血液透析患者におけるBNT162b2ワクチンによるSARS-CoV-2抗体反応の評価(単一施設コホート研究; JAMA Netw Open. 2021)

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維持血液透析患者におけるCOVID-19 mRNAワクチンの効果は?

SARS-CoV-2とそれに続くCOVID-19が世界的な大流行を引き起こしています。最も深刻な影響を受けているのは、生命維持のために少なくとも週3回は施設に通わなければならない維持血液透析患者であり、感染のリスクは一般集団の5倍にもなることが報告されています(PMID: 33542093)。公衆衛生指導を遵守しているにもかかわらず、透析施設でアウトブレイクが発生しています(PMID: 32681983)。さらに、血液透析を受けている患者は、COVID-19が重症化するリスクが高く(PMID: 33542093)、カナダのオンタリオ州では、COVID-19に感染した慢性血液透析患者の63%が入院を必要とし、29%が死亡しています(PMID: 33752804)。

血液透析を受けている患者は、B型肝炎ワクチン接種時に観察されたように、一般集団と比較して、ワクチン接種に対する免疫反応が低下することがよくあります(PMID: 31585683)。 また、血液透析を受けている患者を対象としたCOVID-19の自然感染に関する研究では、3ヵ月後には抗体濃度が低下していることが分かっており、血液透析を受けている患者では充分な予防接種反応が得られない可能性があります(PMID: 33208402)。さらに、BNT162b2ワクチンのランダム化臨床試験では、腎臓病患者はほとんど含まれていませんでした(PMID: 33301246)。したがって、このような高リスク集団におけるワクチンの免疫原性に関するデータは不足しています。

ランダム化臨床試験では、BNT162b2ワクチンは21日間隔で2回接種されていましたが、ワクチン不足のため、英国やカナダなど一部の国では、一般住民への初回接種を優先し、2回目の接種を3~4カ月遅らせており、1回接種と2回接種を比較するための自然な実験となっています(PMID: 33737404)。そこで今回は、血液透析患者を対象にCOVID-19ワクチン接種による体液反応を調べるため、1回と2回のワクチン接種後のSARS-CoV-2免疫グロブリンG(IgG)抗体レベルを測定する前向き観察コホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

維持透析を受けている142例のうち94例(66%)が男性で、年齢中央値は72(四分位範囲 62〜79)歳でした。SARS-CoV-2 IgG抗体は、公衆衛生政策の変更によりワクチン接種1回を受けた患者66例、ワクチン接種2回を受けた患者76例、ワクチン接種2回を受けた医療従事者35例で測定されました。

ベースライン時にSARS-CoV-2の自然感染を示唆する検出可能なヌクレオカプシドタンパク(抗NP)が142例中15例(11%)に検出され、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応検査でCOVID-19の感染が確認された患者は3例だけでした。さらに2例の患者が、ワクチン接種2回後にCOVID-19に感染しました。

BNT162b2の接種1回を受けた患者66例では、投与後28日までに抗スパイクで53例(80%)抗RBDで36例(55%)にセロコンバージョンが認められましたが、COVID-19生存者の回復期血清中の抗体レベルが中央値に達したと定義される頑健な反応は、COVID-19生存者の回復期血清中の抗スパイクで15例(23%)抗RBDで4例(6%)のみに認められました。

BNT162b2ワクチンを2回接種した患者集団では、2回目の接種後2週間までに、抗スパイクでは72例中69例(96%)、抗RBDでは72例中63例(88%)にセロコンバージョンが起こり、回復期の血清レベルの中央値に達したのは、抗スパイクでは72例中52例(72%)抗RBDでは72例中43例(60%)でした。一方、医療従事者35例全員が、2回目の投与から2~4週間後に回復期の血清中に見られる抗スパイクおよび抗RBDの中央値を超えました。

