配偶者の有無とがん特有の生存率との関連性はどのくらい?(人口ベース後向きコホート研究; JAMA Netw Open. 2021)

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既婚のがん患者は、未婚のがん患者と比較して、がんによる死亡リスクが低下する?

がんは、世界最大の疾病負担であり、世界および米国で第2位の死亡原因となっています(WHOPMID: 31912902)。未婚のがん患者(結婚したことがない、別居中、離婚中、寡婦、同棲関係を含む)は、結婚している患者に比べてがんによる死亡リスクが高いとされています(PMID: 24062405PMID: 21300926PMID: 21466984PMID: 23360812PMID: 16184457)。

米国では、未婚者の割合が増加しており、2020年には米国住民の50%が結婚していましたが、この割合は過去25年間で9ポイント減少しています(Pew Research Center)。ここ数十年、米国の婚姻率は低下しており、1990年には1,000人あたり9.8組だったのが、2018年には1,000人あたり6.5組となり、歴史的な低水準となっています(statista)。

未婚のがん患者は、がん特異的生存率が低く、その割合は着実に増加していることから、未婚の患者さんのがん特異的生存率を改善するための具体的な介入につながる可能性があるため、婚姻状況とがん特異的生存率との関連性のメカニズムを詳細に調査する必要があります。未婚のがん患者さんは、既婚の患者さんに比べて、がんの進行期に診断されるリスクが高いと言われています。
さらに、未婚の患者さんは既婚の患者さんに比べて適切な治療を受けにくいことが明らかになっています(PMID: 24062405PMID: 16184457PMID: 3669259PMID: 2830514)。

結婚していることとがん特異的生存率の改善との関連性は、早期診断・早期治療のメリットによる二次的なものだと推測されています(PMID: 24062405PMID: 2830514PMID: 21526396PMID: 18625568)。しかし、結婚していることが、診断時のがんのステージや治療内容と関連して、がん特異的生存率とどの程度関連するかを確認した研究はありません。

そこで今回は、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースを用いて、9つの一般的な固形がん*について、診断時または治療時の病期が婚姻状況とがん特異的生存率との関連を媒介するかどうか、また媒介の割合を定量的に明らかにすることである。また、結婚とがん特異的生存率の関連性の性差についても調べました。

*乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、メラノーマ、膀胱がん、腎臓がん、子宮内膜がん、膵臓がん

試験結果から明らかになったことは?

本研究では、患者 1,733,906例(女性 894,379例[51.6%]、既婚者 1,067,726例[61.6%]、平均[SD]年齢 63.76[12.60]歳)を対象としました。

多変量解析の結果、既婚者は未婚者よりもがん特異的生存率が高いことがわかった(TR 1.36、95%CI 1.35〜1.37)。

早期診断中間媒介変数の寄与度, 媒介割合
(proportion mediated, PM)
乳がん11.4%
(95%CI 11.2〜11.6%)
大腸がん10.9%
(95%CI 10.7〜11.2%)
子宮内膜がん12.9%
(95%CI 12.5〜13.3%)
メラノーマPM 12.0%
(95%CI 11.7〜12.4%)

乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、メラノーマの早期診断は、配偶者の有無とがん特異的生存率との関連性を媒介していました。

手術中間媒介変数の寄与度, 媒介割合
(proportion mediated, PM)
肺がん52.2%
(95%CI 51.9〜52.4%)
膵臓がん28.9%
(95%CI 28.6%〜29.3%)
前立腺がん39.3%
(95%CI 39.0%〜39.6%)

手術は、肺がん(PM 52.2%、95%CI 51.9〜52.4%)、膵臓がん(PM 28.9%、95%CI 28.6%〜29.3%)、前立腺がん(PM 39.3%、95%CI 39.0%〜39.6%)において、配偶者の有無とがん特異的生存率との関連を媒介していました。

化学療法中間媒介変数の寄与度, 媒介割合
(proportion mediated, PM)
肺がん37.7%
(95%CI 37.6%〜37.9%)
膵臓がん28.9%
(95%CI 28.4%〜28.9%)

肺がん(PM 37.7%、95%CI 37.6%〜37.9%)および膵臓がん(PM 28.6%、95%CI 28.4%〜28.9%)では、化学療法が配偶者の有無とがん特異的生存率との関連性を媒介していました。

結婚に伴うがん特異的生存率の向上は、男性の方が女性よりも大きいことが明らかとなりました(男性:TR 1.27、95%CI 1.25〜1.28; 女性:TR 1.20、95%CI 1.19〜1.21)。

中間媒介変数の寄与度
媒介割合
(PM)
早期診断手術化学療法
女性21.7%
(95%CI 21.5〜21.9)
26.6%
(95%CI 26.4〜26.7%)
6.8%
(95%CI 6.7%〜6.8%)
男性20.3%
(95%CI 20.2〜20.4%)
11.1%
(95%CI 11.0〜11.2%)
5.1%
(95%CI 5.0%〜5.2%)

