5~11歳の小児におけるワクチン接種の効果はどのくらいか?
米国では、2022年4月7日までに18歳以下の1230万人の青少年がCOVID-19と診断されました(CDC)。Omicron(オミクロン)変異株出現前に行われた研究では、BNT162b2ワクチンは5歳以上におけるCOVID-19転帰の予防に安全かつ有効であることが示されています(PMID: 34670036、PMID: 34043894、PMID: 34942067、PMID: 34752019)。12~17歳の青年(30μg接種)と比較して、オミクロン出現後に完全接種となった5~11歳の小児(10μg接種)の接種成績はあまり知られていません。
そこで今回は、COVID-19の接種、症例、入院に関するニューヨーク州の4つのデータベースをリンクし、5~11歳および12~17歳の年齢層における完全接種(一次接種完了後14日以上)と未接種(部分接種は除く)における2つのアウトカム(核酸増幅検査または抗原の結果が陽性であると定義された症例、および入院症例)を比較したデータベース研究の結果をご紹介します。
本試験では、2021年11月29日から2022年1月30日まで、各年齢群の完全ワクチン接種者と未接種者の週次コホートについて、症例と入院が集計されました。
試験結果から明らかになったことは?
(2022年1月30日時点) | 5~11歳の小児 | 12〜17歳の青年 |
完全なワクチン接種を受けた集団 | 365,502例 (平均[SD]年齢 8.3[2.0]歳、 51%が男子) | 852,384例 (平均[SD]年齢 14.6[1.6]歳、 50%が男児) |
ワクチン未接種集団 | 997,554例 (平均[SD]年齢 7.8[2.0]歳、 51%が男子) | 208,145例 (平均[SD]年齢 14.6[1.7]歳、 53%が男児) |
COVID-19発症 | 140,680例 | 154,555例 |
入院 | 414例 | 671例 |
2022年1月30日時点で、5~11歳の小児365,502例が完全なワクチン接種を受けており(平均[SD]年齢 8.3[2.0]歳、51%が男子)、997,554例がワクチン未接種でした(平均[SD]年齢 7.8[2.0]歳、51%が男子)。12〜17歳の青年では、852,384例が完全なワクチン接種を受けており(平均[SD]年齢 14.6[1.6]歳、50%が男児)、208,145例がワクチン未接種でした(平均[SD]年齢 14.6[1.7]歳、53%が男児)。観察期間中、5〜11歳の小児ではCOVID-19の発症が140,680例、入院が414例、12〜17歳の青年では154,555例、入院が671例でした。
12〜17歳の青年 (ワクチン未接種 vs. ワクチン接種) | 11月29日の週 | 12月13日の週 (オミクロン 19%配列) | 1月24日 (オミクロン >99%配列) |
COVID-19発症の発生率比(IRR) | 6.7 (95%CI 6.2〜7.2) | 2.9 (95%CI 2.8〜3.0) | 2.0 (95%CI 1.9〜2.2) |
入院のIRR | 16.9 (95%CI 4.1〜148.8) | 6.8 (95%CI 2.7〜20.4) | 3.7 (95%CI 2.1~6.5) |
5〜11歳の小児 (ワクチン未接種 vs. ワクチン接種) | 11月29日の週 | 12月13日の週 (オミクロン 19%配列) | 1月24日 (オミクロン >99%配列) |
COVID-19発症の発生率比(IRR) | ー | 3.1 (95%CI 2.7〜3.6) | 1.1 (95%CI 1.1〜1.2) |
入院のIRR | ー | ∞(0.3〜∞) | 1.9 (95%CI 0.9~4.8) |
12〜17歳の青年では、症例に対するワクチン未接種 vs. ワクチン接種のIRRは、11月29日の週の6.7(95%CI 6.2〜7.2)から12月13日の週に2.9(95%CI 2.8〜3.0)に減少し(オミクロン 19%配列)、さらに1月24日までに2.0(95%CI 1.9〜2.2)に減少しました(オミクロン >99%配列)。
