イスラエルの医療従事者に対するBNT162b2ワクチン接種と症候性および無症候性SARS-CoV-2感染症の発生率(単施設; 後向き研究; JAMA. 2021)

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Pfizer社とBioNTech社が製造したBNT162b2 COVID-19ワクチンは、第3相プラセボ対照ランダム化臨床試験において、症候性SARS-CoV-2感染の予防に95%の有効性を示し、COVID-19ワクチンとしては初めて米国食品医薬品局から緊急使用認可を受けました。米国食品医薬品局の認可から8日後の2020年12月19日、イスラエルでは国民にワクチンを接種する大規模なキャンペーンが開始されました。ワクチン接種キャンペーンと同時に、イスラエルではCOVID-19の新規感染者数が急増し、1日あたり最大1万人の新規感染者が発生しました。これは、SARS-CoV-2のB.1.1.7亜種の拡散によるものと思われます。

新型コロナウイルス感染症は、約50%で無症候性(不顕性)感染が報告されており、長期間にわたって静かにウイルスを拡散させる可能性があります。BNT162b2ワクチン接種と無症候性感染および感染症との関連性は依然として不明であり、公衆衛生政策に重要な影響を与えています。また、SARS-CoV-2にさらされるリスクが高い医療従事者に対するワクチンの有効性に関するデータも限られています。無症候性感染は、SARS-CoV-2感染の拡大を抑制するための大きな障壁として提案されており、COVID-19パンデミックの急速な進展を説明する可能性もあります。

そこで今回は、イスラエル・テルアビブの三次医療センターで実施された単施設の後向き研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

合計6,710例の医療従事者(平均[SD]年齢 44.3[12.5]歳、4,465例[66.5%]女性)が中央値で63日間追跡調査を受け、5,953例(88.7%)の医療従事者が少なくとも1回のBNT162b2ワクチン接種を受け、5,517例(82.2%)が2回接種を受け、757例(11.3%)が未接種でした。

症候性SARS-CoV-2感染症は、完全にワクチンを接種した医療従事者8例と、ワクチンを接種していない医療従事者38例に発生しました。一方、無症候性SARS-CoV-2感染症は、完全にワクチンを接種した医療従事者19例と、ワクチンを接種していない医療従事者17例に発生しました。

完全にワクチンを接種した
医療従事者
ワクチンを接種していない
医療従事者
症候性SARS-CoV-2感染症
(100,000人・日あたり)
4.7149.8
無症候性SARS-CoV-2感染
(100,000人・日あたり)
11.367.0
調整発生率比, IRR
症候性SARS-CoV-2感染症0.03 (95%CI 0.01〜0.06)
無症候性SARS-CoV-2感染0.14(95%CI 0.07〜0.31)

この結果は、傾向スコアによる感度分析によっても質的には変化しませんでした。

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、無症候性(不顕性)感染が約50%で報告されており、感染伝播に繋がっています。また、公衆衛生政策に重要な影響を与えていることから、不顕性感染への対策が求められています。医療資源やコスト、人的リソースが限られていることから、全国民に対するPCR検査の実施は現実的ではありません。また全国民に対するPCR検査は、実施しない場合と比較して、感染対策としての効果がなく、コストが劇的に増加することが報告されています。そこで重要となるのがワクチン接種です。

さて、本試験結果によれば、ファイザー・バイオンテック社製のmRNAベースのCOVID-19ワクチンであるBNT162b2により、症候性感染だけでなく、無症候性感染を抑制することが明らかとなりました。

本試験は単施設かつ後向き研究であることから、あくまでも相関関係が認められたにすぎませんが、本結果は英国から報告された結果と同様であったことから、ある程度期待できると考えられます。

今後、他の国や地域からの報告がなされると予測されます。続報に期待。

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✅まとめ✅ BNT162b2ワクチンを接種した場合は、ワクチンを接種しなかった場合と比較して、2回目の接種から7日以上経過した後の症候性および無症候性のSARS-CoV-2 感染症の発生率が有意に低いことと関連していた。

根拠となった論文の抄録

試験の重要性:ランダム化臨床試験により、症候性SARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチンの有効性が推定されているが、無症候性感染に対する効果は不明である。

目的:医療従事者の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染に対するファイザー・バイオンテック社製BNT162b2ワクチンの接種の関連性を推定すること。

試験デザイン、設定および参加者:本研究は、イスラエル・テルアビブの三次医療センターで実施した単施設のレトロスペクティブコホート研究である。2020年12月20日から2021年2月25日の間に、鼻咽頭スワブを用いた定期的なスクリーニングを受けた医療従事者において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査で確認された症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染症に関するデータを収集した。
ロジスティック回帰法を用いて、人口統計やPCR検査の実施回数をコントロールしながら、完全にワクチンを接種した参加者とワクチンを接種していない参加者の間で、感染の発生率を比較する発生率比(IRR)を算出した。

曝露:BNT162b2ワクチンの接種者と未接種者は、従業員健康データベースで確認した。完全接種とは、2回目のワクチン接種後7日以上経過していることとした。

主要アウトカムと測定法:主要アウトカムは、ワクチン接種を受けた医療従事者と受けていない医療従事者の症候性および無症候性のSARS-CoV-2感染に対する回帰調整 IRRとした。副次的な結果として、部分的にワクチンを接種した医療従事者(1回目の接種から7~28日目)と、遅めに完全にワクチンを接種したと考えられる医療従事者(2回目の接種から21日目以降)のIRRを挙げた。

結果:合計6,710例の医療従事者(平均[SD]年齢 44.3[12.5]歳、4,465例[66.5%]女性)が中央値で63日間追跡調査を受け、5,953例(88.7%)の医療従事者が少なくとも1回のBNT162b2ワクチン接種を受け、5,517例(82.2%)が2回接種を受け、757例(11.3%)が未接種であった。
ワクチン接種は、非接種者に比べて年齢が高く(平均年齢:それぞれ44.8歳 vs. 40.7歳)、性別は男性(31.4% vs. 17.7%)であった。症候性SARS-CoV-2感染症は、完全にワクチンを接種した医療従事者8例と、ワクチンを接種していない医療従事者38例に発生した(発生率:それぞれ 100,000人・日あたり4.7 vs. 149.8、調整IRR 0.03 [95%CI 0.01〜0.06])。無症状のSARS-CoV-2感染は、完全にワクチンを接種した医療従事者19例と、ワクチンを接種していない医療従事者17例に発生した(発生率:それぞれ100,000人・日あたり11.3 vs. 67.0、調整IRR 0.14 [95%CI 0.07〜0.31])。この結果は、傾向スコアによる感度分析によっても質的には変化しなかった。

結論と関連性:イスラエル・テルアビブの単一施設の医療従事者において、BNT162b2ワクチンを接種した場合は、ワクチンを接種しなかった場合と比較して、2回目の接種から7日以上経過した後の症候性および無症候性のSARS-CoV-2 感染症の発生率が有意に低いことと関連していた。この結果は、観察的デザインによって制限されている。

引用文献

Association Between Vaccination With BNT162b2 and Incidence of Symptomatic and Asymptomatic SARS-CoV-2 Infections Among Health Care Workers
Yoel Angel et al. PMID: 33956048 DOI: 10.1001/jama.2021.7152
JAMA. 2021 May 6. doi: 10.1001/jama.2021.7152. Online ahead of print.
ー 関連記事 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33956048/

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