フルオロキノロン使用による大動脈瘤/大動脈解離のリスク増加が報告されてきたが、、
フルオロキノロン使用による大動脈瘤および大動脈解離(AA/AD)のリスク増加が報告されています。しかし、最近の研究では適応による交絡因子が示唆されています。
そこで今回は、フルオロキノロン使用に関連するAA/ADのリスクを調査することを目的とした自己対照症例シリーズ研究の結果をご紹介します。
この全国規模の集団ベースの研究では、2005年から2016年の外来受診時に経口フルオロキノロンまたは第3世代セファロスポリンの処方を受けた20歳以上の成人が対象となりました。データソースは国民健康保険サービスの診療報酬データベースでした。
本試験の主要アウトカムは、AA/ADを主診断とする入院または院内死亡でした。
自己対照症例シリーズ(SCCS)とCox比例ハザードモデルが用いられ、リスク期間と対照期間における主要転帰の発生率が比較検討されました。
試験結果から明らかになったことは?
合計 954,308例(フルオロキノロン使用 777,109例、第3世代セファロスポリン使用 177,199例)が対象となりました。
フルオロキノロン群 | 第3世代セファロスポリン群 | |
リスク期間とその前の期間のAA/ADの発生率比 | 2.000(95%CI 0.970〜4.124) | 11.000(95%CI 1.420〜85.200) |
AA/ADの全発生率 | 5.40人/10万人・年 | 8.47人/10万人・年 |
調整ハザード比 | 0.752(95%CI 0.515〜1.100) 有意差なし | – |
リスク期間とその前の期間のAA/ADの発生率比は、フルオロキノロン群(2.000、95%信頼区間(CI)0.970〜4.124)に比べ、第3世代セファロスポリン群[11.000、95%CI 1.420〜85.200]で高いことが示されました。フルオロキノロンと第3世代セファロスポリンを投与された患者におけるAA/ADの全発生率は、10万人・年当たり5.40人と8.47人でした。治療による逆確率加重Cox比例ハザードモデルでは、
2群間のリスクに有意差はありませんでした(調整ハザード比 0.752、95%CI 0.515〜1.100)。サブグループ解析および感度解析でも一貫した結果が得られました。
コメント
フルオロキノロン使用と大動脈瘤/大動脈解離(AA/AD)のリスク増加との関連性が報告されています。しかし、あくまでも相関関係が示されたに過ぎず、さらには適応による交絡因子を調整できていない可能性が示唆されています。
さて、韓国のデータベースを用いた自己対照症例シリーズ研究の結果、フルオロキノロンを投与された患者では、第3世代セファロスポリンを投与された患者と比較してAA/ADのリスクに有意差はありませんでした。
ただし、本試験結果も相関関係を示したに過ぎません。これまでの報告では、フルオロキノロン使用とAA/ADのリスク増加との関連性について多くの研究報告がなされています。国や地域、患者背景、適応症、疾患の重症度など、まだまだ交絡因子が残存していることから、さらなる検証が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ 韓国のデータベースを用いた自己対照症例シリーズ研究の結果、フルオロキノロンを投与された患者では、第3世代セファロスポリンを投与された患者と比較して大動脈瘤/大動脈解離のリスクに有意差はなかった。
根拠となった試験の抄録
背景と目的:フルオロキノロン(FQ)使用による大動脈瘤および大動脈解離(AA/AD)のリスク増加が報告されている。しかし、最近の研究では適応による交絡因子が示唆されている。本研究では、FQ使用に関連するAA/ADのリスクを調査することを目的とした。
方法:この全国規模の集団ベースの研究は、2005年から2016年の外来受診時に経口FQまたは第3世代セファロスポリン(3GC)の処方を受けた20歳以上の成人を対象とした。データソースは国民健康保険サービスの診療報酬データベースであった。
主要アウトカムは、AA/ADを主診断とする入院または院内死亡とした。自己対照症例シリーズ(SCCS)とCox比例ハザードモデルを用いた。自己対照症例シリーズでは、リスク期間と対照期間における主要転帰の発生率を比較した。
結果:合計 954,308例(フルオロキノロン使用 777,109例、第3世代セファロスポリン使用 177,199例)が対象となった。リスク期間とその前の期間のAA/ADの発生率比は、フルオロキノロン群(2.000、95%信頼区間(CI)0.970〜4.124)に比べ、第3世代セファロスポリン群[11.000、95%CI 1.420〜85.200]で高いことが示された。フルオロキノロンと第3世代セファロスポリンを投与された患者におけるAA/ADの全発生率は、10万人・年当たり5.40人と8.47人でした。治療による逆確率加重Cox比例ハザードモデルでは、2群間のリスクに有意差はなかった(調整ハザード比 0.752、95%CI 0.515〜1.100)。サブグループ解析および感度解析でも一貫した結果が得られた。
結論:経口フルオロキノロンを投与された患者では、第3世代セファロスポリンを投与された患者と比較してAA/ADのリスクに有意差はなかった。本研究結果は、臨床的に適応がある場合にはFQの使用を躊躇すべきではないことを示唆している。
キーワード:抗生物質、大動脈瘤、大動脈解離、フルオロキノロン系抗菌薬
引用文献
Lack of association between fluoroquinolone and aortic aneurysm or dissection
Kyungmin Huh et al. PMID: 37724037 DOI: 10.1093/eurheartj/ehad627
Eur Heart J. 2023 Sep 19;ehad627. doi: 10.1093/eurheartj/ehad627. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37724037/
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