5〜11歳のワクチン未接種児と完全接種児のIRRは、12月13日の週には3.1(95%CI 2.7〜3.6)、1月24日には1.1(95%CI 1.1〜1.2)に減少していました。入院は、1月24日の週までに、完全接種者よりも非接種者のほうが高く、5~11歳の小児のIRRが1.9(95%CI 0.9~4.8) であるのに対し、12~17歳では3.7(95%CI 2.1~6.5)でした。
COVID-19発症予防のIRR (ワクチン未接種 vs. ワクチン接種) | 完全接種後13日以内 | 28日から34日まで |
5~11歳の小児 | 2.9 (95%CI 2.7〜3.1) | 1.1 (95%CI 1.1〜1.2) |
12〜17歳の青年 | 4.3 (95%CI 3.4〜5.3) | 2.3 (95%CI 1.9〜2.7) |
完全接種後13日以内では、12〜17歳のワクチン未接種児 vs. 完全接種児のCOVID-19発症のIRRは4.3(95%CI 3.4〜5.3)でしたが、28日から34日まででは2.3(95%CI 1.9〜2.7)でした。5〜11歳の小児では、13日以下でのIRRは2.9(95%CI 2.7〜3.1)、28日から34日では1.1(95%CI 1.1〜1.2)でした。
コメント
新型コロナワクチンの積極的な接種対象は、高齢者および免疫が低下している集団です。一方、小児や青年においては無症候性感染が一般的であること、発症後における重症化リスクが低いことから当初はワクチン接種対象ではありませんでした。しかし、小児や青年を介した家庭内感染、そしてブレイクスルー感染の報告があるため、これらを対象としたワクチン接種が進められています。
さて、本試験結果によれば、5〜11歳および12〜17歳のワクチン未接種児ではワクチン接種児と比較して、感染および入院のリスクは高いことが示されましたが、オミクロンの流行に伴いリスクは減少しました。ワクチン接種による予防効果は接種後の経過とともに低下することも明らかとなりました。これまでの報告と矛盾しません。
やはりワクチンを接種した方がCOVID-19発症リスク、入院リスクともに低いです。ただし、接種後の経過とともに、得られる効果が低下していますので、定期的な接種が求められます。しかし、これまでの報告から接種回数が4回目になると、ワクチンによるCOVID-19発症の予防効果の低下、効果の持続期間が短くなることが報告されています。接種時期の見直しと、新規のワクチン開発が求められます。
今後の報告に期待。
✅まとめ✅ 5〜11歳および12〜17歳のワクチン未接種児はワクチン接種児と比較して、感染および入院のリスクは高かったが、オミクロンの流行に伴いリスクは減少した。予防効果はワクチン接種後の経過とともに低下した。
根拠となった試験の抄録
背景:米国では、2022年4月7日までに18歳以下の1230万人の青少年がCOVID-19と診断された(CDC)。Omicron変異株出現前に行われた研究では、BNT162b2ワクチンは5歳以上の人のCOVID-19転帰の予防に安全かつ有効であることが示されている(PMID: 34670036、PMID: 34043894、PMID: 34942067、PMID: 34752019)。12~17歳の青年(30μg接種)と比較して、オミクロン出現後に完全接種となった5~11歳の小児(10μg接種)の接種成績はあまり知られていない。
調査方法:COVID-19の接種、症例、入院に関するニューヨーク州の4つのデータベースをリンクし、5~11歳および12~17歳の年齢層における完全接種(一次接種完了後14日以上)と未接種(部分接種は除く)の2つのアウトカム(核酸増幅検査または抗原の結果が陽性であると定義された症例、および入院症例)を比較した。
2021年11月29日から2022年1月30日まで、各年齢群の完全ワクチン接種者と未接種者の週次コホートについて、症例と入院を集計した。各年齢群において、ワクチン未接種者とワクチン接種者の割合を比較し、発生率比(IRR)を算出した。2021年12月13日から2022年1月2日の間に完全なワクチン接種状態を達成した若者の症例率を、2022年1月3日から30日を含む期間にわたってワクチン接種からの時間によって推定し、各年齢グループについて別々に、各期間のIRRで未接種と比較した。IRRの統計的有意性は95%CIで1を除外して評価した。ブースター接種を受けた青年は週次コホートに含まれるが、ワクチン接種後の時間に関する解析には含まれない。解析はSAS version 9.4(SAS Institute)で行い、95%CIはOpenEpiとExcelで推定した。ニューヨーク州保健局の機関審査委員会は、このサーベイランス活動を審査および患者同意の必要性から免除すると決定した。
