高齢心房細動患者の経口抗凝固薬による急性腎障害のリスクはVKAとDOACで異なりますか?(人口ベースコホート研究; Clin J Am Soc Nephrol. 2021)

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高齢の心房細動患者における抗凝固薬使用は急性腎障害(AKI)リスクとなるのか?

ビタミンK拮抗薬または直接経口抗凝固薬のいずれかによる抗凝固療法は急性腎障害(AKI)の発生リスクと関連する可能性が報告されています。しかし、経口抗凝固薬とAKI発生リスクについての比較検討は充分になされていません。

そこで今回は、心房細動の高齢者における直接経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)あるいはワルファリンと、AKI発生リスクについて比較したコホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

経口直接抗凝固薬
vs. ワルファリン
加重ハザード比(95%信頼区間)
ダビガトラン0.65(0.53~0.80)
リバーロキサバン0.85(0.73~0.98)
アピキサバン0.81(0.72~0.93)

各経口直接抗凝固薬は、ワルファリンと比較してAKIリスクを有意に低下させました。
 ダビガトラン:加重ハザード比 0.65、95%信頼区間 0.53~0.80
 リバーロキサバン:加重ハザード比 0.85、95%信頼区間 0.73~0.98
 アピキサバン:加重ハザード比 0.81、95%信頼区間 0.72~0.93

サブグループ解析では、各直接経口抗凝固薬に関連するAKIのリスク低下は、eGFRの各層で一貫していた。国際標準化比測定値の割合が56%以下であったワルファリン使用者と比較して、各経口直接抗凝固薬使用者のAKIのリスクは有意に低いことが示された。

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高齢者においては、生理機能の低下が懸念されることから、特に腎排泄型の薬剤の使用に注意を要します。ワルファリンだけでなく、一部の経口直接抗凝固薬(DOAC)は重篤な腎機能障害を有する患者においては投与禁忌です。

さて、本試験結果によれば、DOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)の使用開始は、ワルファリンと比較して、AKIのリスクを低下しました。ただし、本試験はコホート研究であるため、あくまでも相関関係が示されたにすぎません。またAKIリスクの高い患者に対してワルファリンが投与されていた可能性も排除できません。

ランダム化比較試験の実施が求められます。今後の試験結果に期待。

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✅まとめ✅ 高齢心房細動患者において、直接経口抗凝固薬の使用開始は、ワルファリンと比較して急性腎障害のリスクが低下するかもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景と目的:ビタミンK拮抗薬または直接経口抗凝固薬のいずれかによる抗凝固療法はAKIと関連する可能性がある。我々の目的は、直接経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)をワルファリンと比較して新たに処方された心房細動の高齢者におけるAKIのリスクを評価することである。

試験デザイン、設定、参加者および測定方法:人口ベースのコホート研究で、2009~2017年にワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンを処方されたカナダ・オンタリオ州の66歳以上の心房細動の外来患者20,683例を対象とした。
ワルファリンと比較して3種類の経口直接抗凝固薬のそれぞれを投与された患者のベースライン特性のバランスをとるために、各経口直接抗凝固薬による治療について導き出された傾向スコアに基づいて、治療の逆確率による重み付けを行った。
処方された抗凝固薬と目的とするアウトカムとの関連を比較するために、重み付けされた集団でCox比例ハザード回帰を行った。暴露は、ワルファリンまたは直接経口抗凝固薬の1つを外来で処方されたことであった。
主要アウトカムは、AKI を伴う入院とし、Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)のしきい値を用いて定義した。事前に規定されたサブグループ解析は、eGFRのカテゴリー別、および抗凝固療法の有効なマーカーである国際標準化比の測定値が範囲内にある割合別に行われた。

結果:各経口直接抗凝固薬は、ワルファリンと比較してAKIリスクを有意に低下させた。
 ダビガトランの加重ハザード比 0.65、95%信頼区間 0.53~0.80
 リバーロキサバンの加重ハザード比 0.85、95%信頼区間 0.73~0.98
 アピキサバンの加重ハザード比 0.81、95%信頼区間 0.72~0.93
サブグループ解析では、各直接経口抗凝固薬に関連するAKIのリスク低下は、eGFRの各層で一貫していた。国際標準化比測定値の割合が56%以下であったワルファリン使用者と比較して、各経口直接抗凝固薬使用者のAKIのリスクは有意に低かった。

結論:直接経口抗凝固薬は、ワルファリンと比較してAKIのリスクが低かった。

キーワード:急性腎不全、抗凝固薬、心房細動

引用文献

The Risk of Acute Kidney Injury with Oral Anticoagulants in Elderly Adults with Atrial Fibrillation
Ziv Harel et al. PMID: 34407990 DOI: 10.2215/CJN.05920421
Clin J Am Soc Nephrol. 2021 Aug 18;CJN.05920421. doi: 10.2215/CJN.05920421. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34407990/

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