SGLT2阻害薬による心血管および腎臓アウトカムへの影響は?
ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、心血管や腎臓アウトカムに好影響を与えますが、SGLT-2阻害薬クラス間におけるアウトカムの一貫性はまだ不明です。
そこで今回は、2型糖尿病患者を対象に、4種類のSGLT2阻害薬の心血管および腎臓への影響を評価するメタ解析の試験結果をご紹介します。
本試験では、2015年1月1日~2020年1月31日にPubMedで系統的な文献検索を行われました。アウトカムには、(1)心筋梗塞、脳卒中、またはCV死亡の主要有害事象の複合および各構成要素、(2)心不全による入院またはCV死亡(HHF/CV死亡)の複合および各構成要素、(3)腎臓の複合アウトカムの最初のイベントまでの時間が含まれました。
試験結果から明らかになったことは?
6件の試験から得られたデータは、2型糖尿病患者46,969例であり、そのうち31,116例(66.2%)が動脈硬化性の心血管(CV)疾患を有していました。全試験参加者の平均(SD)年齢は63.7(7.9)歳、男性は30,939例(65.9%)、白人は36,849例(78.5%)でした。各試験の参加者数の中央値は8,246例(範囲 4,401~17,160例)でした。
ハザード比(95%CI) | |
主要な有害CVイベント | 0.90(0.85〜0.95) Q統計、P=0.27 |
HHF/CV死亡 | 0.78(0.73〜0.84) Q統計、P=0.09 |
HHF | 0.68(0.61〜0.76) I2=0.0% |
CV死亡 | 0.85(0.78〜0.93) Q統計、P=0.02; I2=64.3% |
腎臓の転帰 | 0.62(0.56〜0.70) Q統計、P=0.09 |
全体として、SGLT2阻害剤は、主要な有害CVイベント(HR 0.90、95%CI 0.85〜0.95、Q統計、P=0.27)、HHF/CV死亡(HR 0.78、95%CI 0.73〜0.84、Q統計、P=0.09)、腎臓の転帰(HR 0.62、95%CI 0.56〜0.70、Q統計、P=0.09)のリスク低下と関連し、転帰との関連に有意な不均一性は認められませんでした。HHFに関連したリスク低下はすべての試験で一貫していましたが(HR 0.68、95%CI 0.61〜0.76、I2=0.0%)、CV死亡については、転帰との関連に有意な不均一性が認められました(HR 0.85、95%CI 0.78〜0.93、Q統計、P=0.02; I2=64.3%)。
動脈硬化性のCV疾患あり | なし | 交互作用 | |
ハザード比 (95%CI) | 0.89 (0.84〜0.95) | 0.94 (0.83〜1.07) | P=0.63 |
動脈硬化性のCV疾患の有無は、主要な有害CVイベントの転帰との関連を修飾しませんでした(それぞれ、HR 0.89、95%CI 0.84〜0.95; HR 0.94、95%CI 0.83〜1.07、交互作用P=0.63)、HHF/CV死亡(交互作用P=0.62)、HHF(交互作用P=0.26)、腎臓の転帰(交互作用P=0.73)では、動脈硬化性CV疾患の有病率による転帰の修正との関連は同様に見られませんでした。
コメント
SGLT2阻害薬による心血管・腎臓イベントの抑制効果は、大規模臨床試験の結果で示されていますが、結果の一貫性が得られていません。これは患者背景の違いが大きく影響している可能性があるものの、各薬剤の特性による可能性もあります。
さて、本試験結果によればSGLT2阻害剤は、主要な有害CVイベント、HHF/CV死亡、腎臓の転帰のリスク低下と関連し、転帰との関連に有意な不均一性は認められませんでした。動脈硬化性のCV疾患の有無は、主要な有害CVイベントの転帰との関連を修飾しませんでした。つまり、心血管イベントの既往がない一次予防に対する有効性も示されたことになります。2型糖尿病は心血管イベントや死亡リスクが高いことから、一次予防、二次予防の観点からSGLT2阻害薬の使用を考慮しても良いのかもしれません。
ただし2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の有効性は、いずれもプラセボ対照試験の結果に基づいています。ハードアウトカムについて他クラスの薬剤との直接比較試験は実施されていません。今後のエビデンス集積が待たれます。
