GLP-1受容体作動薬による胆嚢・胆道疾患リスクはどのくらい?(RCTのメタ解析; JAMA Intern Med. 2022)

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GLP-1受容体作動薬による胆嚢・胆道疾患リスク

グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)は、2型糖尿病患者の血糖コントロールだけでなく、心血管リスクの軽減のために広く推奨されており、最近では体重減少のためにも使用されています。しかし、GLP-1 RAと胆嚢・胆道疾患との関連については議論が分かれるところです。

そこで今回は、GLP-1 RA治療と胆嚢・胆道疾患との関連を評価し、そのリスク因子を探索したランダム化比較試験のメタ解析の結果をご紹介します。

本試験の主要アウトカムは、胆嚢疾患または胆道疾患の複合でした。副次的アウトカムは、胆道疾患、胆道がん、胆嚢摘出術、胆嚢炎、胆石症でした。データ解析は2021年8月5日~2021年9月3日に実施されました。

試験結果から明らかになったことは?

103,371例の患者(平均[SD]年齢、57.8(6.2)歳、41,868[40.5%]女性)を含む合計76件のRCTが対象となりました。

GLP-1 RA治療
胆嚢または胆道疾患RR 1.37
(95%CI 1.23〜1.52
胆石症RR 1.27
(95%CI 1.10〜1.47
胆嚢炎RR 1.36
(95%CI 1.14〜1.62
胆道疾患RR 1.55
(95%CI 1.08〜2.22

含まれるすべての試験の中で、GLP-1 RA治療へのランダム化は、胆嚢または胆道疾患(RR 1.37、95%CI 1.23〜1.52); 特に胆石症(RR 1.27、95%CI 1.10〜1.47)、胆嚢炎(RR 1.36、95%CI 1.14〜1.62) および胆道疾患 (RR 1.55、95%CI 1.08〜2.22)のリスク上昇と関連していました。

GLP-1 RAを使用することは、体重減少を目的とした試験(13件; RR 2.29、95%CI 1.64〜3.18) および2型糖尿病またはその他の疾患を対象とした試験(63件; RR 1.27、95%CI 1.14〜1.43; 交互作用P<0.001)でも胆嚢または胆道疾患のリスク上昇に関連していました。

対象となったすべての試験の中で、GLP-1 RA使用は、低用量と比較して高用量で(RR 1.56、95%CI 1.36〜1.78)、短時間と比較して長期(RR 0.79、95%CI 0.48〜1.31; 交互作用P=0.03)で胆嚢あるいは胆道疾患の高いリスクと関連が認められました。

コメント

GLP-1受容体作動薬による胆嚢・胆道疾患リスクについては、大規模臨床試験でも報告されており、既知の副作用です。しかし、どのような患者や状況によりリスクが増加するのかについては明らかとなっていません。

さて、本試験結果によれば、GLP-1受容体作動薬の使用は、胆嚢または胆道疾患の高いリスクと関連していました。特に、胆石症、胆嚢炎および胆道疾患のリスク上昇との関連が認められました。また、高用量、長期間、および体重減少のために使用した場合、胆嚢または胆道疾患のリスク上昇と関連することも示されました。GLP-1受容体作動薬の使用そのものが、胆嚢または胆道疾患のリスク増加につながることは間違いありませんが、得られるベネフィットとのバランスをとる必要があります。

高用量、長期間、および体重減少のために使用した場合、胆嚢または胆道疾患のリスク上昇と関連することから、これらの状況においては、胆嚢または胆道疾患リスクを念頭におきたいところです。

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✅まとめ✅ GLP-1受容体作動薬の使用は、特に高用量、長期間、および体重減少のために使用した場合、胆嚢または胆道疾患のリスク上昇と関連することが明らかとなった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)は、2型糖尿病患者の血糖コントロールと心血管リスクの軽減のために広く推奨されており、最近では体重減少のためにも使用されている。しかし、GLP-1 RAと胆嚢・胆道疾患との関連については議論の分かれるところである。

目的:GLP-1 RA治療と胆嚢・胆道疾患との関連を評価し、そのリスク因子を探索すること。

データソース:MEDLINE/PubMed、EMBASE、Web of Science、Cochrane Library(初回~2021年6月30日)、臨床試験登録機関のウェブサイト(2021年7月10日)、参考文献リスト。言語の制限はなかった。

研究の選択:成人におけるGLP-1 RA薬とプラセボまたは非GLP-1 RA薬との使用を比較したランダム化臨床試験(RCT)。

データの抽出と統合:2名の査読者がPRISMA勧告に従って独立してデータを抽出し、Cochrane Collaborationのrisk-of-biasツールで各研究の質を評価した。プールされた相対リスク(RR)は、適宜、ランダム効果モデルまたは固定効果モデルを用いて算出された。各アウトカムのエビデンスの質は、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development, and Evaluation)フレームワークを用いて評価した。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、胆嚢疾患または胆道疾患の複合とした。副次的アウトカムは、胆道疾患、胆道がん、胆嚢摘出術、胆嚢炎、胆石症であった。データ解析は2021年8月5日~2021年9月3日に実施した。

結果:103,371例の患者(平均[SD]年齢、57.8(6.2)歳、41,868[40.5%]女性)を含む合計76件のRCTが対象となった。含まれるすべての試験の中で、GLP-1 RA治療へのランダム化は、胆嚢または胆道疾患(RR 1.37、95%CI 1.23〜1.52); 特に胆石症(RR 1.27、95%CI 1.10〜1.47)、胆嚢炎(RR 1.36、95%CI 1.14〜1.62) および胆道疾患 (RR 1.55、95%CI 1.08〜2.22)のリスク上昇と関連していた。GLP-1 RAを使用することは、体重減少を目的とした試験(13件; RR 2.29、95%CI 1.64〜3.18) および2型糖尿病またはその他の疾患を対象とした試験(63件; RR 1.27、95%CI 1.14〜1.43; 交互作用P<0.001)でも胆嚢または胆道疾患のリスク上昇に関連していた。対象となったすべての試験の中で、GLP-1 RA使用は、低用量と比較して高用量で(RR 1.56、95%CI 1.36〜1.78)、短時間と比較して長期(RR 0.79、95%CI 0.48〜1.31; 交互作用P=0.03)で胆嚢あるいは胆道疾患の高いリスクと関連があった。

結論と関連性:このRCTの系統的レビューおよびメタ解析により、GLP-1 RAsの使用は、特に高用量、長期間、および体重減少のために使用した場合、胆嚢または胆道疾患のリスク上昇と関連することが明らかとなった。

臨床試験登録:PROSPERO Identifier, crd42021271599

引用文献

Association of Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonist Use With Risk of Gallbladder and Biliary Diseases: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials
Liyun He et al. PMID: 35344001 PMCID: PMC8961394 (available on 2023-03-28) DOI: 10.1001/jamainternmed.2022.0338
JAMA Intern Med. 2022 May 1;182(5):513-519. doi: 10.1001/jamainternmed.2022.0338.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35344001/

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