al. PMID: 38381664 DOI: 10.1056/NEJMoa2312100
N Engl J Med. 2024 Feb 21. doi: 10.1056/NEJMoa2312100. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38381664/

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