※セロコンバージョン:抗原が陰性化し、抗体が抗体が陽性化すること。

コメント

血液透析患者では充分な予防接種反応が得られない可能性が報告されています。本研究の結果から、COVID-19 mRNAワクチンであるBNT162b2(ファイザー・ビオンテック社製)の接種による免疫原性は、一般集団の医療従事者と比較して低いことが明らかとなりました。ただし、ワクチン接種を2回することにより、抗スパイクで23%から72%抗RBDで6%から60%に増加しています。

単施設かつ小規模な研究結果であることから、追試が待たれるところではありますが、他のワクチンと同様、血液透析患者においてはmRNAワクチン接種後の免疫原性が、一般集団と比較して低いことが明らかとなりました。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 維持血液透析患者ではBNT162b2 COVID-19ワクチン接種による28日後の免疫原性が低かった。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:血液透析を受けている患者はCOVID-19に関連する死亡率が高く、この患者集団はしばしば予防接種に対する反応が悪い。COVID-19ワクチンのランダム化臨床試験には、腎臓病患者はほとんど含まれていない。したがって、この集団におけるワクチンの免疫原性は不確かである。

目的:慢性血液透析患者にBNT162b2 COVID-19ワクチンを1回と2回接種した場合のSARS-CoV-2抗体反応を、対照となる医療従事者および回復期血清と比較して評価する。

試験デザイン、設定および参加者:2021年2月2日~4月17日に、カナダ・オンタリオ州トロントで前向きの単一施設コホート研究を実施した。参加者は、センターで血液透析を受けている患者142例と、対照となる医療従事者35例であった。

曝露:BNT162b2(Pfizer-BioNTech)COVID-19 ワクチン接種

主要アウトカムと測定法:SARS-CoV-2のスパイクタンパク(抗スパイク)、受容体結合ドメイン(抗RBD)、ヌクレオカプシドタンパク(抗NP)に対するIgG抗体

結果:維持透析を受けている142例のうち94例(66%)が男性で、年齢中央値は72(四分位範囲 62〜79)歳であった。SARS-CoV-2 IgG抗体は、公衆衛生政策の変更により1回のワクチン接種を受けた患者66例、2回のワクチン接種を受けた患者76例、2回のワクチン接種を受けた医療従事者35例で測定された。
ベースライン時にSARS-CoV-2の自然感染を示唆する検出可能な抗NPが142例中15例(11%)に検出され、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応検査でCOVID-19の感染が確認された患者は3例だけであった。さらに2例の患者が、2回のワクチン接種後にCOVID-19に感染した。
BNT162b2の単回投与を受けた66例の患者では、投与後28日までに抗スパイクで53例(80%)、抗RBDで36例(55%)にセロコンバージョンが認められたが、COVID-19生存者の回復期血清中の抗体レベルが中央値に達したと定義される頑健な反応は、COVID-19生存者の回復期血清中の抗スパイクで15例(23%)、抗RBDで4例(6%)のみに認められた。BNT162b2ワクチンを2回接種した患者では、2回目の接種後2週間までに、抗スパイクでは72例中69例(96%)、抗RBDでは72例中63例(88%)にセロコンバージョンが起こり、回復期の血清レベルの中央値に達したのは、抗スパイクでは72例中52例(72%)、抗RBDでは72例中43例(60%)であった。一方、医療従事者35例全員が、2回目の投与から2~4週間後に回復期の血清中に見られる抗スパイクおよび抗RBDの中央値を超えた。

結論と関連性:本研究は、血液透析患者におけるBNT162b2ワクチンの単回接種から28日後の免疫原性が低いことを示唆しており、推奨されるワクチン接種スケジュールの順守を支持し、これらのリスクの高い人々における2回目の接種の遅延を避けることができる。

引用文献

Evaluation of the SARS-CoV-2 Antibody Response to the BNT162b2 Vaccine in Patients Undergoing Hemodialysis

Kevin Yau et al. PMID: 34473256 PMCID: PMC8414193 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2021.23622
JAMA Netw Open. 2021 Sep 1;4(9):e2123622. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.23622.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34473256/

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