2型糖尿病を有する大腸がん
これまでの研究から、大腸がん(CRC)患者におけるメトホルミンの保護作用が示唆されています。しかし、データは限られており、更なる検証が求められています。
そこで今回は、2型糖尿病(DM)を有するCRC患者におけるメトホルミン使用と全生存(OS)および無病生存(DFS)の関連性を検討した後向き研究の結果をご紹介します。
本試験では、2005年から2019年の間にリモージュの大学病院でCRCの手術を受け、2型DMと診断された患者がレトロスペクティブに対象とされました。曝露はメトホルミンの使用で、アウトカムはOSとDFSとされました。
試験結果から明らかになったことは?
2型DMを有する290例のCRC患者が同定されました。そのうち144例(49.7%)がメトホルミンによる治療を受けていました。メトホルミン使用者は非使用者に比べ、有意に若く、肥満度が高く、糖尿病関連合併症が少ない特徴を有していました。
2年後のOSは、メトホルミン使用者が非使用者に比べて有意に高いことが示されました(86.9±2.9% vs. 71.0±4.0%、p=0.001)。
多変量解析では、メトホルミン使用はより良いOSと関連していました(調整ハザード比[aHR]0.45、95%信頼区間[95%CI] 0.21~0.96)およびDFSの改善(aHR 0.31、95%CI 0.18~0.54)でした。
コメント
メトホルミンによる抗腫瘍効果が報告されていますが、がん種が異なったりと、一貫した結果は示されていません。
さて、本試験結果によれば、メトホルミンの使用は、2型DMを有する大腸がん患者の全生存(OS)および無病生存(DFS)を改善する可能性があることが示されました。しかし、本試験は後向き研究であること、ベースラインの患者特性(年齢、肥満度、糖尿病合併症)が異なることから、メトホルミン使用による大腸がんに対する正味の効果については不明です。追試が求められます。
続報に期待。
☑まとめ☑ メトホルミンの使用は、2型DMを有するCRC患者のOSとDFSを改善する可能性があるものの、ベースラインの患者特性が異なることから追試が求められる。
根拠となった試験の抄録
背景:これまでの研究から、大腸がん(CRC)患者におけるメトホルミンの保護作用が示唆されている。本研究の目的は、2型糖尿病(DM)を有するCRC患者におけるメトホルミン使用と全生存(OS)および無病生存(DFS)の関連性を検討することであった。
方法:2005年から2019年の間にリモージュの大学病院でCRCの手術を受け、2型DMと診断された患者をレトロスペクティブに対象とした。患者の特徴、CRC、併存疾患、薬剤曝露に関するデータは、電子カルテから収集した。曝露はメトホルミンの使用で、アウトカムはOSとDFSとした。
結果:2型DMを有する290例のCRC患者を同定した。そのうち144例(49.7%)がメトホルミンによる治療を受けていた。メトホルミン使用者は非使用者に比べ、有意に若く、肥満度が高く、糖尿病関連合併症が少なかった。2年後のOSは、メトホルミン使用者が非使用者に比べて有意に高かった(86.9±2.9% vs. 71.0±4.0%、p=0.001)。多変量解析では、メトホルミン使用はより良いOSと関連していた(調整ハザード比[aHR]0.45、95%信頼区間[95%CI] 0.21~0.96)およびDFSの改善(aHR 0.31、95%CI 0.18~0.54)であった。
結論:メトホルミンの使用は、2型DMを有するCRC患者のOSとDFSを改善する可能性がある。
引用文献
The effect of metformin on the survival of colorectal cancer patients with type 2 diabetes mellitus
Zeinab Tarhini et al. PMID: 35859114 DOI: 10.1038/s41598-022-16677-3
Sci Rep. 2022 Jul 20;12(1):12374. doi: 10.1038/s41598-022-16677-3.
— 読み進める www.nature.com/articles/s41598-022-16677-3
コメント