経口抗凝固薬投与中の患者におけるトラマドールの使用と出血性合併症のリスクはどのくらい?(SR&MA; Eur J Clin Pharmacol. 2022)

close up photo of pacific bleeding heart flower 04_相互作用、薬物相互作用
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トラマドールとビタミンK拮抗薬を併用した場合の出血リスクはどのくらいなのか?

トラマドール(商品名:トラマール)の添付文書では、併用注意にクマリン系抗凝血剤(ビタミンK拮抗薬:ワルファリン)が記載されており、これは「出血を伴うプロトロンビン時間の延長、斑状出血等の抗凝血作用への影響がみられたとの報告がある」ためのようです。しかし、この機序については解明されておらず、また出血リスクの程度については明らかとなっていません。

そこで今回は、経口抗凝固薬投与中の患者において、トラマドールの摂取が出血のリスクを高めるかどうかを明らかにすることを目的に実施されたシステマティックレビュー&メタ解析の結果をご紹介します。

本システマティックレビューは、2022年4月14日までのPubMedとEmbaseを検索し、含まれる研究の参考文献と引用文献をスクリーニングし、経口抗凝固薬とトラマドールを使用している成人患者の出血性合併症を調査した比較研究および非比較研究が対象となりました。ビタミンK拮抗薬投与中の患者におけるトラマドールの重篤な出血(入院または死亡に至る)リスクについてメタ解析が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

合計17件の研究が含まれました。症例シリーズ1件、症例報告12件、症例対照研究2件、コホート研究2件でした。ほとんどの研究がトラマドールとビタミンK拮抗薬の併用について述べており、1件の症例対照研究ではダビガトランとリバーロキサバンについても評価し、1件の症例報告ではダビガトランを対象としていました。

リスク比
(95%CI)
プールされた重篤な出血のリスクリスク比 2.68
1.45~4.96
p<0.001

症例報告/シリーズでは、トラマドールと経口抗凝固薬を使用中に出血性合併症を起こした患者は合計33例でした。4件の比較研究では、トラマドールとビタミンK拮抗薬摂取中の出血リスクの増加が報告され、1件の研究で統計的に有意でした;プールされた重篤な出血のリスク比は2.68[95%CI 1.45~4.96、p<0.001]でした。

コメント

トラマドールと経口抗凝固薬との相互作用による出血リスクの評価は充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、投与中の患者におけるトラマドールの使用と出血リスクとの関連が示されました。ただし、ほとんどが症例報告のデータであり、より大規模なコホート研究や症例対象研究の結果が待たれるところです。またトラマドールとDOACの相互作用による出血リスクについてはデータが不充分であり、今後の検討結果が待たれます。

続報に期待。

an elderly man checking his blood pressure

✅まとめ✅ 系統的レビューの結果、ビタミンK拮抗薬投与中の患者におけるトラマドールの使用と出血のリスクとの関連が確認された。一方、DOACとトラマドールとの相互作用についてはデータが不足していた。

根拠となった試験の抄録

目的:この系統的レビューとメタ解析は、経口抗凝固薬投与中の患者において、トラマドールの摂取が出血のリスクを高めるかどうかを明らかにすることを目的としたものである。

方法:本システマティックレビューはPROSPERO、CRD42022327230に登録された。2022年4月14日までのPubMedとEmbaseを検索し、含まれる研究の参考文献と引用文献をスクリーニングした。経口抗凝固薬とトラマドールを使用している成人患者の出血性合併症を調査した比較研究および非比較研究を対象とした。バイアスのリスクは、症例報告および症例シリーズについては薬物相互作用確率尺度を適応し、比較研究についてはNewcastle-Ottawa尺度を用いて評価した。ビタミンK拮抗薬投与中の患者におけるトラマドールの重篤な出血(入院または死亡に至る)リスクについてメタ解析が行われた。

結果:合計17件の研究が含まれた。症例シリーズ1件、症例報告12件、症例対照研究2件、コホート研究2件であった。ほとんどの研究がトラマドールとビタミンK拮抗薬の併用について述べており、1件の症例対照研究ではダビガトランとリバーロキサバンについても評価し、1件の症例報告ではダビガトランを対象としていた。症例報告/シリーズでは、トラマドールと経口抗凝固薬を使用中に出血性合併症を起こした患者は合計33例であった。4件の比較研究では、トラマドールとビタミンK拮抗薬摂取中の出血リスクの増加が報告され、1件の研究で統計的に有意であった;プールされた重篤な出血のリスク比は2.68[95%CI 1.45~4.96、p<0.001]であった。

結論:この系統的レビューでは、ビタミンK拮抗薬投与中の患者におけるトラマドールの使用と出血のリスクとの関連が確認された。このリスクが直接経口抗凝固薬を使用している患者にも及ぶかどうかを評価するには、証拠が少なすぎるため、さらなる研究が必要である。

キーワード:出血、直接的経口抗凝固薬、経口抗凝固薬、トラマドール、ビタミンK

引用文献

Use of tramadol and the risk of bleeding complications in patients on oral anticoagulants: a systematic review and meta-analysis
Clara Lévy et al. PMID: 36323905 DOI: 10.1007/s00228-022-03411-1
Eur J Clin Pharmacol. 2022 Nov 3. doi: 10.1007/s00228-022-03411-1. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36323905/

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