COVID-19 mRNAワクチン接種後の抗体価に対して解熱剤の影響はありますか?(in vitro; Vaccine. 2022)

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COVID-19ワクチン接種後の抗体価への解熱剤の影響はどのくらい?

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)の感染を予防するワクチンは、パンデミックを抑制するための最も有効なアプローチと考えられており、いくつかの有効なワクチンが製造されています。このうち、BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン(ファイザー・ビオンテック社製)は、症候性COVID-19の予防に95%の効果があると報告されています(PMID: 33301246)。mRNA COVID-19ワクチン接種後の局所および全身性の副反応は、季節性インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど他のワクチンで観察される副反応よりも比較的多く見られます(PMID: 33301246PMID: 33378609PMID: 19673652PNEUMOVAX 23)。注目すべきことは、報告された全身性事象のほとんどで、特に発熱について、2回目の接種後の特異的有害事象が1回目の接種後よりも一般的であることです(PMID: 33301246PMID: 33378609)。SARS-CoV-2ワクチン接種後の反応原性と抗体反応の間における相関の可能性については、十分に特徴付けられてはいません。BNT162b2の第III相試験において、約40%のワクチン接種者が反応の重症度を軽減するために解熱剤や鎮痛剤を使用していました(PMID: 33301246)。解熱剤の使用とSARS-CoV-2ワクチン接種に対する抗体反応との関連性も不明ですが、解熱剤の使用によるワクチン接種の免疫原性への干渉の可能性は非常に懸念されるところです。

九州大学等では、COVID-19に対する感染対策として、日本の病院医療従事者を対象に、ウイルスのスパイク蛋白S1サブユニットの受容体結合ドメインに対する抗体(IgG(S-RBD))およびウイルスのヌクレオキャプシド蛋白に対する抗体(IgG(N))の血清検査を定期的に行っています(JJAID)。今回ご紹介するのは、mRNA COVID-19ワクチンであるBNT162b2を2回接種した後の医療従事者のIgG(S-RBD)力価の測定と被接種者背景、特異的副反応、解熱剤の使用について検討した試験結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

335例のデータが解析に利用可能でした。多変量解析により、IgG抗体価に有意に相関するものとして、2回目接種後の発熱度(標準化係数 β=0.301、p<0.0001)、女性(β=0.196、p=0.0014)、年齢(β= -0.119、p=0.0495)が抽出されました。また、2回目接種後の発熱度とIgG力価との正の相関は、性・年齢別に分析した場合にも観察されました。解熱剤の使用は、発熱の程度にかかわらず、IgG抗体価に影響を与えませんでした

発熱解熱剤例数
(%)
IgGの幾何平均力価(95%CI)P値
<37.0°C非使用70(75.3)7,405(6,368〜8,608)0.427
使用23(24.7)6,561(5,012〜8,592)
37.0〜37.9°C非使用50(55.0)9,253(7,621〜11,236)0.839
使用41(45.1)9,524(7,723〜11,746)
≥38.0°C非使用10(19.6)15,045(9,986〜22,662)0.402
使用41(80.4)12,586(10,299〜15,382)
表4. 2回目投与後の発熱グレード別IgG(S-RBD)力価に対する解熱剤使用の影響

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ワクチン接種後の発熱の程度と抗体価の上昇に相関関係があることが報告されています。一方で、相関関係がないとする報告もあることから、因果関係は不明です。一方、発熱時の解熱剤使用によって、ワクチン接種後の抗体価の上昇に対して、どのような影響があるのかについてはほとんど報告がありません。

さて、日本の医療従事者を対象とした本試験の結果によれば、IgG抗体価に有意に相関するものとして、2回目接種後の発熱度(p<0.0001)、女性であること(p=0.0014)、年齢(55歳以上、p=0.0495)が抽出されました。さらにワクチン接種後のIgG抗体価の上昇に、解熱剤の使用は、いずれの発熱の程度においても影響が認められませんでした。

あくまでも相関関係が示されたに過ぎず、追試が求められるところではありますが、現時点において、ワクチン接種後の解熱剤使用は、IgG抗体価の上昇に影響を与える可能性が低いことが示されました。

高熱はQOL低下を招くことから、無理せず解熱剤を使用した方がよりワクチン接種に前向きになれると考えられます。解熱剤の予防的投与とOn-demand投与での抗体価への影響の違いを検討するのも興味深いところです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 解熱剤は、充分な抗体産生を阻害することなく、副作用による苦痛を軽減するために有用であると考えられた。

根拠となった試験の抄録

背景:BNT162b2 COVID-19ワクチンの副反応はよく報告されており、副反応を軽減するために解熱剤がよく使用される。また、解熱剤の使用による影響についても十分に検討されていない。

方法:COVID-19既往のない病院医療従事者から血清試料を採取し、ワクチン2回接種後のSARS-CoV-2スパイク特異的IgG力価を測定した。接種後5日間の最高体温を含む1日の副反応の程度を自己申告式日記で報告させた。5日間の最高体温を3段階(37.0℃未満、37.0~37.9℃、38.0℃以上)に分類し、それぞれの最高体温を記録した。自己注射による解熱は質問票により報告された。

結果:335例のデータが解析に利用可能であった。多変量解析により、IgG抗体価に有意に相関するものとして、2回目接種後の発熱度(標準化係数 β=0.301、p<0.0001)、女性(β=0.196、p=0.0014)、年齢(β= -0.119、p=0.0495)が抽出された。また、2回目接種後の発熱度とIgG力価との正の相関は、性・年齢別に分析した場合にも観察された。解熱剤の使用は、発熱の程度にかかわらず、IgG抗体価に影響を与えなかった。

結論:解熱剤は、充分な抗体産生を阻害することなく、副作用による苦痛を軽減するために有用であると考えられた。

キーワード:抗体、解熱剤、反応原性、SARS-CoV-2、ワクチン

引用文献

Relation of fever intensity and antipyretic use with specific antibody response after two doses of the BNT162b2 mRNA vaccine
Naoki Tani et al. PMID: 35177298 PMCID: PMC8842119 DOI: 10.1016/j.vaccine.2022.02.025
Vaccine. 2022 Mar 18;40(13):2062-2067. doi: 10.1016/j.vaccine.2022.02.025. Epub 2022 Feb 14.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35177298/

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