腎機能低下患者におけるメトホルミンの有効性と安全性はどのくらいですか?(SR&MA; Diabetes Obes Metab. 2021)

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メトホルミンの適正使用に関するRecommendation(2019年8月5日改訂版)

メトホルミンは古くから使用されている薬剤ですが、2型糖尿病治療において、日本を除く多くの国で第一選択とされています。腎機能排泄型の薬剤であるメトホルミンは、添付文書上、「重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者又は透析患者(腹膜透析を含む)」に禁忌です。しかし、eGFRやCCrなど腎機能の低下した患者での検討は限られています。またメトホルミンの適正使用に関するRecommendation(2019年8月5日改訂版)においても推奨の根拠となる試験結果は示されていません。

そこで今回は、腎機能が低下した患者に対するメトホルミンの使用とアウトカムについて、いくつかの臨床試験の結果を統合解析した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

腎機能が著しく低下した患者を対象とした9件の小規模前向き研究では、臨床的に明らかな乳酸アシドーシスが認められたのは1例のみでした。

13件の大規模なレトロスペクティブ研究のうち、7件は患者のサブグループ別に死亡率のリスクを検討していました。メタ解析の結果、eGFRが45mL/min/1.73m2以上の場合には全死亡率が低下しましたが、eGFRが45mL/min/1.73m2未満の場合には低下しませんでした。

8件のレトロスペクティブ研究では、アシドーシスをアウトカムとして評価しており、メタ解析の結果、eGFRが30mL/min/1.73m2未満のグループにおいて、HR 1.97(95%CI 1.03〜3.77)でしたが、その他の集団において、アシドーシスのリスクは増加しませんでした。

コメント

研究により、患者背景や結果に差が見られましたが、メトホルミン使用においては、eGFR 30〜45mL/min/1.73m2以上が必要なようです。安全性の観点からは、少なくとも45mL/min/1.73m2以上の場合にメトホルミンを使用する方が良いと考えられ、この場合は、750mg/日の投与量が約2,250mg/日に相当します。ただし、これは標準化eGFRですので、個別の症例には個別化eGFR(mL/min)に換算して投与量を設定する必要があると考えます。

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✅まとめ✅ メトホルミンは、eGFRが30mL/min/1.73m2未満の場合には、有益性が低く、アシドーシスのリスクが増加する可能性がある。

根拠となった試験の抄録

目的:腎機能障害患者におけるメトホルミンの使用に伴う臨床的および安全的な結果を検討する。

材料と方法:PubMedおよびEmbaseデータベースを開設から2020年8月まで検索し、含まれる研究の研究者ファイルおよび参考文献リストのレビューで検索結果を補足した。
推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2未満と定義される腎機能低下患者におけるメトホルミンと患者中心のアウトカムに関するオリジナルデータを報告しているすべての研究を対象とした。
死亡率、心血管イベント、アシドーシスのアウトカムについて、post hoc meta-analysisを行った。

結果:腎機能が著しく低下した患者を対象とした9件の小規模前向き研究では、臨床的に明らかな乳酸アシドーシスは1例のみであった。
13件の大規模なレトロスペクティブ研究のうち、7件は患者のサブグループ別に死亡率のリスクを検討した。メタアナリシスの結果、eGFRが45 mL/min/1.73m2以上の場合には全死亡率が低下したが、eGFRが45 mL/min/1.73m2未満の場合には低下しなかった。
8つのレトロスペクティブ研究では、アシドーシスをアウトカムとして評価しており、メタアナリシスでは、eGFRが30 mL/min/1.73m2未満のグループのHRが1.97(95% CI 1.03-3.77)であったことを除き、アシドーシスのリスクは増加しなかった。

結論:メトホルミンは、eGFRが45 mL/min/1.73m2以上の場合、死亡率を低下させ、アシドーシスのリスクを増加させないことが文献で示されている。メトホルミンは、eGFRが30 mL/min/1.73m2未満の場合には、有益性が低く、アシドーシスのリスクが増加する可能性があると思われる。
米国食品医薬品局のガイドラインに従い、メトホルミンはeGFRが30 mL/min/1.73m2未満の場合には使用すべきではなく、eGFRが30 mL/min/1.73m2に近づいた場合のリスク・ベネフィット・プロファイルに関するさらなる研究が必要である。

引用文献

Safety and effectiveness of metformin in patients with reduced renal function: A systematic review
Jeremy Orloff et al. PMID: 34009711DOI: 10.1111/dom.14440
Diabetes Obes Metab. 2021 May 19. doi: 10.1111/dom.14440. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34009711/

引用文献

【冠動脈疾患を有する2型糖尿病患者における心血管アウトカムに対するメトホルミンあるいはグリピジドの効果はどのくらいですか?(DB-RCT; Diabetes Care. 2013)】

【日本人2型糖尿病患者におけるビタミンB12欠乏とメトホルミン治療との関係性はどのくらいですか?(横断研究; Journal of Diabetes Investigation 2020)】

【2型糖尿病成人患者におけるメトホルミン単剤療法の効果はどのくらいですか?(SR&MA; CDSR 2020)】

【メトホルミンは日本人2型糖尿病患者の血糖をどのくらい低下させますか?(代用のアウトカムですが需要ありますか?シリーズ)】

【メトホルミンは 2型糖尿病患者の全死亡リスクを低下できますか?(SR&MA; Ageing Res Rev. 2017)】

【腎機能障害を有する2型糖尿病患者における長期メトホルミンの効果はどのくらいですか?(後向きコホート研究; Diabetes Care 2020)】

【高血圧および2型糖尿病合併患者におけるメトホルミン使用は心不全(HFpEF)発症を抑制する?(小規模傾向スコアマッチ後向き研究; Int. J. Cardiol. 2019)】

【メトホルミン使用中の日本人2型糖尿病患者における乳酸アシドーシス発生リスクはどのくらいですか?(後向き傾向スコアマッチ コホート研究; Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2016)】

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