がん患者におけるアセトアミノフェン使用は、免疫チェックポイント阻害薬の効果を減弱する?(Ann Oncol. 2022)

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アセトアミノフェン使用は、免疫チェックポイント阻害薬の効果を減弱するのか?

アセトアミノフェンの使用は、ワクチン免疫反応の鈍化と関連していることが報告されています。一方で、関連がないとする報告もあり一貫した結果は示されていません。また、がん患者における免疫チェックポイント阻害薬に対するアセトアミノフェンの影響に関する報告はほとんどありません。

そこで今回は、がん患者における免疫療法の効果に対するアセトアミノフェンの影響を評価した試験の結果をご紹介します。本試験では、免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint blockers, ICB; immune checkpoint inhibitors, ICI)による治療を受けた進行がん患者を対象とした3つの独立したコホートにおいて、アセトアミノフェンへの曝露を血漿分析によって評価し、臨床アウトカムと相関させました。アセトアミノフェンの免疫調節作用は、前臨床腫瘍モデルおよび健常人ドナーのヒト末梢血単核細胞(PBMC)で評価されました。

試験結果から明らかになったことは?

治療開始時に血漿中アセトアミノフェン濃度が検出された場合、他の予後因子とは無関係に、ICI治療を受けたがん患者の臨床アウトカムが有意に増悪しました。

アセトアミノフェンは、前臨床試験において大腸がん細胞株MC38モデルにおけるICIの有効性と、ヒト末梢血単核細胞によるPD-1遮断に関連したインターフェロン-γの分泌を有意に減少させました。さらに、in vivoでのICI効力の低下は、制御性T細胞(Tregs)による腫瘍浸潤の有意な増加と関連していました。

アセトアミノフェンを24時間以上投与すると、健常者の末梢血Tregが有意に拡大し、さらに、Tregによる免疫抑制の重要なメディエーターであるインターロイキン-10は、アセトアミノフェン服用中のがん患者においてICI治療により有意に上昇しました。

コメント

前臨床および臨床試験の結果、アセトアミノフェンが抗腫瘍免疫の潜在的な抑制因子であることが示されました。本試験結果に基づけば、免疫チェックポイント阻害薬治療を受けている患者においては、アセトアミノフェンを注意して使用した方が良いかもしれません。

これまでの報告によれば、免疫抑制機能を持つTregから分泌されるインターロイキン10(IL-10)がマクロファージや樹状細胞の活性化を抑制していることが知られていますので、今回の結果から、あくまでも相関関係が示されたにすぎませんが、アセトアミノフェンの24時間以上の投与が健常者の末梢血Tregの増加、これに伴うIL-10の上昇を引き起こし、がん患者におけるICIの有効性を妨げている可能性があります。

ただし、本試験はin vitro、コホート研究の結果に基づいたものであり、交絡因子が多分に残存していることから、アセトアミノフェンがICIの効果減弱の直接的な原因であるとは結論づけられません。どのような患者でアセトアミノフェンの使用を避けた方が良いのか、NSAIDsにすることでICIの効果が減弱しないのか、など多くの疑問や課題が残されています。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 前臨床および臨床試験の結果、アセトアミノフェンが抗腫瘍免疫の潜在的な抑制因子であることが示された。アセトアミノフェンは免疫チェックポイント阻害薬治療を受けている患者には注意して使用した方が良いかもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景:アセトアミノフェンの使用は、ワクチン免疫反応の鈍化と関連している。本研究は、がん患者における免疫療法の効果に対するアセトアミノフェンの影響を評価することを目的とした。

対象者および方法:免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint blockers, ICB; immune checkpoint inhibitors, ICI)による治療を受けた進行がん患者を対象とした3つの独立したコホートにおいて、アセトアミノフェンへの曝露を血漿分析によって評価し、臨床アウトカムと相関させた。アセトアミノフェンの免疫調節作用は、前臨床腫瘍モデルおよび健常人ドナーのヒト末梢血単核細胞(PBMC)で評価された。

結果:治療開始時に血漿中アセトアミノフェン濃度が検出された場合、他の予後因子とは無関係に、ICI治療を受けたがん患者の臨床アウトカムが有意に増悪した。アセトアミノフェンは、前臨床試験である大腸がん細胞株MC38モデルにおけるICIの有効性と、ヒト末梢血単核細胞によるPD-1遮断に関連したインターフェロン-γの分泌を有意に減少させた。さらに、in vivoでのICI効力の低下は、制御性T細胞(Tregs)による腫瘍浸潤の有意な増加と関連していた。アセトアミノフェンを24時間以上投与すると、健常者の末梢血Tregが有意に拡大した。さらに、Tregによる免疫抑制の重要なメディエーターであるインターロイキン-10は、アセトアミノフェン服用中のがん患者においてICI治療により有意に上昇した。

結論:本研究は、アセトアミノフェンが抗腫瘍免疫の潜在的な抑制因子であることを示す、前臨床および臨床における強力な証拠を提供するものである。したがって、アセトアミノフェンは免疫チェックポイント阻害薬治療を受けている患者には注意して使用すべきである。

キーワード:アセトアミノフェン、がん、免疫チェックポイント阻害剤、免疫療法

引用文献

Impact of acetaminophen on the efficacy of immunotherapy in cancer patients
A Bessede et al. PMID: 35654248 DOI: 10.1016/j.annonc.2022.05.010
Ann Oncol. 2022 May 30;S0923-7534(22)01208-X. doi: 10.1016/j.annonc.2022.05.010. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35654248/

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