急性心不全患者におけるダパグリフロジンの有効性と安全性はどのくらい?(Open-RCT; DICTATE-AHF試験; J Am Coll Cardiol. 2024)

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急性心不全に対するダパグルフロジンの効果はどのくらい?

急性心不全(AHF)入院中の主な目標は、うっ血およびガイドラインに基づいた薬物療法(GDMT)の最適化です。利尿薬や他のGDMTとは異なり、ダパグリフロジンの早期投与はAHFの両目標を達成しうる。

目的:著者らは、AHFにおけるダパグリフロジンの早期投与開始の利尿効果と安全性を評価することを目的とした。

方法:多施設共同非盲検試験において、高ボレミア血症AHFで来院後24時間以内の患者240例を、ダパグリフロジン10mgを1日1回投与する群と、5日目または退院まで利尿薬の漸増をプロトコール化した構造化通常ケア群にランダムに割り付けた。
主要アウトカムであるループ利尿薬累積投与量あたりの累積体重変化で表される利尿効率は、ベースライン体重で補正した比例オッズモデルを用いて治療割り付け間で比較した。副次的アウトカムと安全性アウトカムは盲検化された委員会によって判定された。

試験結果から明らかになったことは?

オッズ比 OR
(95%CI)
利尿効率OR 0.65
0.41〜1.02
P=0.06

利尿効率については、ダパグリフロジンと通常ケアの間に差はありませんでした(OR 0.65、95%CI 0.41〜1.02;P=0.06)。

ダパグリフロジンはループ利尿薬の投与量を減らし(560mg[Q1〜Q3:260〜1,150mg] vs. 800mg[Q1〜Q3:380〜1,715mg];P=0.006)、通常治療と同等の体重減少を達成するための静脈内利尿薬の増量は少ないことが示されました(P≦0.05)。

ダパグリフロジンの早期投与開始により、糖尿病、腎、心血管の安全性イベントは増加しませんでした。ダパグリフロジンは24時間尿量中央値(P=0.03)および尿量中央値(P=0.005)の改善と関連し、試験期間中の退院を早めました。

コメント

急性心不全(AHF)入院中の主な目標である、うっ血とガイドラインに基づいた薬物療法(GDMT)の最適化については、まだまだ未充足な領域です。SGLT-2阻害薬であるダパグリフロジンが有用である可能性がありますが、充分に検証されていません。

さて、非盲検ランダム化比較試験の結果、主要評価項目である利尿効率について、ダパグリフロジンと通常ケアの間に差はありませんでした。一方、ダパグリフロジンは利尿薬の投与量を減らしつつ、尿量の改善を示したことから、GDMTの最適化を実現できる可能性が示唆されました。

主要評価項目が未達であった要因として、症例数が少なかった点が挙げられます。信頼区間は広いものの、点推定値はリスク減少傾向を示しています。したがって、追加検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 非盲検ランダム化比較試験の結果、主要評価項目である利尿効率について、ダパグリフロジンと通常ケアの間に差はなかった。一方、ダパグリフロジンは利尿薬の投与量を減らしつつ、尿量の改善を示した。

根拠となった試験の抄録

背景:急性心不全(AHF)入院中の主な目標は、うっ血とガイドラインに基づいた薬物療法(GDMT)の最適化である。利尿薬や他のGDMTとは異なり、ダパグリフロジンの早期投与はAHFの両目標を達成しうる。

目的:著者らは、AHFにおけるダパグリフロジンの早期投与開始の利尿効果と安全性を評価することを目的とした。

方法:多施設共同非盲検試験において、高ボレミア血症AHFで来院後24時間以内の患者240例を、ダパグリフロジン10mgを1日1回投与する群と、5日目または退院まで利尿薬の漸増をプロトコール化した構造化通常ケア群にランダムに割り付けた。
主要アウトカムであるループ利尿薬累積投与量あたりの累積体重変化で表される利尿効率は、ベースライン体重で補正した比例オッズモデルを用いて治療割り付け間で比較した。副次的アウトカムと安全性アウトカムは盲検化された委員会によって判定された。

結果:利尿効率については、ダパグリフロジンと通常ケアの間に差はなかった(OR 0.65、95%CI 0.41〜1.02;P=0.06)。ダパグリフロジンはループ利尿薬の投与量を減らし(560mg[Q1〜Q3:260〜1,150mg] vs. 800mg[Q1〜Q3:380〜1,715mg];P=0.006)、通常治療と同等の体重減少を達成するための静脈内利尿薬の増量は少なかった(P≦0.05)。ダパグリフロジンの早期投与開始により、糖尿病、腎、心血管の安全性イベントは増加しなかった。ダパグリフロジンは24時間尿量中央値(P=0.03)および尿量中央値(P=0.005)の改善と関連し、試験期間中の退院を早めた。

結論:AHF入院中の早期ダパグリフロジンは安全であり、GDMT最適化の一要素を満たすものである。ダパグリフロジンは体重に基づく利尿効率の統計学的に有意な低下とは関連しなかったが、AHF患者における利尿亢進のエビデンスと関連した。

試験登録番号:NCT04298229(Efficacy and Safety of Dapagliflozin in Acute Heart Failure [DICTATE-AHF])

キーワード:SGLT2i、急性心不全、ダパグリフロジン、利尿、心不全

引用文献

Efficacy and Safety of Dapagliflozin in Patients With Acute Heart Failure
Zachary L Cox et al. PMID: 38569758 DOI: 10.1016/j.jacc.2024.02.009
J Am Coll Cardiol. 2024 Apr 9;83(14):1295-1306. doi: 10.1016/j.jacc.2024.02.009.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38569758/

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