病院での転倒予防として患者の転倒予防教育の効果はどのくらいですか?(RCT; Age Ageing. 2024)

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医療補助者による転倒予防教育の有効性は?

転倒は世界中の病院で頻発し、回避可能な問題であるものの、予防対策としての介入については充分に検証されていません。

病院における転倒率は過去の報告で3~16/1,000病床日であり、超高齢者や認知機能障害、パーキンソン病などの慢性疾患患者で発生しやすいことが知られています。病院内での転倒は、市中で転倒した場合と比較して予後不良であることが知られており、早期予防対策の立案が求められています。

そこで今回は、入院後48時間以内に患者の転倒予防教育を実施するために医療補助者を利用することの実現可能性を検討することを目的に実施されたランダム化比較試験の結果をご紹介します。

入院患者を通常のケアまたは、通常のケアに加えエビデンスに基づいた会話台本と教育用パンフレットを用いて監督された医療補助者による患者転倒予防教育の追加実施にランダムに割り付けました。

試験参加者は(i)補助者、(ii)20週間にわたって参加病棟に入院した患者でした。

本試験のアウトカムは、(i)補助者による患者教育の実施可能性、(ii)1,000病床日あたりの転倒、(iii)傷害を伴う転倒、(iv)急性期医療施設への転院を要する転倒の数でした。

試験結果から明らかになったことは?

541人の患者が試験に参加しました(年齢中央値 81歳);対照群270人、実験群271人。実験群の患者254人(97%が入院後24時間以内)に対して、医療補助者(n=12)がスクリプトを用いた教育セッションを実施しました。

対照群実験群発生率比(95%CI)
転倒32例22例
転倒発生率
(/1,000床日)
8.07件5.69件発生率比 0.66(0.32〜1.36
P=0.26
外傷を伴う転倒発生率
(/1,000床日)
2.02件1.03件

転倒は対照群で32例、実験群で22例でした。転倒発生率は、対照群では1,000床日あたり8.07件、実験群では1,000床日あたり5.69件でした(発生率比 0.66、95%CI 0.32〜1.36;P=0.26)。

1,000病床日あたりの障害(外傷)をとのもなう転倒は、対照群で2.02件、実験群で1.03件でした。9件の転倒(対照群7件、実験群2件)が急性期施設への転院を必要としました。実験群の介入に起因する有害事象は認められませんでした。

コメント

入院患者を対象とした転倒予防プログラムの効果については充分に検証されていません。

さて、ランダム化比較試験の結果、医療補助者による患者教育で通常のケアを補うことは、通常ケアのみと比較して、転倒予防に有益である可能性が示されました。転倒発生数の絶対差は10例であり、発生率比も0.66と1を下回っていますが、統計学的な有意差は認められませんでした。

ただし、外傷を伴う転倒の発生率、急性期施設への転院を必要とする転倒の発生数は、実験群で減少しています。

本試験は予備検討であるため、試験規模が小さく検出力が不足しているものと考えられます。より大規模な試験での検証、再現性の確認が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、医療補助者による患者教育で通常のケアを補うことは可能であり、転倒予防に有益である可能性が示されたものの、統計学的に有意な差は認められなかった。

根拠となった試験の抄録

目的:入院後48時間以内に患者の転倒予防教育を実施するために医療補助者を利用することの実現可能性を検討すること。

試験デザインと設定:入院患者を通常のケアまたは通常のケアに加え、エビデンスに基づいた会話台本と教育用パンフレットを用いて、監督された医療補助者による患者転倒予防教育の追加実施にランダムに割り付けた。

参加者:(i)補助者、(ii)20週間にわたって参加病棟に入院した患者。

アウトカム:(i)補助者による患者教育の実施可能性、(ii)1,000病床日あたりの転倒、(iii)傷害を伴う転倒、(iv)急性期医療施設への転院を要する転倒の数

結果:541人の患者が参加した(年齢中央値 81歳);対照群270人、実験群271人。実験群の患者254人(97%が入院後24時間以内)に対して、医療補助者(n=12)がスクリプトを用いた教育セッションを実施した。転倒は対照群で32例、実験群で22例であった。転倒発生率は、対照群では1,000床日あたり8.07件、実験群では1,000床日あたり5.69件であった(発生率比 0.66、95%CI 0.32〜1.36;P=0.26)。1,000病床日あたりの転倒は、対照群で2.02件、実験群で1.03件であった。9件の転倒(対照群7件、実験群2件)が急性期施設への転院を必要とした。実験群の介入に起因する有害事象はなかった。

結論:医療補助者による患者教育で通常のケアを補うことは可能であり、有益である。

キーワード:ケア経済、ケア労働力、転倒、病院、傷害を伴う転倒、高齢者、市民参加、質、安全性

引用文献

Preventing hospital falls: feasibility of care workforce redesign to optimise patient falls education
Meg E Morris et al. PMID: 38275097 PMCID: PMC10811524 DOI: 10.1093/ageing/afad250
Age Ageing. 2024 Jan 2;53(1):afad250. doi: 10.1093/ageing/afad250.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38275097/

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