2型糖尿病の喫煙者に対する禁煙補助薬バレニクリンの有効性・安全性は?
糖尿病患者における効果的な禁煙介入に関するエビデンスは限られています。2型糖尿病の喫煙者特有の行動や代謝の特徴から、禁煙補助薬であるバレニクリンの安全性や有効性の検証が求められます。
そこで今回は禁煙を計画している2型糖尿病患者を対象に、バレニクリンの有効性と安全性を評価したランダム化比較試験の結果をご紹介します。この多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験は、イタリア・カターニアの5つの病院における6つの外来診療所から患者を募集しました。2型糖尿病を有し、1日10本以上喫煙しており、禁煙の意思のある患者を対象に適格性のスクリーニングを行いました。適格な患者は、バレニクリン治療とプラセボ治療のいずれかにランダムに割り付けられました。試験は、12週間の治療期と40週間の非治療期から構成されました。本試験では、バレニクリン 1mg、1日2回投与またはマッチドプラセボを12週間投与しました。両治療群の患者には禁煙カウンセリングも実施しました。
本試験の主要評価項目は、9~24週目の禁煙継続率(CAR)でした。副次的評価項目は、9~12週および9~52週のCARと、12、24、52週の7日時点の禁煙率でした。
試験結果から明らかになったことは?
300例の患者(平均年齢 57.4[0.8]歳、男性 117例(バレニクリン群 78.0%)、男性 119例(プラセボ群 79.3%)をバレニクリン(n = 150)またはプラセボ(n = 150)にランダムに割り付けました。
バレニクリン群 | プラセボ群 | オッズ比 (95%CI) | |
9~24週目の禁煙継続率(CAR) | 24.0% | 6.0% | OR 4.95 (95%CI 2.29〜10.70) P<0.001 |
9~12週目のCAR | 31.3% | 7.3% | OR 5.77 (95%CI 2.85〜11.66) P<0.001 |
9~52週目 | 18.7% | 5.3% | OR 4.07 (95%CI 1.79〜9.27) P<0.001 |
9〜24週目のCARは、バレニクリン群がプラセボ群より有意に高いことが示されました(24.0% vs. 6.0%;オッズ比[OR] 4.95、95%CI 2.29〜10.70;P<0.001)。9~12週目のCAR(31.3% vs. 7.3%、OR 5.77、95%CI 2.85〜11.66;P<0.001)および9~52週目(18.7% vs. 5.3%、OR 4.07、95%CI 1.79〜9.27;P<0.001)や12、24、52週目の禁欲の7日時点における有症状もバレニクリン vs. プラセボで有意に高値でした。
プラセボ群と比較してバレニクリン群で最も頻繁に発生した有害事象は、吐き気(41 [27.3%] vs. 17 [11.4%])、不眠(29 [19.4%] vs. 19 [12.7%] )、異常な夢(19 [12.7%] vs. 5 [3.4%])、不安(17 [11.4%] vs. 11 [7.3%] )およびイライラ感(14 [9.4%] vs. 8 [5.4%] )でした。重篤な有害事象は両群とも頻度が低く、治療に関連するものではありませんでした。
コメント
禁煙治療において、補助療法としてバレニクリン(チャンピックス®️)が用いられますが、2型糖尿病患者における有効性・安全性データの検証は充分になされていません。
さて、本試験結果によれば、禁煙プログラムにバレニクリンを含めることは、重篤な有害事象なしに長期の禁煙を達成するのに有効であることが示されました。禁煙継続率については、フォローアップ期間が長くなるほど低下していますので、治療期間中における治療継続のためのモニタリングが求められます。また、吐き気や不眠、異常な夢などの有害事象が報告されているため、こちらについても継続したモニタリングが求められます。
✅まとめ✅ 禁煙プログラムにバレニクリンを含めることは、重篤な有害事象なしに長期の禁煙を達成するのに有効であることが示された。2型糖尿病患者の禁煙を支援するための糖尿病教育プログラムにおいて、バレニクリンをルーチンに使用することが望ましい。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:糖尿病患者における効果的な禁煙介入に関するエビデンスは限られている。2型糖尿病喫煙者特有の行動や代謝の特徴から、禁煙補助薬であるバレニクリンのランダム化臨床試験を行うことが望ましい。
目的:禁煙を計画している2型糖尿病患者を対象に、バレニクリンの有効性と安全性を評価する。
試験デザイン、設定、参加者:この多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験は、イタリア・カターニアの5つの病院における6つの外来診療所から患者を募集した。2型糖尿病を有し、1日10本以上喫煙しており、禁煙の意思のある患者を対象に適格性のスクリーニングを行った。適格な患者は、バレニクリン治療とプラセボ治療のいずれかにランダムに割り付けられた。試験は、12週間の治療期と40週間の非治療期から構成された。2020年12月から2021年4月までIntention-to-treatデータ解析を実施した。
介入:バレニクリン 1mg、1日2回投与またはマッチドプラセボを12週間投与。両治療群の患者には禁煙カウンセリングも実施した。
主要アウトカムと測定方法:本試験の主要評価項目は、9~24週目の継続禁煙率(CAR)とした。副次的評価項目は、9~12週および9~52週のCARと、12、24、52週の7日時点の禁煙率であった。
結果:300例の患者(平均年齢 57.4[0.8]歳、男性 117例(バレニクリン群 78.0%)、男性 119例(プラセボ群 79.3%)をバレニクリン(n = 150)またはプラセボ(n = 150)にランダムに割り付けた。9〜24週目のCARは、バレニクリン群がプラセボ群より有意に高かった(24.0% vs. 6.0%;オッズ比[OR] 4.95、95%CI 2.29〜10.70;P<0.001)。9~12週目のCAR(31.3% vs. 7.3%、OR 5.77、95%CI 2.85〜11.66;P<0.001)および9~52週目(18.7% vs. 5.3%、OR 4.07、95%CI 1.79〜9.27;P<0.001)や12、24、52週目の禁欲の7日時点における有症状もバレニクリン vs. プラセボで有意に高値であった。プラセボ群と比較してバレニクリン群で最も頻繁に発生した有害事象は、吐き気(41 [27.3%] vs. 17 [11.4%])、不眠(29 [19.4%] vs. 19 [12.7%] )、異常な夢(19 [12.7%] vs. 5 [3.4%])、不安(17 [11.4%] vs. 11 [7.3%] )およびイライラ感(14 [9.4%] vs. 8 [5.4%] )であった。重篤な有害事象は両群とも頻度が低く、治療に関連するものではなかった。
結論と関連性:この試験の結果から、禁煙プログラムにバレニクリンを含めることは、重篤な有害事象なしに長期の禁煙を達成するのに有効であることが示された。2型糖尿病患者の禁煙を支援するための糖尿病教育プログラムにおいて、バレニクリンをルーチンに使用することが望ましい。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT01387425
引用文献
Efficacy and Safety of Varenicline for Smoking Cessation in Patients With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial
Cristina Russo et al. PMID: 35727580 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2022.17709
JAMA Netw Open. 2022 Jun 1;5(6):e2217709. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2022.17709.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35727580/
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