キノコ類の摂取と認知症発症との関連性は?
食物繊維や数種類の抗酸化物質を豊富に含むキノコ類の食事摂取が、認知症リスクの低下と関連しているかどうかは不明です。
そこで今回は、キノコの摂取と認知症リスクとの関連を前向きに検討した日本のコホート研究の結果をご紹介します。
1985〜1999年にかけて、3つの地域に居住する40〜64歳の3,750人を対象に、年1回の心血管リスク調査に参加する前向き研究が行われ、1999〜2020年にかけて、障害のある認知症の発症例が調査されました。
脳卒中の既往の有無にかかわらず、キノコ摂取量に応じた認知症発症のハザード比(HR)と95%信頼区間が算出されました。
試験結果から明らかになったことは?
対象者3,739人の平均16.0年の追跡期間中に、670人が障害のある認知症を発症しました。女性では、キノコ摂取は全認知症リスクと逆相関し、その関連は脳卒中歴のない認知症に限られていました。
(女性) | 全認知症の多変量HR (95%CI) | 脳卒中の既往のない認知症の多変量HR (95%CI) |
キノコ摂取量 0.1〜14.9g/日 vs. キノコ類の摂取なし | HR 0.81(0.62〜1.06) | HR 0.66(0.47〜0.93) |
キノコ摂取量 15.0g/日以上 vs. キノコ類の摂取なし | HR 0.56(0.42〜0.75) 傾向のP=0.003 | HR 0.55(0.38〜0.79) 傾向P=0.01 |
女性における全認知症の多変量HR(95%CI)は、摂取しない場合と比較して、キノコ摂取量が0.1〜14.9g/日の場合は0.81(0.62〜1.06)、15.0g/日以上の場合は0.56(0.42〜0.75)でした(傾向のP=0.003)。
脳卒中の既往のない認知症に対応するHR(95%CI)は、0.66(0.47〜0.93)および0.55(0.38〜0.79)でした(傾向P=0.01)。
男性では、キノコの摂取と障害のある認知症のリスクとの関連は観察されませんでした。
コメント
キノコ類は広く世界中で摂取されています(インドやドイツの一部を除く)。抗酸化作用等を有していることからキノコ類の摂取により認知機能低下を予防する可能性がありますが、充分に検証されていません。
さて、日本の前向きコホート研究の結果、日本人女性では、きのこ摂取は認知症リスク低下と関連していました。
そもそも日本人女性は、男性の2倍程度の認知症発症リスクがあることから、ベースラインリスクが高かったため摂取の有無でリスクの差が生じやすい、キノコ類を摂取する人は認知症リスクを低減する生活様式を営んでいる可能性等、交絡因子が残存しています。更なる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 日本の前向きコホート研究の結果、日本人女性では、きのこ摂取は認知症リスク低下と関連していた。
根拠となった試験の抄録
背景:食物繊維や数種類の抗酸化物質を豊富に含むキノコ類の食事摂取が、認知症リスクの低下と関連しているかどうかは不明である。我々は、キノコの摂取と認知症リスクとの関連を前向きに検討しようとした。
方法:1985年から1999年にかけて、3つの地域に居住する40歳から64歳の3,750人を対象に、年1回の心血管リスク調査に参加する前向き研究を行った。1999年から2020年にかけて、障害のある認知症の発症例を調査した。脳卒中の既往の有無にかかわらず、キノコ摂取量に応じた認知症発症のハザード比(HR)と95%信頼区間を算出した。
結果:対象者3,739人の平均16.0年の追跡期間中に、670人が障害のある認知症を発症した。女性では、キノコ摂取は全認知症リスクと逆相関し、その関連は脳卒中歴のない認知症に限られていた。女性における全認知症の多変量HR(95%CI)は、摂取しない場合と比較して、キノコ摂取量が0.1〜14.9g/日の場合は0.81(0.62〜1.06)、15.0g/日以上の場合は0.56(0.42〜0.75)であった(傾向のP=0.003)。脳卒中の既往のない認知症に対応するHR(95%CI)は、0.66(0.47〜0.93)および0.55(0.38〜0.79)であった(傾向P=0.01)。男性では、キノコの摂取と障害のある認知症のリスクとの関連は観察されなかった。
結論:日本人女性では、きのこ摂取は認知症リスク低下と関連していた。
キーワード:認知症、追跡調査、一般集団、キノコ類
引用文献
Mushroom intake and risk of incident disabling dementia: the Circulatory Risk in Communities Study (CIRCS)
Shoko Aoki et al. PMID: 38239014 DOI: 10.1017/S000711452400014X
Br J Nutr. 2024 Jan 19:1-7. doi: 10.1017/S000711452400014X. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38239014/
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