妊婦における新型コロナワクチン(BNT162b2)接種の安全性・有効性は?(後向きコホート研究; JAMA. 2021)

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妊婦に対する新型コロナワクチン(Pfizer-BioNTech社製)の安全性・有効性は?

新型コロナウイルスに対するBNT162b2メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(Pfizer-BioNTech社製)は有効性・安全性が検証され、様々な国で承認されています。12歳以上の小児・青年・成人に対して使用されています。

一方で妊娠中の有効性と安全性に関するデータは、観察研究の結果が報告されているものの、第3相試験では妊婦が除外されているため、現在のところ充分に検討されていません。

そこで今回は、妊婦におけるBNT162b2 mRNAワクチン接種とSARS-CoV-2感染リスクとの関連について後ろ向きに検討したイスラエルの研究結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

イスラエルの大規模な国策医療機関の妊婦レジストリー内で行われたレトロスペクティブコホート研究には、ワクチン接種を受けた女性7,530例とマッチさせたワクチン未接種の女性7,530例が含まれ、それぞれ46%と33%が第2および第3期の妊娠期間中であり、平均年齢は31.1歳(SD 4.9歳)でした。

主要アウトカム初回ワクチン接種後28日以上経過した時点でのポリメラーゼ連鎖反応で検証されたSARS-CoV-2感染)の追跡調査の中央値は37日(四分位範囲 21~54日、範囲 0~70日)でした。

ワクチン接種群非接種群
SARS-CoV-2感染者数118例202例
感染者で症状を有していた人数88/105例(83.8%)
P≧0.99
149/179例(83.2%)

SARS-CoV-2感染者は、ワクチン接種群で118例、非接種群で202例であり、感染した女性で症状を有していたのは、ワクチン接種群で88/105例(83.8%)、ワクチン非接種群で149/179例(83.2%)でした(P≧0.99)。28~70日のフォローアップ期間中の感染症は、ワクチン接種群で10件、非接種群で46件でした。

ワクチン接種群非接種群群間の絶対差
感染の危険性0.33%1.64%1.31%
(95%CI 0.89〜1.74%)
調整後のハザード比0.22%
(95%CI 0.11〜0.43

感染の危険性は、ワクチン接種群と非接種群でそれぞれ0.33%と1.64%であり、絶対的な差は1.31%(95%CI 0.89〜1.74%)、調整後のハザード比は0.22%(95%CI 0.11〜0.43)でした。

ワクチン関連の有害事象は患者68例から報告され、重篤なものはありませんでした。
最も多く報告された症状は、頭痛(n=10、0.1%)、全身の脱力感(n=8、0.1%)、非特異的な痛み(n=6、0.1%未満)。腹痛(n=5、0.1%未満)でした。

コメント

妊婦や授乳婦については、倫理的な側面から臨床試験を行うことが難しく、薬剤やワクチンの安全性・安全性のデータが限られています。これは、新型コロナワクチンについても同様であり、研究結果の集積が待たれます。

さて、イスラエルで行われた大規模な国策医療機関の妊婦レジストリー内で行われたレトロスペクティブコホート研究の結果によれば、新型コロナ感染の危険性は、ワクチン接種群0.33%、非接種群1.64%であり、調整後ハザード比は0.22%(95%CI 0.11〜0.43)でした。

本試験はイスラエルのみで行われた後向きコホート研究の結果であることから、有効性の値については結果を割り引いて捉えた方が良いと考えられます。とはいえ、15,000例以上を対象とした大規模研究の結果であることからワクチンの安全性・有効性について傾向を捉えられる貴重な報告であると考えます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 妊婦を対象とした後向きコホート研究の結果、BNT162b2 mRNAワクチンを接種は、ワクチンを接種しない場合と比較して、SARS-CoV-2感染のリスクを有意に低下させるかもしれない。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:BNT162b2メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(Pfizer-BioNTech社)の妊娠中の有効性と安全性に関するデータは、妊娠中の女性が第3相試験から除外されたため、現在のところ不足している。

目的:妊娠中の女性におけるBNT162b2 mRNAワクチンの接種とSARS-CoV-2感染リスクとの関連を評価すること。

試験デザイン、設定および参加者:本研究は、イスラエルの大規模な国策医療機関の妊娠登録内で行われたレトロスペクティブコホート研究である。2020年12月19日から2021年2月28日までに初回投与でワクチンを接種した妊婦と、ワクチンを接種していない妊婦を、年齢、妊娠期間、居住地域、人口サブグループ、妊娠期間、インフルエンザの予防接種状況で1:1にマッチさせた。フォローアップは2021年4月11日に終了した。

曝露:被験者は、BNT162b2 mRNAワクチンを接種したことで定義した。比較可能性を維持するために、非曝露の女性がその後ワクチンを接種した場合は、マッチしたペアとともに曝露から10日後に打ち切られた。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、初回ワクチン接種後28日以上経過した時点でのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で検証されたSARS-CoV-2感染であった。

結果:このコホートには、ワクチン接種を受けた女性7,530例とマッチさせたワクチン未接種の女性7,530例が含まれ、それぞれ46%と33%が第2および第3の妊娠期間中であり、平均年齢は31.1歳(SD 4.9歳)であった。
主要アウトカムの追跡調査の中央値は37日(四分位範囲 21~54日、範囲 0~70日)であった。SARS-CoV-2感染者は、ワクチン接種群で118例、非接種群で202例であった。感染した女性のうち、症状があったのは、ワクチン接種群では105例中88例(83.8%)、ワクチン未接種群では179例中149例(83.2%)であった(P≧0.99)。28~70日のフォローアップ期間中の感染症は、ワクチン接種群で10件、非接種群で46件であった。
感染症のハザードは、ワクチン接種群と非接種群でそれぞれ0.33%と1.64%であり、絶対的な差は 1.31%(95%CI 0.89〜1.74%)、調整後のハザード比は0.22%(95%CI 0.11〜0.43)であった。
ワクチン関連の有害事象は患者68例から報告され、重篤なものはなかった。最も多く報告された症状は、頭痛(n=10、0.1%)、全身の脱力感(n=8、0.1%)、非特異的な痛み(n=6、0.1%未満)。腹痛(n=5、0.1%未満)であった。

結論と関連性:妊婦を対象としたこのレトロスペクティブコホート研究では、BNT162b2 mRNAワクチンを接種することは、ワクチンを接種しない場合と比較して、SARS-CoV-2感染のリスクを有意に低下させることと関連していた。研究結果の解釈は、観察的デザインによって制限されている。

引用文献

Association Between BNT162b2 Vaccination and Incidence of SARS-CoV-2 Infection in Pregnant Women
Inbal Goldshtein et al. PMID: 34251417 PMCID: PMC8276131 (available on 2022-01-12) DOI: 10.1001/jama.2021.11035
JAMA. 2021 Aug 24;326(8):728-735. doi: 10.1001/jama.2021.11035.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34251417/

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