救急外来での初期カリウム値と脳卒中のタイプとの関連性はどのくらいですか?(症例対象研究; J Stroke Cerebrovasc Dis. 2021)

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血清カリウム値と脳卒中との関連性は?

血清K低値は心血管疾患、高血圧、糖尿病患者の脳卒中リスクと関係することが報告されています。健康集団を主な対象とした研究としては、スウェーデンの大規模コホート研究Malmö Preventive Project(PMID: 28974633)があります。この研究では、中年期に測定した血清K値とその後の脳卒中および全死亡との関係を検討し、その結果、血清カリウム(K)値と脳卒中および全死亡との間に正の相関関係が認められました。

このように血清カリウム値は脳血管救急のマーカーとして考えられていますが、患者の救急外来到着時に記録された初期血清カリウム値と脳卒中のタイプとの関連については明らかになっていません。

そこで今回は、日本の三次医療機関のデータを用いた症例対照研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

本研究では、くも膜下出血を含む出血性脳卒中の成人患者(症例)と、虚血性脳卒中の患者(対照)が特定されました。血清カリウム値と脳卒中のタイプとの関連は、LOWESS曲線を描いて分析されました。

脳卒中患者は416例(出血性158例、虚血性258例)でした。年齢の中央値は77歳(IQR 68〜84)で、54%が男性でした。カリウムの平均値は、出血性脳卒中では3.69±0.55mEq/L、虚血性脳卒中では4.08±0.65mEq/Lでした。

LOWESS曲線では、初期のカリウム値が低いほど、出血性脳卒中になる可能性が高いことが直線的に示されました。

ロジスティック回帰モデルでは、カリウム値が1mEq/L低くなるごとの出血性脳卒中のリスクのオッズ比は3.31(95%信頼区間[CI] 2.24〜5.04)でした。この関連性は、他の共変量を調整した多変量モデルでも有意に保たれていました(OR 2.62、95%CI 1.70〜4.16)。

コメント

日本から報告された症例対象研究です。救急外来到着時に記録された初期血清カリウム値と、その後の脳卒中のタイプについて検討したところ、初期のカリウム値が低いほど、出血性脳卒中になる可能性が高いことが示されました。過去の報告と矛盾しません。

カリウム値が1mEq/L低くなるごとの出血性脳卒中のリスクのオッズ比は3.31(95%信頼区間[CI] 2.24〜5.04)とのこと。やや効果推定値の幅が広い点が気になりますが、症例対象研究であるため致し方ありませんが、追試が必要であると考えます。またカリウム低値を補正することで出血性脳卒中の発生リスクを抑制できるのかについては不明です。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 出血性脳卒中患者では、虚血性脳卒中患者に比べて初期のカリウム濃度が低かった。

根拠となった試験の抄録

背景:血清カリウム値は脳血管救急のマーカーとして考えられているが、患者の救急外来到着時に記録された初期血清カリウム値と脳卒中のタイプとの関連についてはあまり明らかになっていない。

試験デザイン:本研究は、2018年4月から2019年9月までの日本の三次医療機関のデータを用いた症例対照研究である。

方法:くも膜下出血を含む出血性脳卒中の成人患者(症例)と、虚血性脳卒中の患者(対照)を特定した。年齢、性別、主訴、バイタルサイン、初期の血液検査などのデータを収集した。血清カリウム値と脳卒中のタイプとの関連を、LOWESS曲線を描いて分析した。さらに、ロジスティック回帰モデルを当てはめて、目的の関連性を検討した。

結果:脳卒中患者は416例(出血性158例、虚血性258例)でした。年齢の中央値は77歳(IQR 68〜84)で、54%が男性であった。カリウムの平均値は、出血性脳卒中では3.69±0.55mEq/L、虚血性脳卒中では4.08±0.65mEq/Lであった。
LOWESS曲線では、初期のカリウム値が低いほど、出血性脳卒中になる可能性が高いことが直線的に示された。ロジスティック回帰モデルでは、カリウム値が1mEq/L低くなるごとの出血性脳卒中のリスクのオッズ比は3.31(95%信頼区間[CI] 2.24〜5.04)であった。この関連性は、他の共変量を調整した多変量モデルでも有意に保たれていた(OR 2.62、95%CI 1.70〜4.16)。

結論:出血性脳卒中患者では、虚血性脳卒中患者に比べて初期のカリウム濃度が低かった。

キーワード:出血性脳卒中、虚血性脳卒中、カリウム、脳卒中

引用文献

Association of Initial Potassium Levels with the Type of Stroke in the Emergency Department
Kiyomitsu Fukaguchi et al. PMID: 34062311 DOI: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2021.105875
J Stroke Cerebrovasc Dis. 2021 May 29;30(8):105875. doi: 10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2021.105875. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34062311/

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