COVID-19 オミクロンに対する抗体および抗ウイルス薬の有効性はどのくらい?(基礎研究; N Engl J Med. 2022)

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オミクロンに対する治療薬の中和活性はどのくらいか?

2021年11月、南アフリカで重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン)亜種が検出され、その後、オミクロンは急速に世界中に拡散しています(WHO)。2021年11月26日、世界保健機関(WHO)はオミクロンを懸念される変異体に指定した。オミクロンは、中国武漢で確認された初期のSARS-CoV-2株と比較して、スパイク(S)タンパク質に少なくとも33の変異(29のアミノ酸置換、1の3アミノ酸の挿入、3の小さな欠失)があることが判明しました(SCIENCEOPEN)。

注目すべきは、29の置換のうち15が、モノクローナル抗体ベース治療の主要ターゲットであるSタンパク質の受容体結合ドメインだったことです。このことは、FDA(米国食品医薬品局)で承認されているモノクローナル抗体が、オミクロン変異体に対してはあまり有効でない可能性を示唆しています。そこで、FDAが承認しているモノクローナル抗体と治験中のモノクローナル抗体(単独および併用)について、オミクロンおよびその他の懸念される変異体に対する中和能を検討しました。

試験結果から明らかになったことは?

ナミビアから来日した旅行者から分離されたhCoV-19/Japan/NC928-2N/2021(オミクロン;NC928)に対して、ライブウイルス中和アッセイ(FRNT)を用いて、モノクローナル抗体の中和活性を評価しました。

各変異体に対する中和活性ベータガンマオミクロン
Etesevimab(エテセビマブ)中和しない中和しない中和しない
Bamlanivimab(バムラニビマブ)活性低下活性低下中和しない
Imdevimab(イムデビマブ)高い中和活性高い中和活性中和しない
Casirivimab(カシリビマブ)高い中和活性高い中和活性高い中和活性
(ただし他の変異体と比べて、
中和活性が低い)
COV2-2196
(tixagevimab:チキサゲビマブ
中和活性あり中和活性あり中和活性あり
(他の変異体と比べて、
中和活性が高い)
COV2-2130
(cilgavimab:シルガビマブ
中和活性あり中和活性あり中和活性あり
(他の変異体と比べて、
中和活性が高い)
S309
(sotrovimab前駆体:ソトロビマブ前駆体
中和活性あり中和活性あり中和活性あり
(他の変異体と比べて、
中和活性が高い)

Etesevimab(エテセビマブ)は、最も高いFRNT50値(50,000 ng/mL以上)でもオミクロン(NC928)、ベータ(HP01542)、ガンマ(TY7-503)変異体を中和することはありませんでした。
Bamlanivimab(バムラニビマブ)は、ベータ及びガンマ変異体に対する中和活性が低下し、オミクロンは中和されませんでした。
Imdevimab(イムデビマブ)は、ベータ及びガンマ変異体に対して高い中和活性を示しましたが、オミクロンに対する中和活性は消失しました。
Casirivimab(カシリビマブ)は、ベータ、ガンマ及びオミクロンに対して高いFRNT50値(187.69~14,110.70 ng/mL)で中和しましたが、オミクロンに対するFRNT50値はベータに対して18.6倍、ガンマに対して75.2倍高く、オミクロンに対するFRNT50値はベータに対する18.6倍とガンマに対する75倍となりました。
COV2-2196(tixagevimab:チキサゲビマブ)、COV2-2130(cilgavimab:シルガビマブ)及びS309(sotrovimabとして販売されている薬剤の前駆体:ソトロビマブ前駆体)もベータ、ガンマ及びオミクロンに対して中和活性を保持していましたが、これらのモノクローナル抗体のFRNT50値はオミクロンに対してベータまたはガンマよりも3.7〜198.2倍高く、オミクロンの方がガンマに対して高いことが明らかとなりました。

コメント

オミクロンに対するモノクローナル抗体の中和活性を検証した基礎研究。ナミビアから来日した旅行者から分離されたhCoV-19/Japan/NC928-2N/2021に対する各薬剤の中和活性を検証しています。