✅まとめ✅ SGLT2阻害薬は主要な有害心血管イベントのリスク低下と関連していた。心不全による入院と腎臓リスク低減に関連していた。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、心血管や腎臓の転帰に好影響を与えるが、クラス間の転帰の一貫性はまだ不明である。
目的:2型糖尿病患者を対象に、4種類のSGLT2阻害薬の心血管および腎臓への影響を評価するメタ解析を実施する。
データソース:2015年1月1日~2020年1月31日にPubMedで系統的な文献検索を行った。
研究の選択:145件の記録が最初に確認され、137件は研究デザインや関心のあるテーマのために除外された。その結果、2型糖尿病患者を対象としたSGLT2阻害薬のランダム化プラセボ対照CVおよび腎臓アウトカム試験が計6件、9件の論文から寄与するデータが確認された。すべての解析は、これらの試験の総患者数を対象として行われた。
データの抽出と統合:PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analysis)ステートメントに従って、標準的なデータ検索と抽出を行った。データは固定効果モデルを用いて解析した。
主要アウトカムと測定法:アウトカムには、(1)心筋梗塞、脳卒中、またはCV死亡の主要有害事象の複合および各構成要素、(2)心不全による入院またはCV死亡(HHF/CV死亡)の複合および各構成要素、(3)腎臓の複合アウトカムの最初のイベントまでの時間が含まれた。
試験全体および特定のサブグループの転帰について、ハザード比(HR)と95%CIをプールし、試験間でメタ分析を行った。
結果:6件の試験から得られたデータは、2型糖尿病患者46,969例であり、そのうち31,116例(66.2%)が動脈硬化性のCV疾患を有していた。全試験参加者の平均(SD)年齢は63.7(7.9)歳、男性は30,939例(65.9%)、白人は36,849例(78.5%)であった。各試験の参加者数の中央値は8,246例(範囲 4,401~17,160例)だった。
全体として、SGLT2阻害剤は、主要な有害CVイベント(HR 0.90、95%CI 0.85〜0.95、Q統計、P=0.27)、HHF/CV死亡(HR 0.78、95%CI 0.73〜0.84、Q統計、P=0.09)、腎臓の転帰(HR 0.62、95%CI 0.56〜0.70、Q統計、P=0.09)のリスク低下と関連し、転帰との関連に有意な不均一性は認められなかった。
HHFに関連したリスク低下はすべての試験で一貫していたが(HR 0.68、95%CI 0.61〜0.76、I2=0.0%)、CV死亡については、転帰との関連に有意な不均一性が認められた(HR 0.85、95%CI 0.78〜0.93、Q統計、P=0.02; I2=64.3%)。
動脈硬化性のCV疾患の有無は、主要な有害CVイベントの転帰との関連を修飾しなかった(それぞれ、HR 0.89、95%CI 0.84〜0.95; HR 0.94、95%CI 0.83〜1.07、交互作用P=0.63)、HHF/CV死亡(交互作用P=0.62)、HHF(交互作用P=0.26)、腎臓の転帰(交互作用P=0.73)では、動脈硬化性CV疾患の有病率による転帰の修正との関連は同様に見られなかった。
結論と関連性:本メタ解析では、SGLT2阻害薬は主要な有害CVイベントのリスク低下と関連していた。さらに、CV死亡との関連においては、有意な不均一性が示唆された。SGLT2阻害剤の効果は、HHFと腎臓のリスク低減に関連しており、HHFのリスクに対する効果が最も一貫していたと考えられる。
引用文献
Association of SGLT2 Inhibitors With Cardiovascular and Kidney Outcomes in Patients With Type 2 Diabetes: A Meta-analysis
Darren K McGuire et al. PMID: 33031522 PMCID: PMC7542529 DOI: 10.1001/jamacardio.2020.4511
JAMA Cardiol. 2021 Feb 1;6(2):148-158. doi: 10.1001/jamacardio.2020.4511.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33031522/
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