リバーロキサバンは他の直接経口抗凝固薬に比べて消化管出血の発生率が高い(アイスランド人口ベースコホート研究; Ann Intern Med. 2021)

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直接経口抗凝固薬(DOAC)により出血リスクは異なるのか?

直接経口抗凝固薬(DOAC)は比較的新しい治療薬であり、現在までに4種類の薬剤が日本で承認されています。いずれの薬剤も対照薬としてワルファリンが用いられており、有効性だけでなく消化管出血(GIB)発生率についても広く比較されています。しかし、異なるDOAC間のGIB発生率を比較した集団ベースの研究は限られています。

そこで今回はアイスランドで実施された全国規模の人口ベースのコホート研究において、アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン新規使用者におけるGIB発生率を比較した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

合計で、アピキサバンを投与された2,157例、ダビガトランを投与された494例、リバーロキサバンを投与された3,217例の患者を比較しました。

全体集団リバーロキサバンアピキサバン
消化管出血(GIB)発生率3.2件/100人・年2.5件/100人・年
  ハザード比[HR] 1.42(95%CI 1.04~1.93
重大なGIB発生率1.9件/100人・年1.4件/100人・年
  ハザード比[HR] 1.50(95%CI 1.00~2.24)

リバーロキサバンはアピキサバンと比較して、GIB(100人年あたり3.2件 vs. 2.5件、ハザード比[HR] 1.42[95%CI 1.04~1.93])および重大なGIB(100人年あたり1.9件 vs. 1.4件、HR 1.50[95%CI 1.00~2.24])の発生率の高さが示されました。リバーロキサバンもダビガトランと比較してGIB発生率が高く、点推定値は同様でしたが、95%CIは広く、null効果の可能性も含まれていました。

心房細動患者集団GIB発生率
リバーロキサバン vs. アピキサバンHR 1.40(95%CI 1.01~1.94
リバーロキサバン vs. ダビガトランHR 2.04(95%CI 1.17~3.55

心房細動患者のみを対象とした場合、リバーロキサバンは、アピキサバン(HR 1.40[95%CI 1.01~1.94])やダビガトラン(HR 2.04[95%CI 1.17~3.55])よりも、全体のGIB発生率の高さが示されました。

両解析において、ダビガトランはリバーロキサバンよりも上部GIBの発生率が低いことが示されました。

コメント

薬剤の承認申請の際、ランダム化比較試験1件以上の実施が求められます。特に英国、米国では2件以上の実施を製薬メーカーに求めています。ランダム化比較試験では、有効性・安全性の検証を目的とされていますが、厳格な試験プロトコルに基づき実施されたランダム化比較試験では、安全性の検証におけるリスクの過小評価が問題となります。そこで、特に安全性の検証については、市販後の大規模な追跡調査が実施されています。人口ベースコホート研究は、国際共同や多施設共同研究と比較して、国や地域が限定されてしまいますが、市販後の安全性検証において重要な試験であるといえます。

さて、本試験結果によれば、ダビガトランやアピキサバンと比較して、リバーロキサバンの新規使用により消化管出血の発生が高いことが示されました。

あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、実臨床におけるDOAC間の比較を検討した貴重な試験です。出血リスクの高い患者においては、リバーロキサバンよりも他のDOACを優先した方が良いのかもしれません。

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✅まとめ✅ リバーロキサバンは、治療適応にかかわらず、アピキサバンおよびダビガトランよりも高い消化管出血の発生率と関連していた。

根拠となった試験の抄録

背景:直接経口抗凝固薬(DOAC)とワルファリンの消化管出血(GIB)発生率は広く比較されている。しかし、異なるDOAC間のGIB発生率を比較した集団ベースの研究は限られている。

目的:アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンのGIB発生率を比較する。

試験デザイン:全国規模の人口ベースのコホート研究

試験設定:アイスランド国立大学病院(Landspítali)およびアイスランドの4つの地域病院。

試験対象者:2014年から2019年までのアピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンの新規使用者。

測定方法:GIBの発生率を、逆確率加重法、Kaplan-Meier生存推定値、Cox回帰を用いて比較した。

結果:合計で、アピキサバンを投与された2,157例、ダビガトランを投与された494例、リバーロキサバンを投与された3,217例の患者を比較した。リバーロキサバンはアピキサバンと比較して、GIB(100人年あたり3.2件 vs. 2.5件、ハザード比[HR] 1.42[95%CI 1.04~1.93])および主要なGIB(100人年あたり1.9件 vs. 1.4件、HR 1.50[95%CI 1.00~2.24])の発生率が高かった。リバーロキサバンもダビガトランと比較してGIB発生率が高く、点推定値は同様であったが、95%CIは広く、null効果の可能性も含まれていた。心房細動患者のみを対象とした場合、リバーロキサバンは、アピキサバン(HR 1.40[95%CICI 1.01~1.94])やダビガトラン(HR 2.04[95%CI 1.17~3.55])よりも、全体のGIB発生率が高かった。両解析において、ダビガトランはリバーロキサバンよりも上部GIBの発生率が低かった。

試験の限界:測定不能な交絡と小規模なサブグループ解析。

結論:リバーロキサバンは、治療適応にかかわらず、アピキサバンおよびダビガトランよりも高いGIB発生率と関連していた。

主要な資金源:アイスランド研究センターおよびアイスランド国立大学病院(Landspítali-The National University Hospital of Iceland)。

引用文献

Rivaroxaban Is Associated With Higher Rates of Gastrointestinal Bleeding Than Other Direct Oral Anticoagulants : A Nationwide Propensity Score-Weighted Study
Arnar B Ingason et al. PMID: 34633836 DOI: 10.7326/M21-1474
Ann Intern Med. 2021 Oct 12. doi: 10.7326/M21-1474. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34633836/

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