論文のPICO
P:収縮期血圧150mmHg未満で少なくとも2種類の降圧薬を12ヵ月間服用している80歳以上の高血圧患者
※主治医から減薬に適していると判断された患者
I :介入としてSTOPPクライテリアに基づき降圧薬を1剤減らす(282例)
C:通常ケア(287例)
O:12週間の収縮期血圧150mmHg未満を維持できた患者率
※事前規定の非劣性マージンは相対リスク(RR)0.90
※血圧測定計(BpTRU)による測定2回目と3回目の平均値
T:予後、介入後12週間、非盲検(統計解析者は盲検)、ランダム化、非劣性試験
S:多施設共同(英国の69の一次ケア施設)、2017年4月〜2018年9月の間に試験登録し2019年1月まで追跡調査を実施
L:代用のアウトカム、非盲検、追跡期間が短期間、通常ケア群で13例が降圧薬を減量、非劣性マージンの決定方法(医師と患者の話し合い)、非劣性であるがITT解析が実施されていない(脱落が同程度であるため影響は少ないかもしれない)、BMI30kg/m2超の患者が20〜30%、フレイルスコアが低い。
資金提供:NIHR CLAHRC at Oxford Health NHS Foundation Trust(P2-501)およびNIHR School for Primary Care Research(335)
選択基準
【組入基準】
- 参加者は、試験に参加するためのインフォームド・コンセントを行う意思と能力がある。
- 80歳以上の男性または女性
- 臨床的収縮期血圧が150mmHg未満(ベースライン時のスクリーニング測定による臨床的血圧は1分間隔で測定した第2および第3の測定値の平均値として定義)。
- 血圧を下げるために2種類以上の降圧剤を試験開始前の少なくとも12ヵ月間処方されていること。
降圧薬:ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、カルシウム拮抗剤、サイアザイド類似およびサイアザイド系利尿剤、カリウム保持性利尿剤、ループ利尿剤、α遮断剤、β遮断剤、血管拡張性降圧剤、中枢作用性降圧剤、直接レニン阻害剤、アドレナリン神経遮断剤 - 試験開始前の少なくとも4週間、安定した用量の降圧剤を服用していること。
- 治験責任医師の見解として、多剤併用、併存疾患、服薬アドヒアランス不良、薬嫌い、虚弱体質などの理由により、減薬の効果が期待できると判断された。
- すべての治験要件に従うことができ、かつその意思がある(治験責任医師が判断)。
【除外基準】
- 左室収縮機能障害(LVSD)による心不全で、ACE阻害剤/ARB/β遮断剤/スピロノラクトンのみを投与されている者(いずれかを中止することは禁忌となる)。
- 心不全を発症しているが、発症以来心エコーを受けていない場合(LVSDが未診断であり、ACE阻害剤/ARBおよびβ遮断薬の必要性が高い可能性がある)。
- その他、治験責任医師が、本試験に参加することにより参加者が危険となる可能性がある、あるいは本試験の結果や参加者の本試験への参加能力に影響を与える可能性があると判断した重大な疾患や障害(例:末期疾患、家に閉じこもり、ベースラインおよびフォローアップ中にクリニックに出席できない)がある場合。
- 過去12ヵ月以内に心筋梗塞または脳卒中を患ったことがある。
- 過去12ヵ月以内に心筋梗塞または脳卒中を発症した者
- プライマリーケア以外で血圧を管理している者
- 能力不足のために同意を得られない者
- 二次性高血圧症または過去に加速型高血圧症もしくは悪性高血圧症を患ったことのある者。
- 過去4週間以内に降圧剤を含む他の研究に参加したことがある参加者。
批判的吟味
【ランダム割り付けされているか?】⭕️ タイトルや抄録より
【割り付けが隠蔽化されているか?】🔺 ウェブベースのランダム化アルゴリズムを用い、同意や減量する薬の選択に先立って割り付けを隠蔽していた(中央割り付け)。ただし、服薬する薬剤数の減少により割り付けは分かってしまう。
【盲検化されているか?】❌ オープンラベル
【ベースラインは同等か?】🔺 群間差がありそうな項目がある(通常ケア群で過体重、CKDが多い。男性率については誤植である可能性が高い)。関連する因子については概ね検討されている。
降圧薬の種類 | 介入群 | 通常ケア群 |
2 | 282例(100%) | 287例(100%) |
3 | 131例(46.5%) | 130例(45.3%) |
4以上 | 19例(6.7%) | 30例(10.5%) |
【ITT解析か?】🔺 mITT解析?(ランダム化後、主要解析で25例が除外されていることから非劣性試験の条件としては厳しくしている)、PP解析
【脱落は結果に影響しない程度か?】⭕️ 影響はなさそう。介入群17例(死亡2例を含む)、通常ケア群18例が主要解析から除外されている。追跡脱落は各4例。
【症例数は充分か?】⭕️ 結果は非劣性が認められている。また事前規定で540例のサンプルサイズが計算されており、通常ケア群では100%、薬物減量群では96%の参加者が、12週間後の追跡調査で収縮期血圧が150mmHg以下になると想定された。計算では、非劣性マージンを0.90、検出力を90%、片側有意水準を2.5%、追跡調査不能率を10%、群間のクロスオーバーによる希釈効果を10%と仮定した。非劣性を定義するエビデンスがないため、今後、医師と患者が減薬について話し合う際の参考にするため、0.90のマージンを選択した。この仮定のもと、非劣性が証明された場合、減薬された患者10例につき、9例が12週後のフォローアップでも血圧をコントロールできることになる。
結果は?
アウトカム達成 | 非達成 | ||
介入群 (265例) | 229 | 36 | 265 |
通常ケア群 (269例) | 236 | 33 | 269 |
465 | 69 | 534 |
項目名 | |
追跡期間 | 12週間 |
介入群の達成率 | 13.6% |
通常ケア群の達成率 | 12.3% |
相対リスク減少 (RR) | 0.904 |
相対リスク減少率 (RRR) | 10.6% |
絶対リスク減少率 (ARR) | 1.3% |
治療必要数 (NNT) | 77 |
✅まとめ✅ 複数の降圧薬を投与されている高齢者において、降圧薬1種類の減薬による12週間後の収縮期血圧のコントロールは通常の治療と比較して非劣性であった。
根拠となった論文の抄録
引用文献
Effect of Antihypertensive Medication Reduction vs Usual Care on Short-term Blood Pressure Control in Patients With Hypertension Aged 80 Years and Older: The OPTIMISE Randomized Clinical Trial
James P Sheppard et al. PMID: 32453368 PMCID: PMC7251449 DOI: 10.1001/jama.2020.4871
JAMA. 2020 May 26;323(20):2039-2051. doi: 10.1001/jama.2020.4871.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32453368/
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【ポリファーマシーは必要悪?(BMJ 2013:Free)】
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