小児急性感染性結膜炎の罹患期間に対するモキシフロキサシン点眼薬の効果は?(RCT及びメタ解析; JAMA Netw Open. 2022)

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小児急性感染性結膜炎に対するモキシフロキサシンとプラセボ点眼薬の効果はどのくらいなのか?

急性結膜炎は、小児によく見られる感染症で、通常、細菌によって引き起こされます(PMID: 8419593)。この疾患に対して、医師は抗生物質を処方します(PMID: 17868475)が、小児患者におけるその有効性に関するエビデンスは限られており、相反するものです。

Gigliottiら(PMID: 6323667)は、小児の急性結膜炎を対象とした最初のランダム化試験で、抗生物質の局所投与はプラセボ点眼より治癒率が高いと報告していますが、Roseら(PMID: 15993231)の試験では、クロラムフェニコール点眼とプラセボの間で臨床的な回復度に差がなかったと報告しています。しかし、Roseらが使用したプラセボ点眼薬には防腐剤が含まれていたため、両群とも抗感染症療法を受けていた可能性があります。

また、外用抗生物質の中等度の有効性を示した過去のメタ解析は、すべて小児と成人の患者を組み合わせて解析しています(PMID: 22972049)。

そこで今回は、局所抗生物質を投与された急性感染性結膜炎の小児とプラセボを投与された対照参加者を比較し、さらに、プラセボ点眼薬だけでもウォッシュアウト効果により有益と考えられるため、何も介入しない対照群も含めたランダム化臨床試験(RCT)の結果をご紹介します。さらに本試験では、本RCTと過去に報告されたRCTを対照としたメタ解析も実施しました。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化臨床試験には88例(女児 46例[52%])が参加し、そのうち30例がモキシフロキサシン点眼薬群(平均[SD]年齢 2.8[1.6]歳)、27例がプラセボ点眼薬群(平均[SD]年齢 3.0[1.3]歳)、31例が未介入郡(平均[SD]年齢 3.2[1.8]歳)へランダムに割り付けられました。

モキシフロキサシン
点眼薬群
プラセボ群未介入群
臨床的治癒までの時間3.8日4.0日5.7日
群間差-1.9日
(95%CI -3.7 ~ -0.1
P=0.04 vs.未介入
0.2日
(95%CI –2.2 〜 1.6
P=0.94 vs.プラセボ群

臨床的治癒までの時間は、モキシフロキサシン点眼薬群が未介入群よりも有意に短く(3.8 vs. 5.7日;差 -1.9日、95%CI -3.7 ~ -0.1日;P=0.04)、生存分析では、モキシフロキサシン点眼薬とプラセボの両方が未介入に対して臨床的治癒までの時間を著しく短くしました。

オッズ比 OR
(95%CI)
3~6日目に結膜炎の症状があった小児の割合OR 0.59
0.39〜0.91
P=0.02 vs. プラセボ群

メタ解析では、合計584例の小児がランダム化され(300例が局所用抗生物質、284例がプラセボ)、局所用抗生物質の使用は、プラセボ点眼薬と比較して、3~6日目に結膜炎の症状があった小児の割合の有意な減少と関連していた(オッズ比 0.59、95%CI 0.39〜0.91)。

コメント

小児の急性感染性結膜炎の治療において、点眼用抗生剤が処方されますが、その有効性に関するエビデンスは限られています。

さて、本試験結果によれば、ランダム化比較試験において、モキシフロキサシン点眼薬とプラセボの両方が未介入に対して臨床的治癒までの時間を著しく短くすることが明らかとなりました。また本RCTを含むメタ解析の結果、局所用抗生物質の使用は、プラセボ点眼薬と比較して、3~6日目に結膜炎の症状があった小児の割合の有意な減少と関連していました。

本RCTに用いられたプラセボ点眼薬には、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース1.0%が含まれていました。感染眼を洗い流すだけでもモキシフロキサシン点眼薬と同等の効果があるようですが、追試が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ このランダム化臨床試験および系統的レビューとメタ解析において、局所抗生物質は急性感染性結膜炎の小児における結膜症状の持続期間を有意に短くすることと関連していた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:小児の急性感染性結膜炎の治療には、局所抗生物質がしばしば処方されるが、その有効性は不明である。

目的:急性感染性結膜炎に対する抗生剤局所療法の有効性を検討する。

試験デザイン、設定、参加者:2014年10月15日から2020年2月7日まで、フィンランド・オウル市のプライマリーヘルスケアでランダム化臨床試験を実施した。急性感染性結膜炎の生後6ヵ月から7歳の小児を登録対象とした。参加者は14日間フォローアップされた。その後のメタ解析では、本試験及び、生後1ヵ月から18歳までの急性感染性結膜炎の小児患者を登録した過去の3件のランダム化臨床試験を対象とした。

介入:本ランダム化臨床試験の参加者は、モキシフロキサシン点眼薬、プラセボ点眼薬、または未介入にランダムに割り付けられた。

主要アウトカムと測定法:本ランダム化臨床試験の主要アウトカムは、臨床的治癒までの時間(日数)であり、メタ解析では、3~6日目に結膜症状を有する参加者の割合であった。

結果:ランダム化臨床試験には88例(女児 46例[52%])が参加し、そのうち30例がモキシフロキサシン点眼薬群(平均[SD]年齢 2.8[1.6]歳)、27例がプラセボ点眼薬群(平均[SD]年齢 3.0[1.3]歳)、31例が未介入郡(平均[SD]年齢 3.2[1.8]歳)へランダムに割り付けられた。
臨床的治癒までの時間は、モキシフロキサシン点眼薬群が未介入群よりも有意に短く(3.8 vs. 5.7日;差 -1.9日、95%CI -3.7 ~ -0.1日;P=0.04)、生存分析では、モキシフロキサシン点眼薬とプラセボの両方が未介入に対して臨床的治癒までの時間を著しく短くした。
メタ解析では、合計584例の小児がランダム化され(300例が局所用抗生物質、284例がプラセボ)、局所用抗生物質の使用は、プラセボ点眼薬と比較して、3~6日目に結膜炎の症状があった小児の割合の有意な減少と関連していた(オッズ比 0.59、95%CI 0.39〜0.91)。

結論と関連性:このランダム化臨床試験および系統的レビューとメタ解析において、局所抗生物質は急性感染性結膜炎の小児における結膜症状の持続期間を有意に短くすることと関連していた。

臨床試験登録:ClinicalTrialsRegister. eu Identifier: 2013-005623-16.

引用文献

Effect of Topical Antibiotics on Duration of Acute Infective Conjunctivitis in Children: A Randomized Clinical Trial and a Systematic Review and Meta-analysis
Minna Honkila et al. PMID: 36194412 PMCID: PMC9533187 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2022.34459
JAMA Netw Open. 2022 Oct 3;5(10):e2234459. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.34459.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36194412/

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