配偶者の有無とがん特異的生存率との関連性に対する、早期診断および手術や化学療法による治療の寄与は、女性よりも男性の方が大きいことが明らかとなりました。

コメント

未婚のがん患者(結婚したことがない、別居中、離婚中、寡婦、同棲関係を含む)は、結婚している患者に比べてがんによる死亡リスクが高いとされています。

本試験では媒介分析を実施して、診断時または治療時の病期が婚姻状況とがん特異的生存率との関連を媒介するかどうか、また媒介の割合を定量的に解析しています。その結果、結婚歴に関連する生存率の格差は、乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、メラノーマでは早期診断に起因し、肺がん、膵臓がん、前立腺がんでは治療に関連する変数(手術、化学療法)に起因することが明らかとなりました。

未知の交絡因子が残存している可能性があり、また、あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、過去の報告も踏まえると、がん患者における結婚は、がん特異的生存率に影響を与えている可能性が高そうです。

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✅まとめ✅ 男性のがん特異的生存率において、女性と比較して、結婚が保護的な役割を果たしている可能性を示唆している。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:既婚のがん患者は未婚の患者よりもがん特異的生存率が高い。未婚患者のがんの早期診断と決定的な治療を増やすことで、生存率の差を縮めることができるかもしれない。

目的:一般的な固形がん9種を対象とした患者において、結婚ががん特異的生存率、診断時の病期、治療とどの程度関連しているかを評価し、生存率の差を縮めるための方法を提案すること。

試験デザイン、設定および参加者:このレトロスペクティブな人口ベースのコホート研究では、2007年1月1日から2016年12月31日の間に9つの一般的ながんのうち、いずれか1つに診断された18歳以上の患者を対象とした。
患者データはSurveillance, Epidemiology, and End Results Programから取得した。
統計解析は、2020年8月1日から10月1日に実施した。

曝露:既婚と未婚に分類された婚姻状況(独身、別居、離婚、寡婦、未婚の患者または家庭内パートナーを含む)。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、がん特異的生存率(既婚 vs. 未婚)の時間比(TR)とした。結婚とがん特異的生存率との関連が、診断時および治療時のステージによってどの程度媒介されるかを調べるために、媒介分析(mediation analysis)を行った。
※媒介分析は、ある暴露変数が結果変数と関連する経路の重要性を定量化するのに有効な手法(PMID: 23379553)。

結果:本研究では、患者 1,733,906例(女性 894,379例[51.6%]、既婚者 1,067,726例[61.6%]、平均[SD]年齢 63.76[12.60]歳)を対象とした。
多変量解析の結果、既婚者は未婚者よりもがん特異的生存率が高いことがわかった(TR 1.36、95%CI 1.35〜1.37)。
乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、メラノーマの早期診断は、配偶者の有無とがん特異的生存率との関連性を媒介していた(乳がん:媒介割合[PM] 11.4%、95%CI 11.2〜11.6%; 大腸がん:PM 10.9%、95%CI 10.7〜11.2%; 子宮内膜がん:PM 12.9%、95%CI 12.5〜13.3%; メラノーマ:PM 12.0%、95%CI 11.7〜12.4%)。
手術は、肺がん(PM 52.2%、95%CI 51.9〜52.4%)、膵臓がん(PM 28.9%、95%CI 28.6%〜29.3%)、前立腺がん(PM 39.3%、95%CI 39.0%〜39.6%)において、配偶者の有無とがん特異的生存率との関連を媒介した。
肺がん(PM 37.7%、95%CI 37.6%〜37.9%)および膵臓がん(PM 28.6%、95%CI 28.4%〜28.9%)では、化学療法が配偶者の有無とがん特異的生存率との関連性を媒介していた。
結婚に伴うがん特異的生存率の向上は、男性の方が女性よりも大きかった(男性:TR 1.27、95%CI 1.25〜1.28; 女性:TR 1.20、95%CI 1.19〜1.21)。
配偶者の有無とがん特異的生存率との関連性に対する、早期診断および手術や化学療法による治療の寄与は、女性よりも男性の方が大きかった(早期診断:女性 PM 21.7%、95%CI 21.5〜21.9 vs. 男性 PM 20.3%、95%CI 20.2〜20.4%; 手術:女性 PM 26.6%、95%CI 26.4〜26.7% vs. 男性 PM 11.1%、95%CI 11.0〜11.2%; 化学療法 PM 6.8%、95%CI 6.7%〜6.8% vs. 男性 PM 5.1%、95%CI 5.0%〜5.2%)。

結論と関連性:本研究では、結婚歴に関連する生存率の格差は、乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、メラノーマでは早期診断に起因し、肺がん、膵臓がん、前立腺がんでは治療に関連する変数に起因するものであった。また、今回の調査結果は、男性のがん特異的生存率において、女性と比較して、結婚が保護的な役割を果たしている可能性を示唆している。

引用文献

Assessment of Modifiable Factors for the Association of Marital Status With Cancer-Specific Survival
Zi-Hang Chen et al. PMID: 34047792 PMCID: PMC8164101 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2021.11813
JAMA Netw Open. 2021 May 3;4(5):e2111813. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.11813.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34047792/

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