健康高齢者における毎日の低用量アスピリンは重篤な転倒や骨折リスクとなりますか?(RCT; ASPREE-FRACTUREサブ試験; JAMA Intern Med. 2022)

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健康な高齢者におけるアスピリンの使用は転倒や骨折リスクを増加させるのか?

転倒や骨折は頻繁に起こり、高齢者の健康にとって有害です。アスピリンは骨の脆弱性を減少させ、骨量の減少を遅らせることが報告されていることから、アスピリンを服用することで、骨折リスクが低下する可能性があります。しかし、アスピリン服用と、転倒や骨折リスクとの関連性については充分に検討されていません。

そこで今回は、低用量アスピリン(100mg)を毎日服用することで、健康な高齢男女の骨折や重篤な転倒(転倒による病院受診)のリスクが低下するかどうかを明らかにしたASPREE-FRACTUREサブスタディの結果をご紹介します。

本試験は、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のサブスタディとして、オーストラリア南東部の主要16施設において高齢男女を対象に実施されました。ASPREE-FRACTUREサブスタディは、ASPREE試験のオーストラリアコンポーネントの一部として実施されました。2010年から2014年にかけて、70歳以上の健康な(心血管疾患、認知症、身体的障害のない)地域在住ボランティアがASPREE試験への参加者として募集されました。

本試験の介入群には、腸溶性コーティング(低用量)アスピリン100mgが1日1回経口投与されました。対照群には、毎日同一の腸溶性コーティング・プラセボ錠が投与されました。

ASPREE-FRACTUREの主要アウトカムは、あらゆる骨折の発生でした。副次的アウトカムは、病院受診につながる重篤な転倒でした。

試験結果から明らかになったことは?

年齢中央値(IQR)74(72〜78)歳の16,703例が募集され、9,179例(55.0%)が女性でした。介入参加者は8,322例、対照参加者は8,381例で、中央値4.6年の追跡期間中に2,865件の骨折と1,688件の重篤な転倒があり、一次および二次アウトカム解析に含まれました。

介入群対照群ハザード比 HR
あるいは発生率比
(95%CI)
初回骨折のリスクHR 0.97
0.87〜1.06
P=0.50
総転倒リスク884件804件発生率比 1.17
1.03〜1.33
P=0.01

介入群と対照群の間で初回骨折のリスクに差はありませんでしたが(ハザード比 0.97、95%CI 0.87〜1.06;P=0.50)、アスピリンは重篤な転倒リスクが高いことと関連していました(総転倒件数:884 vs. 804;発生率比 1.17、95%CI 1.03〜1.33;P=0.01)。

骨折および転倒リスクに影響することが知られている共変量で調整した解析でも結果は同様でした。

コメント

アスピリンは様々な作用(多面的作用)を有しています。そのうちの一つに、骨の脆弱性を減少させ、骨量の減少を遅らせることが報告されています。したがって、高齢者における骨折予防効果が期待されますが、充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、ランダム化臨床試験のサブスタディ(ASPREE-FRACTUREサブ試験)において、低用量アスピリンが骨折リスクを減少させない一方で、重篤な転倒リスクを増加させる可能性が示されました。

あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、低用量アスピリンのルーティン投与は推奨できません。他の国や地域でも同様の結果が示されるのか気になるところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化臨床試験のサブスタディにおいて、低用量アスピリンが骨折リスクを減少させない一方で、重篤な転倒リスクを増加させる可能性が示された。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:転倒や骨折は頻繁に起こり、高齢者の健康にとって有害である。アスピリンは骨の脆弱性を減少させ、骨量の減少を遅らせることが報告されている。

目的:低用量アスピリン(100mg)を毎日服用することで、健康な高齢男女の骨折や重篤な転倒(転倒による病院受診)のリスクが低下するかどうかを明らかにする。

試験デザイン、設定、参加者:二重盲検ランダム化プラセボ対照試験のサブスタディとして、オーストラリア南東部の主要16施設において高齢男女を対象に実施した。ASPREE-FRACTUREサブスタディは、ASPREE試験のオーストラリアコンポーネントの一部として実施された。2010年から2014年にかけて、70歳以上の健康な(心血管疾患、認知症、身体的障害のない)地域在住ボランティアがASPREE試験への参加者として募集された。医療従事者および試験担当者により、参加資格を有する可能性のある参加者を特定し、参加案内状を送付した。参加希望者にはスクリーニングが行われた。開業医の承認があり、4週間のランイン投薬試験を遵守している適格な参加者をランダム化した。データは、2019年10月17日から2022年8月31日まで分析された。

介入:介入群の参加者は、腸溶性コーティング(低用量)アスピリン100mgを1日1回経口投与された。対照群には、毎日同一の腸溶性コーティング・プラセボ錠を投与した。

主要アウトカムと測定法:ASPREE-FRACTUREの主要アウトカムは、あらゆる骨折の発生であった。副次的アウトカムは、病院受診につながる重篤な転倒であった。

結果:年齢中央値(IQR)74(72〜78)歳の16,703例が募集され、9,179例(55.0%)が女性であった。介入参加者は8,322例、対照参加者は8,381例で、中央値4.6年の追跡期間中に2,865件の骨折と1,688件の重篤な転倒があり、一次および二次アウトカム解析に含まれた。介入群と対照群の間で初回骨折のリスクに差はなかったが(ハザード比 0.97、95%CI 0.87〜1.06;P=0.50)、アスピリンは重篤な転倒リスクが高いことと関連していた(総転倒件数:884 vs. 804;発生率比 1.17、95%CI 1.03〜1.33;P=0.01)。結果は、骨折および転倒リスクに影響することが知られている共変量で調整した解析でも変わらなかった。

結論と妥当性:このランダム化臨床試験のサブスタディにおいて、低用量アスピリンが骨折のリスクを減少させない一方で、重篤な転倒のリスクを増加させたことから、この薬剤は健康な白人高齢者集団においてほとんど有利な利益を提供しないという証拠が追加された。

試験登録 本試験は、Australian New Zealand Clinical Trials Registry(ACTRN12615000347561)に登録された。

引用文献

Daily Low-Dose Aspirin and Risk of Serious Falls and Fractures in Healthy Older People: A Substudy of the ASPREE Randomized Clinical Trial
Anna L Barker et al. PMID: 36342703 PMCID: PMC9641595 (available on 2023-11-07) DOI: 10.1001/jamainternmed.2022.5028
JAMA Intern Med. 2022 Dec 1;182(12):1289-1297. doi: 10.1001/jamainternmed.2022.5028.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36342703/

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