心不全患者の入院と死亡率に対するフロセミド vs. トラセミド(RCTのメタ解析; Am J Cardiol. 2023)

02_循環器系
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心不全患者に対するフロセミドとトルセミドどちらが優れているのか?

うっ血を起こした心不全患者の治療にはループ利尿薬が不可欠です。ループ利尿薬としてはフロセミドが最も一般的に使用されていますが、いくつかのランダム化比較試験(RCT)では、入院や死亡率の点でトラセミド(トルセミド)とフロセミドに関連したさまざまな結果が示されています。

これらのループ利尿薬による治療を受けた患者の臨床転帰に差があるかどうかについては結論が得られていません。そこで今回は、現在入手可能なフロセミドとトルセミドを比較したRCTの最新のメタ解析の結果をご紹介します。

PubMed、MEDLINE、Cochrane、Embaseの各データベースから、フロセミドとトルセミドによる治療を受けたHF患者の転帰を比較したRCTが検索されました。

本試験の主要エンドポイントは、全死亡、全入院、心血管関連入院、HF関連入院でした。リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を推定するためにランダム効果メタ解析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

合計10件のRCT、4,127例(フロセミド群 2,088例、トルセミド群 2,039例)がこの解析に含まれました。患者の56%は男性で、平均年齢は68歳でした。

リスク比
(95%CI)
全死亡率RR 1.02
0.91〜1.15
p=0.70
心血管系を原因とする入院RR 1. 36
1.13〜1.65
p=0.001
心不全(HF)に関連する入院RR 1.65
1.21〜2.24
p=0.001
すべての入院RR 1.06
1.01〜1.11
p=0.02

フロセミド群とトルセミド群で全死亡率に有意差は認められませんでしたが(RR 1.02、95%CI 0.91〜1.15、p=0.70)、フロセミドで治療された患者はトルセミドで治療された患者と比較して心血管系を原因とする入院(RR 1. 36、95%CI 1.13〜1.65、p=0.001)、HF関連入院(RR 1.65、95%CI 1.21〜2.24、p=0.001)、すべての入院(RR 1.06、95%CI 1.01〜1.11、p=0.02)のリスクが高いことが示されました。

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ループ利尿薬の比較について、2023年にランダム化比較TRANSFORM-HF試験が公表されました。この試験結果では、フロセミドとトルセミドの患者転帰に差はありませんでした。しかし、1件のRCTで示された結果であることから、さらなる検証が求められています。

さて、ランダム化比較試験10件のメタ解析の結果、心不全患者に対してトルセミドによる治療を受けた場合、フロセミドを使用した場合と比較して、死亡率に差はないものの、入院のリスクが減少しました。

試験によって入院基準や患者背景が異なることから、どのような患者でトルセミドの方がより優れているのか更なる検証が求められます。

続報に期待。

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☑️まとめ☑️ RCT10件のメタ解析の結果、心不全患者に対してトルセミドによる治療を受けた場合、フロセミドを使用した場合と比較して、死亡率に差はないものの、入院のリスクが減少した。

根拠となった試験の抄録

背景:うっ血を起こした心不全患者の治療にはループ利尿薬が不可欠である。フロセミドは最も一般的に使用されている利尿薬であるが、いくつかのランダム化比較試験(RCT)では、入院や死亡率の点でトラセミド(トルセミド)とフロセミドに関連したさまざまな結果が示されている。これらのループ利尿薬による治療を受けた患者の臨床転帰に差があるかどうかを確認するために、現在入手可能なフロセミドとトルセミドを比較したRCTの最新のメタ解析を行った。

方法:PubMed、MEDLINE、Cochrane、Embaseの各データベースから、フロセミドとトルセミドによる治療を受けたHF患者の転帰を比較したRCTを検索した。
主要エンドポイントは、全死亡、全入院、心血管関連入院、HF関連入院であった。リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を推定するためにランダム効果メタ解析を行った。

結果:合計10件のRCT、4,127例(フロセミド群 2,088例、トルセミド群 2,039例)がこの解析に含まれた。患者の56%は男性で、平均年齢は68歳であった。フロセミド群とトルセミド群で全死亡率に有意差は認められなかったが(RR 1.02、95%CI 0.91〜1.15、p=0.70)、フロセミドで治療された患者はトルセミドで治療された患者と比較して心血管系を原因とする入院(RR 1. 36、95%CI 1.13〜1.65、p=0.001)、HF関連入院(RR 1.65、95%CI 1.21〜2.24、p=0.001)、全入院(RR 1.06、95%CI 1.01〜1.11、p=0.02)のリスクが高かった。

結論:トルセミドによる治療を受けたHF患者は、フロセミドによる治療を受けた患者と比較して、死亡率に差はないものの、入院のリスクが減少した。これらのデータは、HF患者の治療にはトルセミドがよりよい選択であることを示している。

キーワード:フロセミド、心不全、トルセミド(トラセミド)

引用文献

Effect of Furosemide Versus Torsemide on Hospitalizations and Mortality in Patients With Heart Failure: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Sahib Singh et al. PMID: 37677884 DOI: 10.1016/j.amjcard.2023.08.079
Am J Cardiol. 2023 Sep 5;206:42-48. doi: 10.1016/j.amjcard.2023.08.079. Online ahead of print.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37677884/

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