血液透析中の心房細動患者に対する出血リスクにおいてアピキサバンとワルファリンに違いはありますか?(PROBE; RENAL-AF試験; Circulation. 2022)

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血液透析中の心房細動患者に対するアピキサバンの有効性・安全性は?

血液透析を受けている心房細動を有する末期腎不全(ESKD)患者における脳卒中予防のためのアピキサバンの安全性や有効性を評価したランダム化比較試験のデータは限られています。日本において、透析患者へのアピキサバン(商品名:エリキュース)使用は承認されていません(2022年11月3日時点)。

そこで今回は、RENAL-AF試験は、心房細動を有しCHA2DS2-VAScスコア≧2の血液透析患者において、アピキサバン vs. ワルファリンの前向きランダム化非盲検アウトカム評価(PROBE)であった。患者を、アピキサバン5mg 1日2回投与(年齢80歳以上、体重60kg以下では2.5mg 1日2回投与)または用量調節したワルファリンに 1:1 でランダムに割り付けた。
主要転帰は、大出血または臨床的に関連性のある非大出血が発生するまでの期間とした。副次的アウトカムは、脳卒中、死亡率、アピキサバンの薬物動態とした。薬物動態のサンプリングは1日目、3日目、1ヵ月目に行った。

試験結果から明らかになったことは?

2017年1月から2019年1月までに、154例の患者がアピキサバン(n=82)またはワルファリン(n=72)にランダムに割り付けられました。試験は登録上の課題により早期に中止されました。ワルファリン投与患者の治療域(INR 2.0〜3.0)における滞在時間は44%(四分位範囲;23〜59%)でした。

アピキサバン群ワルファリン群ハザード比 HR
(95%CI)
大出血または臨床的に関連性のある
非大出血の1年発生率
32%26%HR 1.20
0.63〜2.30
脳卒中または全身性塞栓症3%3.3%
死亡26%18%

大出血または臨床的に関連性のある非大出血の1年発生率は、アピキサバン群で32%、ワルファリン群で26%(HR 1.20、95%CI 0.63〜2.30)、脳卒中または全身性塞栓症の1年発生率は、アピキサバン群で3%、ワルファリン群で3.3%であった。死亡は、アピキサバン群(21例[26%])およびワルファリン群(13例[18%])で最もよく見られた主要イベントであった。

薬物動態サブスタディでは、目標症例数である50症例が登録されました。定常状態における12時間曲線下面積(AUC0-12)の中央値は、アピキサバン5mg 1日2回投与で2,475ng-h/mL(10th-90th%値:1,342〜3,285)、アピキサバン2.5mg 1日2回投与で1,269ng-h/mL(10th-90th%値:615〜1,946)でした。また、大出血または臨床的に関連性のある非大出血事象の有無にかかわらず、アピキサバンの最小血中濃度、12時間AUC0-12、最大血中濃度にはかなりの重複がみられました。

コメント

経口抗凝固薬(DOAC, OAC)は、頻回の検査や食事制限がないことから、ビタミンK拮抗薬に替わり使用量が増加しています。しかし、ビタミンK拮抗薬と比較して、透析患者を対象としたデータが限られています。

さて、本試験結果によれば、血液透析を受けている心房細動およびESKD患者において、アピキサバンとワルファリンを比較したところ、重大な出血または臨床的に関連する非大出血の発生率について結論を出すには、検出力が不充分でした。これは、登録上の課題により対象患者の組入れがうまくできなかったためのようです。

とはいえ、大出血または臨床的に関連性のある非大出血の1年発生率はハザード比(HR)1.20
0.63〜2.30)であることから、現時点において、ワルファリンと比較して出血リスクが高まる可能性は低そうです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 血液透析を受けている心房細動およびESKD患者において、アピキサバンとワルファリンを比較したところ、重大な出血または臨床的に関連する非大出血の発生率について結論を出すには、検出力が不充分であった。

根拠となった試験の抄録

背景:血液透析を受けている心房細動を有する末期腎不全(ESKD)患者における脳卒中予防のためのアピキサバンの安全性や有効性を評価したランダム化データはない。

方法:RENAL-AF試験は、心房細動を有しCHA2DS2-VAScスコア≧2の血液透析患者において、アピキサバン vs. ワルファリンの前向きランダム化非盲検アウトカム評価(PROBE)であった。患者を、アピキサバン5mg 1日2回投与(年齢80歳以上、体重60kg以下では2.5mg 1日2回投与)または用量調節したワルファリンに 1:1 でランダムに割り付けた。
主要転帰は、大出血または臨床的に関連性のある非大出血が発生するまでの時間とした。副次的アウトカムは、脳卒中、死亡率、アピキサバンの薬物動態とした。薬物動態のサンプリングは1日目、3日目、1ヵ月目に行った。

結果:2017年1月から2019年1月までに、154例の患者がアピキサバン(n=82)またはワルファリン(n=72)にランダムに割り付けられた。試験は登録上の課題により早期に中止された。ワルファリン投与患者の治療域(INR 2.0〜3.0)における滞在時間は44%(四分位範囲;23〜59%)であった。大出血または臨床的に関連性のある非大出血の1年発生率は、アピキサバン群で32%、ワルファリン群で26%(HR 1.20、95%CI 0.63〜2.30)、脳卒中または全身性塞栓症の1年発生率は、アピキサバン群で3%、ワルファリン群で3.3%であった。死亡は、アピキサバン群(21例[26%])およびワルファリン群(13例[18%])で最もよく見られた主要イベントであった。薬物動態サブスタディでは、目標症例数である50症例が登録された。定常状態における12時間曲線下面積(AUC0-12)の中央値は、アピキサバン5mg 1日2回投与で2,475ng-h/mL(10th-90th%値:1,342〜3,285)、アピキサバン2.5mg 1日2回投与で1,269ng-h/mL(10th-90th%値:615〜1,946)であった。また、大出血または臨床的に関連性のある非大出血事象の有無にかかわらず、アピキサバンの最小血中濃度、12時間AUC0-12、最大血中濃度にはかなりの重複がみられた。

結論:血液透析を受けている心房細動およびESKD患者において、アピキサバンとワルファリンを比較したところ、重大な出血または臨床的に関連する非大出血の発生率について結論を出すには、検出力が不充分であった。臨床的に関連する出血イベントは、抗凝固療法を受けているこの集団において、脳卒中または全身性塞栓症の約10倍の頻度で発生したことから、血液透析を受けている心房細動およびESKD患者における抗凝固療法のリスクと利益を評価する今後のランダム化試験の必要性が浮き彫りになった。

引用文献

Apixaban for Patients with Atrial Fibrillation on Hemodialysis: A Multicenter Randomized Controlled Trial
Sean D Pokorney et al. PMID: 36335914 DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.121.054990
Circulation. 2022 Nov 6. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.121.054990. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36335914/

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