結果:2022年1月30日時点で、5~11歳の小児365,502例が完全なワクチン接種を受けており(平均[SD]年齢 8.3[2.0]歳、51%が男子)、997,554例がワクチン未接種だった(平均[SD]年齢 7.8[2.0]歳、51%が男子)。12〜17歳の青年では、852,384例が完全なワクチン接種を受けており(平均[SD]年齢 14.6[1.6]歳、男児50%)、208,145例がワクチン未接種だった(平均[SD]年齢 14.6[1.7]歳、53%が男児)。観察期間中、5〜11歳の小児ではCOVID-19の発症が140,680例、入院が414例、12〜17歳の青年では154,555例、入院が671例であった。
12〜17歳の青年では、症例に対するワクチン未接種 vs. ワクチン接種のIRRは、11月29日の週の6.7(95%CI 6.2〜7.2)から12月13日の週に2.9(95%CI 2.8〜3.0)に減少し(オミクロン 19%配列)、さらに1月24日までに2.0(95%CI 1.9〜2.2)に減少した(オミクロン >99%配列)。
5〜11歳のワクチン未接種児と完全接種児のIRRは、12月13日の週には3.1(95%CI 2.7〜3.6)、1月24日には1.1(95%CI 1.1〜1.2)に減少していた。入院は、1月24日の週までに、完全接種者よりも非接種者のほうが高く、5~11歳の小児のIRRが1.9(95%CI 0.9~4.8) であるのに対し、12~17歳では3.7(95%CI 2.1~6.5)であった。
完全接種後13日以内では、12歳から17歳のワクチン未接種児 vs. 完全接種児のIRRは4.3(95%CI 3.4〜5.3)だったが、28日から34日までは2.3(95%CI 1.9〜2.7)であった。5〜11歳の小児では、13日以下でのIRRは2.9(95%CI 2.7〜3.1)、28日から34日では1.1(95%CI 1.1〜1.2)であった。
考察:5〜11歳および12〜17歳のワクチン未接種児ではワクチン接種児と比較して、感染および入院のリスクは高かったが、オミクロンの流行に伴いリスクは減少した。予防効果はワクチン接種後の経過とともに低下した。これらの結果は、青少年のデルタ変異株に対するワクチン効果の低下に関する最近の知見(PMID: 34670036)、および入院に対する持続的な防御を伴う、変異型と感染に対する防御の二重効果を補完するものである(PMID: 34942067)。研究の限界として、自宅での検査が報告されておらず、検査方法がワクチン接種の状況によって異なる場合、症例数に影響を及ぼす可能性がある。ブースター接種は週次分析では考慮されていないが、ワクチン接種に占める割合は小さかった(2022年1月31日までの青少年の12.5%)。接種後の分析期間では、5~11歳はワクチン承認後すぐに、12~17歳は比較的遅く接種している。この2つのグループは、試験の求め方や被爆の仕方が異なる可能性がある。
これらの知見は、小児および青年のワクチン接種率を高める努力と、5〜11歳の小児に対する投与戦略の見直しを支持するものである(PMID: 35298453)。
引用文献
Risk of Infection and Hospitalization Among Vaccinated and Unvaccinated Children and Adolescents in New York After the Emergence of the Omicron Variant
Vajeera Dorabawila et al. PMID: 35559959 PMCID: PMC9107062 DOI: 10.1001/jama.2022.7319
JAMA. 2022 May 13;e227319. doi: 10.1001/jama.2022.7319. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35559959/
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