さて、本試験結果によれば、エテセビマブ、バムラニビマブ、イムデビマブはオミクロンに対して中和活性がありませんでした。一方、カシリビマブはオミクロンに対して高い中和活性を示しました。また、チキサゲビマブシルガビマブソトロビマブ前駆体もベータ、ガンマ及びオミクロンに対して中和活性を保持していましたが、これらのモノクローナル抗体の中和活性は、ガンマよりもオミクロンに対して高いことが明らかとなりました。

ただし、本試験結果はあくまでも試験管内での結果に過ぎません。実際に、COVID-19治療においてリスク・ベネフィットを評価し、ベネフィットがリスクを上回ることを示す必要があります。とはいえ、実臨床においてCOVID-19治療を選択する上で、本試験結果は重要であると考えます。オミクロンに対する各モノクローナル抗体の治療効果については、まだまだエビデンスが充分ではありません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ オミクロンに対する治療選択肢において、モノクローナル抗体の中には中和活性を示さないものもみられた。ヒトを対象とした臨床試験での検証結果が求められる。

根拠となった試験の抄録

背景:2021年11月、南アフリカで重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.1.529(オミクロン)亜種が検出され、その後、オミクロンは急速に世界中に拡散している(WHO)。2021年11月26日、世界保健機関(WHO)はオミクロンを懸念される変異体に指定した。オミクロンは、中国武漢で確認された初期のSARS-CoV-2株と比較して、スパイク(S)タンパク質に少なくとも33の変異(29のアミノ酸置換、1の3アミノ酸の挿入、3の小さな欠失)があることが判明した(SCIENCEOPEN)。注目すべきは、29の置換のうち15が、モノクローナル抗体ベース治療の主要ターゲットであるSタンパク質の受容体結合ドメインだったことである。このことは、FDA(米国食品医薬品局)で承認されているモノクローナル抗体が、オミクロン変異体に対してはあまり有効でない可能性を示唆している。そこで、FDAが承認しているモノクローナル抗体と治験中のモノクローナル抗体(単独および併用)について、オミクロンおよびその他の懸念される変異体に対する中和能を検討した。

方法:ナミビアから来日した旅行者から分離されたhCoV-19/Japan/NC928-2N/2021(オミクロン;NC928)に対して、ライブウイルス中和アッセイ(FRNT)を用いて、モノクローナル抗体の中和活性を評価した。SARS-CoV-2/UT-NC002-1T/Human/2020/Tokyo(NC002)、2020年2月のSARS-CoV-2初期株、SARS-CoV-2/UT-HP127-1Nf/Human/2021/Tokyo(α.NC928)、SARS-CoV-2/UT-HP127-1Nf/Human/2021/Tokyo(α; HP127)、hCoV-19/USA/MD-HP01542/2021(β;HP01542)、hCoV-19/Japan/TY7-503/2021(γ;TY7-503)、hCoV-19/USA/WI-UW-5250/2021(Δ;UW5250)である。NC928 オミクロンウイルス株の全ゲノム配列解析の結果、この変異体はWuhan/Hu-1/2019基準株と比較して、Sタンパク質の受容体結合ドメインにオミクロンの特徴である15ヵ所の置換を有することが明らかとなった。

