脳卒中二次予防においてスタチン系治療によるLDL-C減少はより強い方が良いですか?(RCTのメタ解析; JAMA Neurol. 2022)

food healthy dawn meal 02_循環器系
Photo by Aleksandar Pasaric on Pexels.com

脳卒中二次予防のためにスタチンを用いた積極的LDL-C低下療法を行なった方が良いのか?

低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値の上昇は、虚血性脳卒中を含む心血管疾患の危険因子です(PMID: 26451029)。虚血性脳卒中の既往がある患者では、LDL-C値の上昇は、その後の主要な心血管イベントのリスク上昇と関連しています(PMID: 34369170)。LDL-C低下作用を有するスタチン系薬剤を用いた集中的な治療が、それほど集中的でない治療と比較して、動脈硬化性心血管疾患が確立している患者における主要な心血管イベントの抑制と関連しています(PMID: 29069377)。
しかし、脳卒中二次予防試験におけるスタチン系薬剤によるLDL-C低下療法の結果には一貫性がありません。

ランダム化臨床試験を対象とした最初のメタ解析では、スタチンによる集中的なLDL-C低下は、脳卒中再発のリスクを有意に低下させることが示されました(PMID: 19375663)。その後のメタ解析では、スタチンは虚血性脳卒中や心血管イベントのリスク低減と関連していましたが、脳卒中再発の低減は統計的有意差が認められませんでした(PMID: 18028802)。スタチンは、LDL-C低下作用に加えて、その多面的な作用により心血管系保護作用を示す可能性が報告されています(PMID: 24613322PMID: 23319813)。スタチンの抗血栓作用は、虚血性イベントのさらなる減少をもたらす可能性がありますが、虚血性脳卒中患者における頭蓋内出血のリスクを増加させる可能性があります(PMID: 34154390)。

スタチン系薬剤とコレステロール吸収阻害剤(例:エゼチミブ)またはPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害剤(アリロクマブおよびエボロクマブ)の併用は、急性冠症候群または動脈硬化性心疾患の既往を有する患者を対象とした臨床試験で、スタチン単独と比較して主要心血管イベントおよび脳卒中の発生抑制と関連していました(PMID: 26039521PMID: 28304224PMID: 30403574)。

今回ご紹介するのは、スタチン系薬剤によるLDL-C低下と脳卒中二次予防の関連を適切に解明するために、ランダム化臨床試験の系統的レビューとメタ解析を行い、虚血性脳卒中患者に対するLDL-C低下療法としてスタチン系治療のより集中的(強力)な治療と、それほど集中的でない治療に関連する有益性とリスクを定性的および定量的に評価した論文です。

試験結果から明らかになったことは?

最終解析では、脳卒中患者 20,163例(男性 13,518例[67.0%]、平均[SD]年齢 64.9[3.7]歳)を対象とした11件のランダム化臨床試験が対象となりました。平均追跡期間は4年(範囲 1~6.1年)でした。

プール解析の結果、より集中的にLDL-Cを低下させるスタチン療法は、比較的強度の低いスタチン療法と比較して、脳卒中の再発リスクの低減と関連していました(絶対リスク 8.1% vs. 9.3%;RR 0.88、95%CI 0.80〜0.96)。しかし、これらのLDL-C低下療法に関連する利益はLDL-C低下戦略によって差がありませんでした(スタチン vs. スタチン療法無し;RR 0.90、95%CI 0.81〜1.01;より集中的なスタチン療法 or エゼチミブ vs. 比較的強度の低いスタチン or エゼチミブ;RR 0.77、95%CI 0.62〜0.96;PCSK9阻害薬+スタチン vs. プラセボ+スタチン;RR 0.90、95%CI 0.71〜1.15;交互作用P=0.42)。

脳卒中の再発リスク
動脈硬化を有する患者集団RR 0.79、95%CI 0.69〜0.91
動脈硬化を有さない患者集団RR 0.95、95%CI 0.85〜1.07
交互作用P=0.04

より集中的なスタチン療法によるLDL-C低下は、比較的LDL-C低下作用の弱いスタチンと比較して、主要心血管イベントのリスクを減少させましたが、出血性脳卒中のリスクは増加させました。より強力なスタチンベースの治療は、比較的強度の低いスタチンベースの治療と比較して、動脈硬化の証拠を有するすべての患者を対象とした試験において脳卒中の再発リスクの低下と関連しましたが(RR 0.79、95%CI 0.69〜0.91)、動脈硬化の証拠を有さないほとんどの患者を対象とした試験においては認められませんでした(RR 0.95、95%CI 0.85〜1.07;交互作用P=0.04)。

コメント

脂質異常症や過度の肥満を有する患者において、スタチンは心血管イベントを低下させることが報告されていますが、一方で、脳卒中の二次予防においてはリスクとベネフィットのバランスが好ましくない可能性が指摘されています。さらに、スタチンによる高強度のLDL-C低下療法を支持する結果についても一貫した結果は得られていません。

