SARS-CoV-2のデルタ変異株に対するCOVID-19ワクチンの有効性は?
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ変異株(delta variant、Phylogenetic Assignment of Named Global Outbreak(Pango)系統指定B.1.617.2)は、2020年10月に初めて報告され、世界180ヵ国以上に広がっています(WHO)。
現在利用可能なワクチンがこの変異株に対してどの程度防御できるかについて懸念が示されました。2021年1月以降、ロバート・コッホ研究所(RKI)は、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がコーディネートする国家予防接種技術諮問グループ(NITAGs)ネットワークと協力して、欧州連合(EU)で認可されているコロナウイルス病(COVID-19)ワクチンの有効性、効果、安全性に関するlivingシステマティックレビューを実施しています(PROSPERO登録:CRD42020208935)(PMID: 34269175)。
そこで今回は、EUで認可されているCOVID-19ワクチンが提供するデルタ変異株に関する有効性と防御期間に関する結果を紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
プールされたCOVID-19ワクチンの有効性(VE)は、無症候性感染に対して63.1%(95%信頼区間[CI] 40.9〜76.9、I2 = 93%)、症候性感染に対して75.7%(95%CI 69.3〜80.8、I2 = 91.9%)、入院に対して90.9%(95%CI 84.5〜94.7、I2 = 18.5%)でした。
α型と比較して、軽度のアウトカムに対するVEは10〜20%減少しましたが、重度のCOVID-19に対するVEは完全に維持されていました。
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SARS-CoV-2のアルファ変異株の流行からデルタ変異株の流行へ変わってきています。COVID-19ワクチンは、アルファ変異株の情報をもとに作製されていることから、変異株への有効性に関する情報が求められています。
さて、本試験結果によれば、アルファ株と比較してデルタ株に対するCOVID-19ワクチンの有効性は10〜20%減少しました。とはいえ、SARS-CoV-2感染による入院予防については高い有効性が示されました。症候性感染、無症候性感染に対する有効性の結果については、異質性が高いと考えられます。今後の報告により結果が変わる可能性は充分にあります。
今後の試験結果に期待。
✅まとめ✅ 現在、EUで認可されているCOVID-19ワクチンは、デルタ型のSARS-CoV-2感染症の予防に中程度から高度の効果を有していることが示されており、COVID-19の重症集団に対する有効性も高く維持されていた。
根拠となった試験の抄録
背景:デルタ型はSARS-CoV-2の優勢株となっている。
方法:異なるエンドポイントに対するCOVID-19ワクチンの有効性(VE)を調査した研究17件で確認されたVEに関するエビデンスをまとめた。
結果:プールされたVEは、無症候性感染に対して63.1%(95%信頼区間[CI] 40.9〜76.9、I2 = 93%)、症候性感染に対して75.7%(95%CI 69.3〜80.8、I2 = 91.9%)、入院に対して90.9%(95%CI 84.5〜94.7、I2 = 18.5%)であった。
α型と比較して、軽度のアウトカムに対するVEは10〜20%減少したが、重度のCOVID-19に対するVEは完全に維持された。
バイアスリスク:研究14件は中程度のバイアスリスクを有しており、研究3件は重大なバイアスリスクを有していた。主な制限事項は、交絡因子の調整が不完全であったり、調整していなかったことである。出版バイアスの証拠は検出されなかった。
結論:現在、EUで認可されているCOVID-19ワクチンは、デルタ型のSARS-CoV-2感染を予防する効果が中程度から高度とされており、COVID-19の重症例に対する有効性は依然として高かった。
キーワード:COVID-19、Deltaバリアント、SARS-CoV-2、システマティックレビュー、ワクチン接種、ワクチン効果、懸念されるバリアント。
引用文献
Effectiveness of COVID-19 vaccines against SARS-CoV-2 infection with the Delta (B.1.617.2) variant: second interim results of a living systematic review and meta-analysis, 1 January to 25 August 2021
Thomas Harder et al. PMID: 34651577 DOI: 10.2807/1560-7917.ES.2021.26.41.2100920
Euro Surveill. 2021 Oct;26(41). doi: 10.2807/1560-7917.ES.2021.26.41.2100920.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34651577/
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