結果:7種類のモノクローナル抗体の反応性を、初期のWuhan基準株、および代表的なα、β、γ、δ変異体から得た組み換えSタンパク質をコートした酵素結合免疫吸着法(ELISA)により検証した。その結果は、公表されているデータ(PMID: 34087172)と一致した。これらのモノクローナル抗体は、初期株(NC002)、アルファ(HP127)およびデルタ(UW5250)変異体を低いFRNT50値(1.34〜150.38 ng per milliliter)で中和したが、LY-CoV555(市販名:bamlanivimab)は、デルタ変異体に対して初期株およびアルファ変異体に比べ著しく高いFRNT50値を示した。この結果は、デルタ変異体に対するbamlanivimabの活性がほぼ完全に消失し、LY-CoV016(販売名:etesevimab)、REGN10987(販売名:imdevimab)およびREGN10933(販売名:casirivimab)がこの変異体を阻害した先行研究と一致した(PMID: 34237773)。
Etesevimab(エテセビマブ)は、最も高いFRNT50値(50,000 ng/mL以上)でもオミクロン(NC928)、ベータ(HP01542)、ガンマ(TY7-503)変異体を中和することはなかった。
Bamlanivimab(バムラニビマブ)は、べーたおよびガンマ変異体に対する中和活性が低下し、オミクロンは中和されなかった。
Imdevimab(イムデビマブ)は、ベータおよびガンマ変異体に対して高い中和活性を示したが、オミクロンに対する中和活性は消失した。
Casirivimab(カシリビマブ)は、ベータ、ガンマおよびオミクロンに対して高いFRNT50値(187.69~14,110.70 ng/mL)で中和したが、オミクロンに対するFRNT50値はベータに対して18.6倍、ガンマに対して75.2倍高く、オミクロンに対するFRNT50値はベータに対する18.6倍とガンマに対する75倍となった。
COV2-2196(tixagevimab:チキサゲビマブ)、COV2-2130(cilgavimab:シルガビマブ)およびS309(sotrovimabとして販売されている薬剤の前駆体:ソトロビマブ前駆体)もベータ、ガンマおよびオミクロンに対して中和活性を保持していたが、これらのモノクローナル抗体のFRNT50値はオミクロンに対してベータまたはガンマよりも3.7〜198.2倍高く、オミクロンの方がガンマに対して高いことが明らかとなった。

試験したすべてのモノクローナル抗体の組み合わせ(エテセビマブとバムラニビマブ、イムデビマブとカシリビマブ、チキサゲビマブとシルガビマブ)は、初期株およびアルファ、デルタ変異体を中和した。エテセビマブ+バムラニビマブ併用療法では、ガンマに対する中和活性が著しく低下し、オミクロンおよびベータに対する中和活性が消失した。
イムデビマブ+カシリビマブ併用療法は、ベータおよびガンマに対する活性は維持されたが、オミクロンに対する阻害能が失われた。
チキサゲビマブ+シルガビマブ併用療法は、ベータ、ガンマおよびオミクロンを阻害したが、この組み合わせのFRNT50値は、オミクロンに対してベータおよびガンマよりもそれぞれ24.8倍から142.9倍高い値であった。

オミクロン変異体は、RNA依存RNAポリメラーゼ阻害剤(レムデシビル、モルヌピラビル)や主要プロテアーゼ阻害剤PF-07304814などの抗ウイルス剤の標的であるSARS-CoV-2のRNA依存RNAポリメラーゼおよび主要プロテアーゼに変異があり(preprint)、これらの薬剤はオミクロンに対して効果が低いことが懸念されている。そこで、3種類の抗ウイルス剤(レムデシビル、モルヌピラビル、PF-07304814)について、オミクロンに対する有効性を検討したところ、レムデシビル及びモルヌピラビルは、オミクロンに対する有効性が高く、PF-07304814は、オミクロンに対する有効性が低いことが明らかとなった。NC928、NC002、HP127、HP01542、TY7-503、UW5250に対して、それぞれの化合物のin vitro 50%阻害濃度(IC50)値を測定した。3種の化合物に対するオミクロンの感受性は、初期株と同様であった(レムデシビル、モルヌピラビルおよびPF-07304814のIC50値はそれぞれ1.2、0.8及び0.7倍異なる)。これらの結果から、オミクロン変異体感染者に対しては、これら3つの化合物すべてが有効である可能性が示唆された。

試験の限界:これらのモノクローナル抗体や抗ウイルス剤のオミクロン感染者治療に対する有効性に関する臨床データがないことが挙げられる。これらの抗ウイルス剤が本当にオミクロン変異体の感染に対して有効であるかどうかを判断するためには、さらなる研究が必要である。

結論:以上のことから、SARS-CoV-2のオミクロン変異体に対する治療法の選択肢があること、しかし、治療用モノクローナル抗体の中にはこの変異体に対して有効でないものもあることが明らかになった。

引用文献

Efficacy of Antibodies and Antiviral Drugs against Covid-19 Omicron Variant
Emi Takashita et al. PMID: 35081300 DOI: 10.1056/NEJMc2119407
N Engl J Med. 2022 Jan 26. doi: 10.1056/NEJMc2119407. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35081300/

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