血液透析患者における呼吸器系フルオロキノロン製剤は心臓突然死リスクと関連しますか?(米国レジストリ研究; JAMA Cardiol. 2021)

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レスピラトリーキノロンと心突然死リスクの関連性とは?

レスピラトリー(呼吸器系)フルオロキノロン系抗生物質は、QT間隔を延長する可能性のある最も一般的な薬剤の一つです。血液透析を受けている腎不全患者、すなわち心臓突然死(sudden cardiac death, SCD)のリスクが非常に高い患者においても、感染症による重篤な合併症リスクを回避するために呼吸器系フルオロキノロンが処方されています。

現在までに、血液透析患者における呼吸器系フルオロキノロン製剤の心臓に関する安全性を評価した大規模な集団別研究は行われていません。

そこで今回は、米国全体の腎不全レジストリの管理請求データを用いたレトロスペクティブコホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

本コホート研究には、透析患者264,968例および抗生物質治療エピソード626,322件が含まれていました。抗生物質治療エピソード626,322件の内訳として、呼吸器系フルオロキノロン系治療エピソードが251,726件(40.2%)、アモキシシリン系治療エピソードが374,596件(59.8%)でした。患者264,968例のうち、135,236例(51.0%)が男性で、平均(SD)年齢は61(15)歳でした。

加重ハザード比(HR)1.95
(95%CI 1.57~2.41
治療エピソード10万回あたりの加重リスク差(RD)44.0
(95%CI 31.0~59.2

呼吸器系フルオロキノロン系抗生物質治療は、アモキシシリン系抗生物質治療と比較して、SCDの5日間の相対的および絶対的リスクの高さが示されました。
☆加重HR 1.95、95%CI 1.57~2.41
☆治療エピソード10万回あたりの加重RD 44.0、95%CI 31.0~59.2

呼吸器系のフルオロキノロン系とアモキシシリン系による治療は、5日間の骨折リスクとは関連が認められませんでした。

コメント

米国の大規模なレジストリ研究の結果、血液透析患者における新規アモキシシリンベースの抗生物質治療と比較して、呼吸器系フルオロキノロン治療により心臓突然死の短期リスクが高くなる可能性が示されました。ただし、本試験は後向き研究であり、さらに死亡リスクの高い患者において呼吸器系フルオロキノロン製剤が使用されている可能性があるため、因果の逆転の可能性を排除しきれません。

また各薬剤の新規使用後5日間の心臓突然死という抽出条件も気にかかります。抗生剤による治療期間を考慮すると抗生剤投与後3、5、7、14日間の各期間における解析が必要であると考えられます。とはいえ、負のコントロールアウトカムとして設定された骨折については、いずれの薬剤によってもリスク増加が認められていません。

追試が必要ではありますが、血液透析患者における呼吸器系フルオロキノロンによる治療は、アモキシシリン治療と比較して心臓突然死リスクを増加させる可能性があります。

今後の試験結果に期待。

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✅まとめ✅ アモキシシリンベースの抗生物質治療と比較して、呼吸器系フルオロキノロン治療は、血液透析依存性腎不全患者の心臓突然死の短期リスクが高いことと関連していた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:呼吸器系フルオロキノロン系抗生物質は、QT間隔を延長する可能性のある最も一般的な薬剤の一つであり、血液透析依存の腎不全患者、すなわち心臓突然死(SCD)のリスクが非常に高い患者に処方されている。現在までに、血液透析患者における呼吸器系フルオロキノロン製剤の心臓安全性を評価した大規模な集団別研究は行われていない。

目的:血液透析依存性腎不全患者における呼吸器系フルオロキノロン系薬剤の心臓安全性を検討すること。

試験デザイン、設定および参加者:2007年1月1日から2016年12月31日までの米国全体の腎不全レジストリの管理請求データを用いて、アクティブコンパレータ・ニューユーザーデザインを用いて安全性を検討するレトロスペクティブコホート研究を実施し、施設での維持透析を受けている264,968例のメディケア受給者を対象とした。データ解析は2021年1月4日から8月16日まで行われた。

曝露:呼吸器系のフルオロキノロン(レボフロキサシンまたはモキシフロキサシン)対アモキシシリン系(アモキシシリンまたはアモキシシリンとクラブラン酸の併用)の抗生物質治療。

主要アウトカムと評価:外来で試験用抗生物質の投与を開始してから5日以内の心臓突然死(SCD)。治療加重の逆確率生存モデルにより、ハザード比(HR)、リスク差(RD)および対応する95%CIを推定した。SCD以外の原因による死亡は競合イベントとして扱った。骨折は負のコントロールアウトカムとした。

結果:264,968例の透析患者と626,322件の抗生物質治療エピソードが含まれていた。その内訳は、251,726件の呼吸器系フルオロキノロン系治療エピソード(40.2%)と374,596件のアモキシシリン系治療エピソード(59.8%)であった。患者264,968例のうち、135,236例(51.0%)が男性で、平均(SD)年齢は61(15)歳だった。呼吸器系フルオロキノロン系抗生物質治療は、アモキシシリン系抗生物質治療と比較して、SCDの5日間の相対的および絶対的リスクが高かった(加重HR 1.95、95%CI 1.57~2.41;治療エピソード10万回あたりの加重RD 44.0、95%CI 31.0~59.2)。呼吸器系のフルオロキノロン系とアモキシシリン系の抗生物質治療は、5日間の骨折リスクとは関連しなかった。

結論と関連性:本研究では、アモキシシリンベースの抗生物質治療と比較して、呼吸器系フルオロキノロン治療は、血液透析依存性腎不全患者のSCDの短期リスクが高いことと関連していた。この知見は、呼吸器系フルオロキノロン製剤とアモキシシリン系抗生物質の使用の間の決定は、処方者が臨床上の利点と潜在的な心疾患のリスクの両方を考慮して、個別に行うべきであることを示唆している。

引用文献

Analysis of Respiratory Fluoroquinolones and the Risk of Sudden Cardiac Death Among Patients Receiving Hemodialysis
Magdalene M Assimon et al. PMID: 34668928 DOI: 10.1001/jamacardio.2021.4234
JAMA Cardiol. 2021 Oct 20. doi: 10.1001/jamacardio.2021.4234. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34668928/

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