産後高血圧のコントロールに優れる治療法はどちらか?
アンジオテンシン変換酵素阻害薬と利尿薬は、妊娠中の催奇形性のため、産後高血圧に対して充分に使用されていない可能性があります。治療薬は出産後も継続され、治療薬が変更されることはほぼありません。したがって、産後高血圧のコントロールにおいて、より優れる治療法は充分に検討されていません。
そこで今回は、薬物療法を必要とする産後高血圧患者において、ヒドロクロロチアジドとリシノプリルの併用内服がニフェジピンと比較して短期血圧コントロールに優れているかどうかを検討した小規模なランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験は、出産後72時間以内に収縮期血圧測定値≧150mmHgおよび/または拡張期血圧測定値≧100mmHgを2回示した慢性高血圧症または妊娠高血圧症候群の個人を含むパイロットランダム化比較試験(2021年10月から2022年6月)です。試験参加者は、診断名(慢性高血圧と妊娠高血圧症候群)で層別化した後、ヒドロクロロチアジドとリシノプリルの併用療法またはニフェジピン療法のいずれかにランダムに割り付けられました。
本試験の主要アウトカムは、出産後7~10日目または血圧管理のための再入院時に家庭用血圧計を用いて測定したステージ2高血圧(収縮期血圧≧140mmHgおよび/または拡張期血圧≧90mmHg)でした。副次的アウトカムとしては、重症母体病変(集中治療室入室、溶血、肝酵素上昇、低血小板数症候群 HELLP症候群、子癇、脳卒中、心筋症、母体死亡のいずれか)、ランダム化後の点滴の必要性、入院期間、初診時の血圧、服薬遵守、有害事象が評価されました。
試験結果から明らかになったことは?
適格な参加者111例のうち、70例(63%)が同意し、ランダム化されました(ヒドロクロロチアジドとリシノプリル群31例、ニフェジピン群36例;ランダム化後に3例が同意撤回)。9例(12.8%)の参加者において、主要転帰が得られませんでした。
ヒドロクロロチアジド +リシノプリル群 | ニフェジピン群 | 調整後相対リスク (95%CI) | |
主要転帰 (ステージ2高血圧: 収縮期血圧≧140mmHg および/または拡張期血圧≧90mmHg) | 27% | 43% | 調整後相対リスク 0.741 (0.40〜1.31) |
主要転帰は、ヒドロクロロチアジドおよびリシノプリル群では27%、ニフェジピン群では43%の参加者に発生しました(調整後相対リスク 0.74、95%信頼区間 0.40〜1.31)。
ベイズ解析では、ヒドロクロロチアジドとリシノプリルの併用療法がニフェジピン治療と比較して主要転帰を低下させる事後確率は85%でした。副次的アウトカムおよび薬物有害事象について、群間差は認められませんでした。
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倫理的側面から妊婦や授乳婦を対象とした臨床試験は困難です。本試験では、出産後早期の高血圧女性を対象としています。
さて、本試験結果によれば、産後高血圧においてヒドロクロロチアジドとリシノプリルの併用療法は、ニフェジピンと比較して、優れた短期血圧コントロールをもたらす可能性が示唆されました。区間推定値はリスク減少傾向ですが、区間推定値から判断すると、統計学的な有意差はなさそうです。症例数が少ないことから検出力が不足していた可能性が高いと考えられます。より大規模な試験での検証が求められます。
続報に期待。
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