びらん性食道炎(逆流性食道炎)の治癒効果においてボノプラザンとランソプラゾール、どちらが優れているのか?
数十年にわたり、プロトンポンプ阻害薬(PPI)がびらん性食道炎の治療の中心的な役割を担ってきました。PPIに対して比較的新しい治療薬であるカリウムイオン競合型アシッドブロッカーのボノプラザンは、PPIよりも強力な酸阻害作用を示すことが報告されていますが、びらん性食道炎に対する有効性に関するデータは限られています。
そこで今回は、成人びらん性食道炎患者を対象にボノプラザンとランソプラゾールを比較検討したランダム化比較試験の結果をご紹介します。
本試験では、1日1回ボノプラザン20mgまたはランソプラゾール30mgにランダムに割り付け、最長8週間まで投与されました。治癒した患者を、ランソプラゾール10mg、ランソプラゾール20mg、またはランソプラゾール15mgを1日1回、24週間投与する群に再割付けされました。
本試験の主要評価項目である8週目の内視鏡検査までに治癒した割合と24週目の内視鏡検査での治癒維持率は、非劣性比較(非劣性マージン10%)で評価し、非劣性が示された場合は優越性分析を事前に指定していました。主要評価項目および副次的評価項目の解析は、固定系列試験法を用いて実施されました。
試験結果から明らかになったことは?
びらん性食道炎に対する効果比較
治癒段階にある1,024例の患者においてボノプラザンは、主要解析ではランソプラゾールに非劣性であり、治癒の探索的解析では優れていました(92.9 vs. 84.6%; 差 8.3%、95%信頼区間 [CI] 4.5%〜12.2%)。
副次的解析では、ボノプラザンは胸焼けのない日数において非劣性であり(差 2.7%、95%CI -1.6~7.0%)、2週目のLos Angeles分類グレードC/Dの食道炎の治癒において優れていました(差 17.6%、95%CI 7.4~27.4%)。
治癒後の維持期における効果比較
維持期患者878例において、ボノプラザンは、主要解析においてランソプラゾールに対して非劣性であり(20mg vs. ランソプラゾール; 差 8.7%、95%CI 1.8%〜15.5%。10mg vs. ランソプラゾール; 差 7.2%、95%CI 0.2%〜14.1%)、グレードC/D食道炎の治癒の維持の二次分析で優位性を示しました(20mg vs. ランソプラゾール; 差 15.7%、95%CI 2.5%〜28.4%、10mg vs. ランソプラゾール; 差 13.3%、95%CI 0.02%〜26.1%)。
コメント
ボノプラザンはPPIよりも優れている可能性が示されていましたが、優越性検定についてはいずれも副次的な解析結果であり、エビデンスが限られていました。
さて、本試験結果によれば、ボノプラザンは、びらん性食道炎の治癒および治癒の維持において、PPIであるランソプラゾールに非劣性かつ優越性を示すことが明らかとなりました。ただし、本効果は、より重症のびらん性食道炎で顕著に認められています。したがって、重症の場合にはボノプラザンを、それ以外の軽症から中等症の場合には、廉価なランソプラゾールを使用しても得られる恩恵は変わらなそうです。
費用対効果の観点から基本的にはPPIであるランソプラゾールを優先的に使用した方が良さそうです。
✅まとめ✅ ボノプラザンは、びらん性食道炎の治癒および治癒の維持において、PPIであるランソプラゾールに非劣性かつ優越的であった。この効果は、より重症のびらん性食道炎で顕著に認められた。
根拠となった試験の抄録
背景と目的:数十年にわたり、プロトンポンプ阻害薬(PPI)がびらん性食道炎の治療の中心的な役割を担ってきた。カリウムイオン競合型アシッドブロッカーであるボノプラザンは、PPIよりも強力な酸阻害作用を示すが、びらん性食道炎に対する有効性に関するデータは限られている。
方法:成人びらん性食道炎患者を1日1回ボノプラザン20mgまたはランソプラゾール30mgにランダムに割り付け、最長8週間まで投与した。治癒した患者を、ランソプラゾール10mg、ランソプラゾール20mg、またはランソプラゾール15mgを1日1回、24週間投与する群に再割付けした。
主要評価項目である8週目の内視鏡検査までに治癒した割合と24週目の内視鏡検査での治癒維持率は、非劣性比較(非劣性マージン10%)で評価し、非劣性が示された場合は優越性分析を事前に指定した。主要評価項目および副次的評価項目の解析は、固定系列試験法を用いて実施された。
結果:治癒段階にある1,024例の患者においてボノプラザンは、主要解析ではランソプラゾールに非劣性であり、治癒の探索的解析では優れていた(92.9 vs. 84.6%; 差 8.3%、95%信頼区間 [CI] 4.5%〜12.2%)。副次的解析では、ボノプラザンは胸焼けのない日数において非劣性であり(差 2.7%、95%CI -1.6~7.0%)、2週目のLos Angeles分類グレードC/Dの食道炎の治癒において優れていた(差 17.6%、95%CI 7.4~27.4%)。
維持期患者878例において、ボノプラザンは、主要解析においてランソプラゾールに対して非劣性であり(20mg vs. ランソプラゾール; 差 8.7%、95%CI 1.8%〜15.5%。10mg vs. ランソプラゾール; 差 7.2%、95%CI 0.2%〜14.1%)、グレードC/D食道炎の治癒の維持の二次分析で優位性を示した(20mg vs. ランソプラゾール; 差 15.7%、95%CI 2.5%〜28.4%、10mg vs. ランソプラゾール; 差 13.3%、95%CI 0.02%〜26.1%)。
結論:ボノプラザンは、びらん性食道炎の治癒および治癒の維持において、PPIであるランソプラゾールに非劣性かつ優越的であった。この効果は、より重症のびらん性食道炎で顕著に認められた。
ClinicalTrials.gov: NCT04124926
キーワード:胃食道逆流症、プロトンポンプ阻害薬、Vonoprazan
引用文献
Vonoprazan Versus Lansoprazole for Healing and Maintenance of Healing of Erosive Esophagitis: A Randomized Trial
Loren Laine et al. PMID: 36228734 DOI: 10.1053/j.gastro.2022.09.041
Gastroenterology. 2023 Jan;164(1):61-71. doi: 10.1053/j.gastro.2022.09.041. Epub 2022 Oct 10.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36228734/
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