透析を受けている非弁膜症性心房細動患者におけるアピキサバン用量とワルファリンの比較(後向きコホート研究; Am J Kidney Dis. 2022)

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透析施行中のNVAF患者におけるアピキサバンとワルファリン、どちらが良いのか?

透析を受けている非弁膜症性心房細動(NVAF)患者では、血栓塞栓症に伴う心血管イベントのリスクが高いことが報告されています。そのため、抗凝固療法が実施されますが、異なるアピキサバン投与量またはワルファリンを用いた抗凝固レジメン間の臨床転帰の比較は充分に検証されていません。

そこで今回は、維持透析を受けている腎不全患者のデータが含まれている米国の全国コホートにおいて、これらの転帰を比較したレトロスペクティブ・コホート研究の結果をご紹介します。

本試験の対象となったのは、USRDSデータベース2013〜2018に登録された透析患者のうち、心房細動を有し、アピキサバンまたはワルファリンによる治療を受けていた患者でした。本試験では、アピキサバンを承認用量通りに投与(通常用量群)、アピキサバンを承認用量より低く投与(低用量群)、またはワルファリンによる治療(ワルファリン群)を初めて処方された3群について比較されました。アウトカムは虚血性脳卒中/全身性塞栓症(SE)、大出血、全死因死亡でした。

試験結果から明らかになったことは?

17,156例において、アピキサバンの通常用量群、アピキサバンの低用量群、ワルファリン投与群の間で脳卒中/SEリスクに差はありませんでした

大出血リスク(ITT解析)
アピキサバン通常用量 vs. ワルファリンHR 0.67
(95%CI 0.55〜0.81
アピキサバン低用量 vs. ワルファリンHR 0.68
(95%CI 0.55〜0.84
アピキサバン通常用量 vs. アピキサバン低用量HR 1.02
(95%CI 0.78〜1.34

ITT解析において、アピキサバン通常用量(HR 0.67、95%CI 0.55〜0.81)および低用量(HR 0.68、0.55〜0.84) はいずれも、ワルファリンと比較して大出血のリスク低下と関連していました。アピキサバン通常用量と比較して、アピキサバン低用量は出血リスクの低下と関連しませんでした(HR 1.02、0.78〜1.34)。

死亡率(ITT解析)
アピキサバン通常用量 vs. ワルファリンHR 0.85
(95%CI 0.78〜0.92
アピキサバン低用量 vs. ワルファリンHR 0.97
(95%CI 0.89〜1.05

死亡率のITT解析では、アピキサバン通常用量はワルファリンに対して低リスクでした(HR 0.85、0.78〜0.92)。 一方、アピキサバン低用量とワルファリンでは死亡率の有意差はありませんでした(0.97、0.89〜1.05)。全体として、CAS解析の結果は同様でした。

コメント

DOACについては、患者ごとの治療用領域の判定が測定できないため、高齢者や腎機能低下者において、不必要な承認外の低用量で使用されることがあります。これまでの報告では、いずれも観察研究ではあるものの、承認外低用量のDOAC使用により、心血管イベントは変化しないあるいは増加する、出血リスクについては変化しないあるいは減少するなど、結果に一貫性がありません。

さて、本試験結果によれば、透析を受けている非弁膜症性心房細動患者において、アピキサバンの通常用量は、ワルファリンと比較して、死亡率のベネフィットと関連していました。一方、アピキサバンの承認用量外低用量は、ワルファリンと比較して、大出血リスクは低いものの、死亡リスクに差はありませんでした。またアピキサバン承認外低用量と通常用量との比較において、大出血のリスクに差はありませんでした。したがって、アピキサバンの通常用量の投与は最も好ましいベネフィット/リスクを提供する可能性があります。ただし、本試験はデータベースを用いた後向き研究の結果です。あくまでも仮説生成的な結果であることに留意が必要です。ワルファリンよりは優れていそうなデータが蓄積されていますが、まだまだ充分に検証されてるとはいえません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ アピキサバン通常用量は、ワルファリンと比較して、死亡率のベネフィットと関連しているかもしれない。非弁膜症性心房細動を有する透析患者において、アピキサバンの承認用量外低用量ではなく、通常用量の投与は最も好ましいベネフィット/リスクを提供する可能性がある。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:透析を受けている非弁膜症性心房細動(AF)患者において、異なるアピキサバン投与量またはワルファリンを用いた抗凝固レジメン間の臨床転帰の比較は十分に確立されていない。本研究では、維持透析を受けている腎不全患者の米国の全国コホートにおいて、これらの転帰を比較することを目的とした。

研究デザイン:レトロスペクティブ・コホート研究

試験設定・参加者:USRDSデータベース2013〜2018に登録された透析患者のうち、心房細動を有し、アピキサバンまたはワルファリンによる治療を受けていた患者。

曝露:アピキサバンを承認用量通りに投与、アピキサバンを承認用量より低く投与、またはワルファリンによる治療を初めて処方された。

アウトカム:虚血性脳卒中/全身性塞栓症(SE)、大出血、全死因死亡

解析方法:Cox比例ハザードモデル(治療の逆確率重み付け)。また、intention-to-treat(ITT)アプローチと薬剤の切り替えや中止による打ち切りを考慮した解析も実施された。打ち切りの逆確率重み付けは、情報的打ち切りの可能性を考慮するために使用された。

結果:17,156例において、アピキサバンの通常用量群、アピキサバンの低用量群、ワルファリン投与群の間で脳卒中/SEリスクに差はなかった。ITT解析において、アピキサバン通常用量(HR 0.67、95%CI 0.55〜0.81)および低用量(HR 0.68、0.55〜0.84) はいずれも、ワルファリンと比較して大出血のリスク低下と関連していた。アピキサバン通常用量と比較して、アピキサバン低用量は出血リスクの低下と関連しなかった(HR 1.02、0.78〜1.34)。死亡率のITT解析では、アピキサバン通常用量はワルファリンに対して低リスクであった(HR 0.85、0.78〜0.92) 。一方、アピキサバン低用量とワルファリンでは死亡率の有意差はなかった(0.97、0.89〜1.05)。全体として、CAS解析の結果は同様であった。

試験の限界:米国のメディケア受給者に限定した試験、心房細動、脳卒中、出血のアウトカムを確認するための管理請求に依存した試験、交絡が残存している可能性が高い。

結論:透析を受けている非弁膜症性心房細動患者において、ワルファリンはアピキサバンと比較して出血リスクが高い。アピキサバン低用量による出血リスクは、通常用量における出血リスクより検出可能なほど低くなかった。アピキサバン通常用量は、ワルファリンと比較して、死亡率のベネフィットと関連している。非弁膜症性心房細動を有する透析患者にとって、低用量ではなく、通常用量の投与は最も好ましいベネフィット/リスクトレードオフを提供する可能性がある。

キーワード:アピキサバン、心房細動、透析、直接経口抗凝固薬、末期腎不全、ワルファリン

引用文献

Apixaban Dosing Patterns Versus Warfarin in Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation Receiving Dialysis: A Retrospective Cohort Study
James B Wetmore et al. PMID: 35469965 DOI: 10.1053/j.ajkd.2022.03.007
Am J Kidney Dis. 2022 Apr 22;S0272-6386(22)00621-7. doi: 10.1053/j.ajkd.2022.03.007. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35469965/

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