さて、本試験結果によれば、より集中的なスタチン療法によるLDL-C低下は、比較的LDL-C低下作用の弱いスタチンと比較して、主要心血管イベントのリスクを減少させましたが、出血性脳卒中のリスクは増加させました。ここまでは、これまでの研究結果と同様です。一方、すでに動脈硬化が認められている患者集団においては、より集中的なスタチン療法によるLDL-C低下によって、脳卒中の再発リスクが低下しました。したがって、ストロングスタチンあるいはレギュラースタチンの高用量の使用を考慮する場合は、動脈硬化がどの程度進展しているのか明らかにしておく必要があります。動脈硬化リスクの低い患者集団においては、目標LDL-Cが達成できているのであれば、過剰に高強度のスタチンを使用する意義はないのかもしれません。これは、PCSK9阻害薬も含めて治療法によってイベントの発生に差がなかったことからも明らかであると考えられます。ただし、今後の検討によって、解析結果が逆転する可能性は充分にあります。本テーマについては、引き続き情報を追っていこうと思います。

続報に期待。

fit asian man exercising with dumbbell in gym

✅まとめ✅ より集中的なスタチンによるLDL-C低下療法は、特に動脈硬化を有する患者において、より強度の低いスタチン治療よりも好ましいかもしれない。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:脳卒中の再発リスクを軽減するために、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)を集中的に低下させるスタチン系治療の利点とリスクは確立されていない。

目的:ランダム化臨床試験のメタ解析を行い、より集中的にLDL-Cを低下させるスタチンベース治療と虚血性脳卒中患者の転帰との関連性を評価すること。

データソース:PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.govを1970年1月1日から2021年7月31日まで検索した。

研究の選択:本メタ解析は、スタチンベースによるLDL-C低下治療をより集中的に行う場合と積極的に行わない場合を比較し、脳卒中患者における脳卒中再発の転帰を記録したランダム化臨床試験を対象とした。

データの抽出と統合:データの抽出、データの質と妥当性の評価には、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses(PRISMA)報告ガイドラインを使用した。より強力なLDL-C低下療法とより低強度のLDL-C低下療法の主要および副次的アウトカムとの関連を示す指標として、95%CI付きの相対リスク(RR)を使用した。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは脳卒中の再発で、副次アウトカムは主要な心血管イベントと出血性脳卒中であった。

結果:最終解析では、脳卒中患者 20,163例(男性 13,518例[67.0%]、平均[SD]年齢 64.9[3.7]歳)を対象とした11件のランダム化臨床試験を対象とした。平均追跡期間は4年(範囲 1~6.1年)であった。プール解析の結果、より集中的にLDL-Cを低下させるスタチン療法は、低強度スタチン療法と比較して、脳卒中の再発リスクの低減と関連し(絶対リスク 8.1% vs. 9.3%;RR 0.88、95%CI 0.80〜0.96)、これらのLDL-C低下療法に関連する利益はLDL-C低下戦略によって差がなかった(スタチン vs. スタチン療法無し;RR 0.90、95%CI 0.81〜1.01;高用量スタチン or エゼチミブ vs. 比較的低用量スタチン or エゼチミブ;RR 0.77、95%CI 0.62〜0.96;PCSK9阻害薬+スタチン vs. プラセボ+スタチン;RR 0.90、95%CI 0.71〜1.15;交互作用P=0.42)。
LDL-C低下作用の強い高強度スタチンは、LDL-C低下作用の弱い低強度スタチンと比較して、主要な心血管イベントのリスクを減少させたが、出血性脳卒中のリスクは増加させた。より強力なスタチンベース治療は、低強度スタチンベース治療と比較して、動脈硬化の証拠を有するすべての患者を対象とした試験において脳卒中の再発リスクの低下と関連したが(RR 0.79、95%CI 0.69〜0.91)、動脈硬化の証拠を有さないほとんどの患者を対象とした試験においては認められなかった(RR 0.95、95%CI 0.85〜1.07;交互作用P=0.04)。

結論と関連性:本研究において、脳卒中再発リスク軽減のための、より集中的なスタチンベース治療のベネフィットとリスクは、特に動脈硬化の証拠がある患者においては、より低強度のスタチンベース治療のベネフィットとリスクより好ましい可能性を示唆するものである。

引用文献

Association Between Intensity of Low-Density Lipoprotein Cholesterol Reduction With Statin-Based Therapies and Secondary Stroke Prevention: A Meta-analysis of Randomized Clinical Trials
Meng Lee et al. PMID: 35188949 DOI: 10.1001/jamaneurol.2021.5578
JAMA Neurol. 2022 Feb 21. doi: 10.1001/jamaneurol.2021.5578. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35188949/

関連記事

【スタチン治療中のアテローム性心血管疾患患者におけるLDLコレステロールと心血管イベントおよび死亡との関連性(コホート研究; Am J Cardiol 2019)】

【批判的吟味】ポリファーマシーを有する高齢者におけるスタチン中止は、心血管アウトカムと死亡率に影響しますか?(後向きコホート研究; JAMA Netw Open. 2021)

【スタチン、プラセボ、無治療における副作用パターンは異なりますか?(SAMSON試験; JACC 2021)】

【批判的吟味】アトルバスタチン20mgによる非重篤な筋肉症状の発生リスクはどのくらいですか?(RCT; StatinWISE試験; BMJ 2021)

【スタチン治療と筋肉症状の関連性はどのくらいですか?(RCT; StatinWISE試験; BMJ 2021)】

【スタチンを隔日投与にすると有害事象を減らせますか?(SR&MA; J Pak Med Assoc. 2019)】

【スタチン系薬剤は朝と夜どちらに飲んだ方が良いですか?(SR&MA; J Clin Lipidol. 2017)】

コメント

タイトルとURLをコピーしました